第二十八話「憑りつかれた前戯 」
「やっぁああん、な、なんでぇ!」
「さっき、やめてって言っていた場所には触れてないからいいだろ?」
「だから……って二本の指で……奥を責めないでよ……んぁあっ、やぁぁんっ」
グチュグチュヌチュヌチュと、耳を塞ぎたくなるような厭らしい粘着質な音が洩れる。
「あん、あん、お、音やだぁ、はず……かしいぃ」
「オマエが垂らしまくるから仕方ないじゃん」
「やぁぁ、そんな……い、言い方しないで……よぉ」
「じゃぁ垂らすなよ」
私は本気で懇願をしているのに、キールはわざと音を聞かようと、指の動きを速める。
「やぁぁんうぅ。もぅ離して……よぉ」
「それはこっちの話だっての」
「い、意味……わかん……なぁいぃ」
「指を離そうとしても、そっちが咥え込んで離さないんじゃん?」
「ちっ、違うぅ、なに……それぇ、やぁん、んぁあっ」
「ここヤバイんだけど? どんだけ蜜垂らしてんだよ?」
「やぁああんっ」
キールは秘所から溢れて流れる水気を強調してきた。それが如何に羞恥心を煽るものかわかって言ってくるんだ。それに私がなにか言う度に、辱められては好き勝手に弄られていた。
「はぁんっ、やぁぁん、んぁ! あぁあんっ」
骨の随から神経全体へと回る快楽と、よがり声で酸素不足になって気絶しそう。熱い快感の波が躯も心も蕩かし、我を忘れようとさせていた。
「もっ、もうダ……メェ……」
込み上げてくる高揚感に躯が無意識に力が入って、キールへすがるように躯を合わせる。
「もしかしてイキそう? 締め付けが凄いんだけど?」
キールの言葉通り、私はもう限界だった。でもツンデレの性格が素直に認めたくなくて……。
「違う……もんっ」
「イク寸前まで意地を張るってどんだけ強情だよ」
「ん、んぁ、あん、え? ひゃぁあん!」
花びらの奥を突いていた二本の指に加えて三本目が沈んできた。
「やぁああん! なんで増やすの!」
「違うって言ってたから、気持ち良くなって欲しくて」
「バカァ!」
奥を三本の指で突き、空いている親指は花芯に触れ始める。奥で蠢いている指は一心不乱な動きをし、それに連動される親指は腹で花芯を震わせ、とんでもない強い刺激を与えてくる。
私はなんとも言えぬ快楽に酔いしれながら、もっと掻き乱して欲しいという貪欲な気持ちと、もう達してしまいたいという、二つの欲望に葛藤する。もうダメ、頭がおかしくなっちゃう!
「あぁぁん、はぁぁん、やん! はんっ……もう……ダメェ……」
「なんで?」
耳元でそっと囁かれるキールの甘ったるい声と送り込まれてくる快楽に再び絶頂が襲ってくる。
「んんぅ、気持ち……い……い……から……もうイクよぉ!」
私がグッと力を込めて答えると、
「え? え?」
突然に秘所から質量感が無くなってしまい、私はなにが起きたのか理解出来ずに呆然となる。
「はぁはぁ、な、なんで?」
「なんでって、やめてって言ってたし?」
「うっ」
私はたっぷりと潤ませた瞳でキールを恨めし気に見上げる。散々人を恥ずかしい思いにさせて、気持ち良いとまで言わせておいて、それでもまだ辱めたいんだ! どんだけドSなんだよ!
しかも今、人の目の前でネットリと蜜に絡まれた指を舌で舐めているし。そんな妖艶な姿のキールは勿論だけど、あの蜜は自分が出したものだと思うと、まともにキールを見る事が出来ない。それなのに……。
「で、どうするって?」
「う……」
イク寸前でやめられて躯は恐ろしく疼いて仕方なかった。今すぐにでも触って欲しい。キールだってわかっている筈なのに、なんで意地悪ばっかするんだよ! 躯はキールを求めている。私は彼の傍に寄って耳元で囁く。
「ちゃんとイカせてよぉ」
私は恥ずかさに身を震わせ、声を絞り出した。その欲望を耳にしたキールは大層満足げに笑みを広げ、すぐに私をベッドへと押し倒す。
「な、なにするの?」
「する事、口にしていいの?」
「い、言わなくていい!」
「本当はもう挿れてもいいけど」
「え?」
「もう少し遊んでもいいかな」
「な、なに?」
キールが私の上に覆い被って来て、私の心臓はドキドキバクバクに速まる。すぐに胸を掴まれ、感触を楽しむように揉みしだかれた後、一方の胸の突起を口の中へ含まれ、もう一方の胸を指で翻弄される。
「ひゃぁああっ」
蜜で豊潤となっている秘所にまで手を掛けられる。敏感な三ヵ所の同時責めだ。秘所へと当てられた指は三本まで増やされ、律動的なピストンと掻き回しを繰り返される。その度にグチュリヌチュリと蜜が激しくぶつかり合う音が洩れた。
「やぁああっ! 一気になんて反則だぁ、バカァ!」
私が文句を零すと、余計に行為が悪化してなにも言えなくさせられた。敢えて言える事は心酔によって吐かれる喘ぎ声だけだ。もう神経の集中が三ヵ所もあって意識が何処かに飛んでいきそうだ。
「はぁぁん! やぁん……あん、あん、あぁぁん!」
こんな綺麗なコの厭らしい舌と指使いの姿を目の前にして、躯がずっと疼きっぱなしだ。さらにキールは何度も私の情欲を煽るような言葉を囁き、その声が色っぽく優しいから脳の中が溶かされそうになる。私は与えられる快楽に身を委ねていた。
「あん、あんっ……んぁぁ、はん……あぁあん、いやあっ……ダメェ……やぁああん……」
部屋中に私の啼き声と蜜が混ざり合う音だけが響き渡る。
「もう……ダメッ!」
そう私が叫ぶと、キールは口に含んでいた突起から離れ、秘所一点に責めを集中させる。
「ひゃぁあん、あぁあんっ、やぁあん、責め……すぎ……だよぉ」
指が再奥まで入り込み、頭の中が散乱する。グチュグチュヌチュヌチュ、グチュリヌチュリとした水音が淫靡に奏でる。ゾクゾクと込み上げる快楽に躯が激しく痙攣し、世界が真っ白に染まった瞬間、
「ひゃぁああん!!」
私の躯は大きく弾けて絶頂へと達してしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
私は乱れた呼吸を戻そうと必死になる。キールの指が秘所から抜けた瞬間、ドロッと白濁した蜜が流れ落ちるのが伝り、私は堪えられずに瞼を閉じた……。