Prologue「―プロローグ―」




 満月の明かりが妖艶なる光となって広い室内を照らしています。その光に包まれながら、天蓋付きベッドの中で、互いに裸身を露わにし、蕩けるような甘美な艶事が行われておりました。

 最後の密事へと入る時、突然、私の脳裏に「あの方」のお顔が浮かび、それは一瞬の躊躇いを生じさせました。その刹那、

「ひゃぁあっ…」

 ギシッと寝台が軋む音と共に、私は雷に打たれたような衝撃に襲われます。たっぷりと蜜を纏っている秘裂を割った熱い肉杭が内奥へと沈んできたのです。

「は…ぁっん……はぁ、はぁ、あぁ…」

 久々の熱塊の圧力に息をつくのも重さを感じます。そして脳内を蕩かすような甘い美声と言葉、さらに繋がっている場所から、さざ波のように広がる快楽によって「あの方」の存在が薄れていきます。

 微かに残る忘れてはいけないという思いも、与えられる甘い陶酔感にとって、その理性は砕かれてしまいます。今はもう目の前の彼しか考えられなくなっているのです。そして気遣われていた動きが、いつの間にか淫らな動きへと変わっておりました。

「んっ…あぁ…はぁ…あ、あっ…」

 忘我に浸るような甘波の余韻に、言葉を紡ぐ事が出来ません。無意識に目の前の彼を見上げると、汗を帯びて男性とは思えぬ程の蠱惑的なお姿で私を見つめており、私の鼓動は高鳴る一方です。

「良い顔をしている。なんとも言えぬ扇情的な表情だ」

 いえ、貴方様の方が十分扇情的でございます。突っ込み後、私の中で蠢いていた彼の熱塊が引き離され、圧迫感から解放されたのかと安堵をつきました。

 それも束の間、彼はいきなり私の両膝の裏を持ち上げ、それによって私の腰は高くせり上がり、さらに両膝が胸につくほど折り曲げられた格好にさせられた後、再び抽挿が始まります。

「あぁっ!」

 先程よりも肉茎が深部へと突き進み、しかもこの体勢ではその内容が丸見えではありませんか。

「恥ず…かし…い…です」

 目を潤ませ、思わず羞恥心を言葉にしますと、彼は口角を上げ、満足げに笑みを深められました。それがとても意地悪な表情に思えます。そして言葉を交わされず、代わりに最奥へと快感が送られてきます。

「あぅっ! そ…そこはっ…」
「ここか」

 繋がって間もないのに、既に彼には私の絶対的な場所を探り当てられており、そこを一心不乱に穿ち続けます。

「はんっ…あんっ、やぁあっ、はぁあ!」

 より私の嬌声が上がると、打ち突く速度が上がり、ゾクゾクと背中から躯全体へと戦慄わななき、それは高波のように頭の芯まで到達してきました。

―――あぁ、もう…。

 絶頂が近い事を悟った私は頭の中が真っ白になりかけ、ほんの一瞬、理性が戻ります。

―――「彼」は今日会ったばかりの人。

 それも…日本人でも外国人でないのです。彼はそう、「異世界の人」。何故、私は彼に抱かれているのか、抱かれる事になったのか。私は今日、信じられない出来事が身に起こり、この世界に導かれました。そう、それは……。





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