番外編⑭「その愛は確かな未来」
「ひゃっ」
いきなりキールから体勢を仰向けにされた後、左側の内腿を掴んで足を持ち上げられ、屹立した熱塊を秘所へ宛がわれる。私は口元に手を添え、キールの動向を見つめる。
――うぅ、「いいよ」とも「ダメだよ」とも、なにも言ってないのに。
ここで私がなにを言っても、キールは耳を貸さないだろう。欲情に漲っている彼をとても止める事は出来ない。ググッと熱塊が勢い良く沈んでくる。
「千景、随分と物欲しそうだな?」
「な、なに?」
――なんだ突然?
声を掛けられて視線を上げてみると、キールの口角を上げた艶っぽい表情があって、ドキッと胸が跳ね上がる。
「見てみろよ。下の口がヒクヒクと動いて強請っているのがわかるだろ?」
「やっ、やぁ!」
わざと秘所が見えるようにより足を上げられ、咄嗟に見えた花びらはキールが言うように、ヒクついていた。
「やだって言われても、自分がヒクつかさせているんだろ?」
「やだってばぁ! 恥ずかしいんだから止めてよ!」
生々しい光景を目にした私が羞恥のあまり、無造作に躯を揺らして、キールから離れようとした。そこに押さえ込むようにグッと足を固定され、すぐに熱塊が花びらを割って埋め込まれた。
「ひゃぁあっ」
重量感が半端なく呼吸も閊える。バックで挿入されていた時よりも、熱塊が膨張しているような気がする。
「う……おっき……い……壊れ……ちゃう……よぉ」
つい本音が口元から零れた。それを聞き逃さなかったキールがサラッと返す。
「千景のここは柔軟だからな。解していけば、きちんと形に収まるだろ?」
「そ、そんなっ、あんっあんっ」
抽挿が始まってしまい、私の言葉は虚しく宙へと消えて行った。
「くっ、初っ端から締め付けがヤバイな」
キールの表情が恍惚に歪む。うぅ、だって今日は大きいから、膣内がパンパンだよぉ。
「おっきから……パンパン……だよぉ」
「そうか、じゃぁもっと中を拡げないと駄目だよな」
「あんっあぁんっ……ち、ちがっ!」
腰をグッと掴まれ、穿つ速度が上がる。キールは締め付けがヤバイと言っておきながら、快感を高めようとしている、恐ろしい性欲だ!
「んあっ、やぁん、はぁぁん、あんっ」
嬌声が止まらない。熱塊が荒々しく振り立て、私の膣内を容赦なく蹂躙する。重圧に耐える事で精一杯だと思っていたんだけど、徐々に互いの情液で、私の膣内が柔軟に解れていき、快感が生じてくる。
その快感が鋭く全身へと駆け巡り、私は何度も何度も歓喜に打ち震えていた。そして気が付けば、溢れるばかりの潤骨油が膣内で激しく波打ち、零れる音が堪らない興奮を覚えさせる。
それだけじゃない。ただでさえ、色っぽい姿のキールがさらに肌に湿り気を帯びて、私の胸をキュンと締め付ける。そんな私の締め付けはどうやら結合部でも起こしてしまったようだ。
「くっ……」
キールの口元から耐え難いといった吐息が洩れた。きっと限界が近いのだろう。彼にして早い達しだ。そのままキールは高みへと昇っていくのだろうと思っていたが、ここで予想外の事が起きた。
「ひゃっ……っぁあん」
突然キールからガッと腕を引っ張り上げられ、私の背中が浮き、上体を起こされてしまった。結合部は繋がったまま、私はキールの腿の上に乗る対面座位の格好となった。ほんの一瞬で体勢が変わってしまって、思考が追いつけない。
「な、なに?」
私はおずおずと不安げな表情をして、キールを見つめる。彼は答える代わりに私の躯を揺さぶり上げてきた。
「ひゃっ」
ガクガクと揺らされ、躯のバランスを失いそうになった私はキールの首に腕を回して、しがみついた。小刻みに打ち上げられながら、私は愉悦に浸る。さっきとは異なって激しさはないが、徐々に染み渡っていく快感が堪らない。
「あん、あんっ、ひゃん、はぁぁん」
キールはイキかけていたのを抑制して体勢を変えたのだろう。早くイッてしまったら、私に悪いと思ったのか、それとも自身のプライドなのか。先に私の方が達してしまいそうで怖いよ。
私は粘膜の擦れ合う度に快感が重なり合って、真っ白な世界が見えかけていた。これはもう秒殺で達しが決まる。そう負けを認めた時、私はなにも考えずに身を快楽へ委ねた。
「あぁぁん、あん、んあぁ、いやあん、あぁぁんっ!」
そう私が零した時、口内へ熱の塊が滑り込んできた。
「んんっ、んぅっ……」
呼吸さえままならぬ情熱的な口づけだ。キールの舌が熱い。私の快楽を底なしに引き出してくる。上の唇も下の唇も熱と水音に溢れ、もう頭の中がドロドロに蕩かされていた。
――このまま一気に極致へと昇りたい。
「千景、一緒にイクぞ」
私の欲望を察したキールは唇を離して伝えてきた。その時、互いの口元からトロッとした糸を引いていて、私の羞恥心を煽った。そして私の背は寝台へと落とされる。
それから足を大きく広げられたものだから、結合部までの見通しが良すぎだ。キールの熱塊が私の膣内にしっかりと収まっているように見えるし、私が離さずに咥え込んでいるようにも見える。
「ひゃぁあっ……あんあんっ」
キールが腰を打ち突ける。熱塊が膣内の最奥にまで行き届いていた。なんとも言えぬ卑猥な光景に目を背けたくなるのに、私は抽挿する熱塊に目が離せなくなっていた。難なく滑り込んでくる熱塊から底なしの快感を注ぎ込まれ、私の意識が浮遊する。
「あんっあんっ、気持ち……いい、もっと……もっとっ」
快感に理性を奪われ、私は本能の思うままに従った。この快楽に永遠に浸っていたい思うほどの強烈な愉悦感。その欲望が口元から、止めどなく溢れ出てしまう。その声を聞く度にキールが新たな快楽の層を重ねてくる。
包皮を剥かれた花芯を責められたり、胸の頂きを指の腹で押さえ付けて揉みしだかれたり、キールの艶っぽい吐息に耳を震わせられたり、しきりなしに洩れる淫靡な水音とか、もう私の頭の中はパンパンで破裂してしまいそうだった。
それに躯が熱い、燃え上がるように熱い。呼吸すらしているのかもわからない。滴る汗が芳しい性の香りと交じって、部屋中に充満していた。世界には私とキールしかいないのではないかと思わせる一体感が最高に心地好い。
「あんっ、はぁん! やぁぁん! あんあんあんっ!」
「はぁはぁ……ち……かげ、そろそろっ」
掠れた声で告げたキールは打ち突く速度を上げ、寝台がギシギシと軋みを上げる。彼の絶頂が近いのは口調からだけでなく、膣内で蠢く熱塊からも察した。射精寸前の大きさでドクドクと脈打ちを行っている。
私の方もゾクゾクと勢い良く快感の波が脳天へと向かって迫り上がってきた。キールと共に絶頂を迎えたいと強く思うと、ギュッと膣内が収縮したのを感じた。その刹那、キールも私も一瞬息を押し殺す。
「くっ……」
「ふっ……ぁああん!」
私は絶頂の声が弾けた瞬間、膣内に熱く滾った飛沫が放散され、頭の中が真っ白な世界に塗り潰された。ドクドクと流し込まれる精液は膣内にも収まり切れず、私達の肌へと勢い良く滴る。
私は意識を何処かへともっていかれ、躯の力も失われた。それはキールも一緒で、私の上に項垂れるように躯を落としてきて、私達は共に果てた。静謐な雰囲気が戻るまで時間がかかった。完全に焦がされたよ。
それまで私達は互いに口を開かず、ひたすら呼吸を正していた。暫くして、ようやく口を開ける余裕が出てきた頃、私の胸は幸福感に満たされていた。こうやって愛する人と繋がる事って、なんて幸せなんだろうと、改めて実感する。
「今更だけど、心も躯も一つなれるって凄い事だよね」
先に口を開いたのは私の方だった。私はキールへと顔を向ける。
「あぁ、そうだな」
溢れるばかりの笑顔で応えたキールと視線が絡んだ。その表情を見れば、キールが私と同じ想いを抱いているのは一目瞭然だ。
「キール「千景」」
私とキールが互いの名を呼び声が重なる。あぁ、これはきっと……。
――キールも私と同じ事を伝えようとしているんだ。
全く同じ考えをしている事に、さらに私達は笑みを零した。
「キールが先に言って」
「千景から言えよ」
「じゃぁ、一緒に言ようよ!」
だって伝えたい言葉は一緒なんだからさ。私はキールの有無を言う前に「せーの」と声を掛ける。次の瞬間、私達の口から出た言葉は……。
「「愛してる」」
この先も揺るぐ事のない私達の愛。だって私達は今日、確実な幸せへと繋がる、あの子達の姿を目にしたのだから……。
☆*:.。. .。.:*☆☆*:.。. .。.:*☆
あの可愛い子供達と出会ってお別れをした、あの日から二年と少し過ぎた頃、バーントシェンナ国では盛大なイベントが行われた。二十歳の成人を迎えたキールが正式に国王へと即位した。後のち、戴冠式が行われ、その日は国中がお祭りとなった。
式にはマルーン国とヒヤシンス国の国王や重臣達を招き、バーントシェンナの民と共に儀式を見届けてもらった。独裁主義と言われていたマルーン国も他国を受け入れず愛国心の強かったヒヤシンス国も今は我が国と協定を結び、国家の繁栄を育んでいる。
独占の王だとか、破壊の王だとか、そんな名称で呼ばれていた事はもう過去の話だ。今はすべての国が至福の国……と称するにはもう少し年月が掛かりそうではあるが、誰よりも民と国の幸せを願う王のキールなら、きっとやり遂げてくれる。
これまでにどれだけの苦悩があった事か。語り尽くせない壮大な物語が繰り返されてきたが、どんな苦難に直面しても、必ずキールは乗り越えてきた。アイリや私と共に(ここちょぴし誇らしげ)。そんな歴史を綴り、ようやく戴冠式の日を迎えられたのだ。
ぐふっ(⋈◍>◡<◍)。✧♡ ……おっと失礼、思わず喜びが零れ落ちてしまった。いやだってね~、王の即位は成人になってから=結婚が出来る! という事なのだ。そうです、そうです! 私は晴れてキールと結婚を迎えました♬
――イヤッホォ―!!
待っていました、待っていました! この三年間! 過ぎればあっちゅー間だったと思えるけど、長かったなぁー。この日を夢見て毎日地獄のような勉強を堪え抜いてきたよ。それはもう歴史的物語だったな。その努力が報われて私は正式に王妃となった。
こちらの世界の式は親戚や友人を招いて行われるものではない。新郎新婦は神殿の関係者に見守られる中、主祭壇の前で愛を誓い合う。シンプルに見えるが身を清めるような重厚な儀式である。
ただ家族や友人に見守られるわけでもないし、神父の前で誓いのキッスもしない(これは非常に残念だった)。派手好きな私には正直、物足りないなぁと思っていたのだが、披露宴的なものが別に行われる。
――リンゴォ――――ン! リンゴォオオ――――ン!
抜けるような青空へと聳え立つ鐘楼から祝福の鐘が鳴り響く。戴冠式というめでたい儀式に輪をかけ、私とキールの華やかな披露宴が行われているのだ! だからもう国中が朝からお祭り騒ぎ♬
私とキールはウェディングドレスに身を包まれていた。私は純白色をベースに、ラインを赤にした光沢感の溢れるシルクに、きめ細やかに施された豪華な刺繍と鮮麗に宝飾されたアラビアンドレスは息を呑むほど美しい。
ヴェールやティッカ、ピアス、ペンダント、ブレスレットといったアクセサリーすべてのデザインは統一している。まさかこんな華やかなドレスを着られるとは。一番お気に入りは額で光り煌くティッカのアクセサリーだ!
キールの礼装姿も鼻血ブー垂れものだった! 金色のシルクをベースに純白の羽織りを重ね、私と同様刺繍と宝飾にあしらわれた豪華な礼装。ヴェールは純白色でアクセサリーは金色に統一されている。
それに王としての威厳と私への愛情で艶めかしさもプラスされた目眩くオーラ、すぐ隣にいる私は萌え死にしてしまいそうになるのを必死で抑えていた。きっと彼の姿を見た民衆から、失神者が続出するだろうな!
宮殿の外観も花と光の演出で美しく装飾され、青空には華やかな姿の小鳥達が鮮やかなリボンを咥え、青空に愛の華を描いて飛んでいる。その光景を初めて目にした瞬間、息を吐く事すら忘れる圧巻だった。
宮殿のバルコニーから、私とキールは数多の人々に笑顔で手を振る。民衆から「おめでとぉーおめでとぉー!」と、祝福の声がエールのように送られていた。これぞ毎夜、夢見ていた光景が現実リアルに! まさに感動の嵐! 涙がちょちょ切れまっせ~♬
そんでもって、まさかのケンタウロスのスーズ達もお祝いに来てくれていた! 今まで聖なる獣達が自ら人間の結婚式へ赴く事はなかったが、私達はケンタウルスの一族から厚い信頼を得ているのだ!
種族を超え、沢山の人達からお祝いの声をもらえて、今この瞬間が夢ではないかと疑うほど、幸せの真っ只中であった。夢想以上に実際は盛大な愛と夢に包まれている! 高揚は留まる事を知らない。
「凄い人気だね。キールと千景は」
背後から声を掛けられ、私はキールと一緒に振り返った。瞳に映るのは正装した姿のアイリと彼の隣には栗色のボブヘアーの小柄な女性がいた。女性はティユル・ハニーサックルちゃん。二年前ほど前、宮廷薬師としてやって来て、なんとアイリに見染められた彼の婚約者だ。
んで数日後に二人も結婚式を挙げる。アイリはキールが正式に王へ即位するまで、自分の幸せは後に考えていた。やっとキールの成人を迎えて、彼もようやく胸を撫で下ろして、愛しの婚約者と結婚が出来るというわけだ! 良かった、良かった♬
「大丈夫か? 疲れていないか?」
ふと隣で寄り添うキールから心配の声が掛けられる。彼の視線は真っ先に私の腹部に向けられていた。
「大丈夫だよ!」
私はそっとお腹に手を当てて答える。ぐふふっ、実はこの結婚式にはもう一つおめでたい事がある……そう! この時の私のお腹の中には新しい生命いのちが❤ もう六ヵ月目に入っていて、お腹もだいぶ張ってきて弾力がある。
既に性別は教えてもらっていて、女の子のようだ。それを聞いた時、ピンときたよ! きっと、この子は二年前に一度出会ったパンダちゃんが大好きな「あの子」だろうって。
――早く会いたいなぁ。
私は近い将来を夢想し、笑みを深めて願った。