「お願いですから、離縁して下さい!」




レネットの年齢⇒34歳(見た目は17)

アクバールの年齢⇒54歳(見た目は27)

レネットが14歳の時(見た目は7つ)



「レネット……」  彼の大きな手が私の顔を包み込む。思っていたよりも低く、そして甘く澄み通った声に、一瞬にして私は胸の内を痺らせた。  ――私の旦那様はこんなにも素敵な声をされていたのね。  やっと心も躯も一つとなった今宵、予想もしなかった出来事が起きた。「彼の呪い」が解かれたのだ。ようやく私は彼の声を聞く事が出来た。美しい風采さながらの声に感動すら覚える。私は先程までの蕩けそうな甘美なひと時とはまた違う幸福感に満ち溢れていた。  ところが……。 「これでやっとこの田舎暮らしともサヨナラだ。この二十年待った甲斐があったな。本当に感謝するぞ、レネット」  それを耳にした私は刹那、凍りついた。只ならぬ剣呑な雰囲気を感じ取ったのだ。  ――なに今の……アクバール……さ……ま? ✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻  名門シュベーフェル家の次女に生まれた私は幼い頃から躯が弱く、都会の空気に馴染めずにいた。頻繁に体調を崩す私を心配した両親は私が十四の時、空気の澄んだ森の別荘へと移させた。そこで私は専属の侍女数人と暮らすようになる。  両親や姉妹達と離れ、初めは凄然とした気持ちになり、よく泣いていたが、別荘の周りは山も空も氷を透すように澄み渡っていて、琥珀色の光の斑を描く木漏れ日も心地良く、躯が嘘のように軽く健康になってくると、次第に淋しさが薄れていった。  都会にいた頃はいつも体調を崩し、みなから心配される自分が何処か普通の人とは違う気がして、よく胸を痛めていたものだった。それがこの別荘に来てからは、全くといって縁がなくなった。ここは私にとって特別な場所だ。穢れのない聖地にすら思えた。  この場所で暮らすようになって、ちょうど二十年が経った頃だ。その頃になると、都会でも問題なく暮らせるまでの健康的な躯になっていた。やっと家族から心配される事なく、一緒に過ごせる筈だったのだが、私は敢えて別荘暮らしの方を選んだ。  ここに慣れ親しんでいるからというのは勿論、何故か「ここにいなければならない」と、そう思っていた。今考えれば、この時から「運命」の歯車は動いていたのかもしれない……。  三十四の成人を迎えて暫く経ったある日の事だ。この日は空が抜けるような青みを帯び、特別に晴れ間が広がっていた。何かが起こりそうな予感がし、私の心には冒険心が生まれていた。  いつもなら別荘からそう遠くへは行かないのだが、この日は思い切って羽を伸ばしたい気持ちになっていた。実は私は昔から気になる場所があり、そこは別荘から離れて一キロほどのところにあった。  森の草木から抜け、開けた視界の先に例の場所、華麗で荘厳な豪邸やしきが建っていた。重厚な外観は白を基調とし、洗礼されたデザイン性のあるこの豪邸は都会の貴族のものとなんの遜色ない豪勢なものだった。  私の家も都会にあり相当なものだが、それ以上の豪邸がこんな森の中にあるのかと不思議に思っていた。別荘にしては妙に豪華すぎる。一体どんな人物がこの豪邸に住んでいるのか、とても気になっていた。  しかし、何度か訪れても人の姿を目にした事はなかった。とはいえ、遠目からではあるが、手入れが行き届いた芝生は生え立てのようにみずみずしく青々とし、正門から豪邸までの道のりにはふんだんに続く彩り豊かな花々が並んでいるところを見ると、誰かが住んでいるのに間違いはなかった。  今日の私は大胆にも正門の前まで行き、中の様子を覗いて見た。すると……? 突然に門がゆっくりと左右に開いた。それはまるで私を招くかのように、ごく自然であった。勝手に入って良いのだろうかと躊躇ったが、気持ちとは裏腹に既に足は敷地の中へと入っていた。何かに手を取られるように、私は前へと進んで行く。  門の外からでも敷地の見映えの良さは分かっていたが、実際に間近で見ると、初めて目にしたかのように心は打たれ、感嘆の溜め息が出た。構成された配置の庭木や花は爽やかな風に揺れ、心が弾むような色彩が広がっていた。  気が付けば、入口の扉まで来ていた。……さて、ここから先をどうするべきか。チャイムを鳴らすべきか。鳴らしたところでも、私はこちら様に用があるわけではない。本当にどうしたものか。答えが出せず、数分と立ち尽くしていた。  …………………………。  ――フワッ。  一瞬、とても心地良い風に包み込まれて我に返る。そしてカサッとした音が背後から聞こえ、私はドキリと心臓の音を立てて後ろへと振り返った。すると、一人の男性が立って私を黙視していた。  男性は見上げるほどの長身で、立ち姿までもが雄々しく彫像のように美しい。金の刺繍に縁どられた紺色のフロックコートは際立っており、品の良さが風格から滲み出ていた。  ハッと目が覚めるような美しさに波打たれた私はそのまま魂さえも蕩かされるような陶酔感を味わう。純白の雪のように光り輝くプラチナの髪、夕日が誘うような琥珀色の双眸、何処を目にしても均整の取れた輪郭、彼は美の神の化身なのだろうか。  あまりの美しさからなのか、目には見えない筈のオーラが放たれているように思えた。この場所は人の住む世界ではないのかもしれない。彼の存在がそう思わせた。そして、これが今の私の旦那様、アクバール様との出会いであった……。  彼は五十四歳、年の差が二十はあったけれど、若い年の男女が距離を縮めるのに、そう時間はかからなかった。彼は申し分ないほど素敵で、私は一目見た時から恋心が芽生えていたし、彼もこの森の生活では間近で女性と接する機会がなく、私の存在は新鮮で特別に思っていてくれていたようだ。  会う度にお互いが惹かれ合っていくのが手に取るように分かり、これこそ運命の出会いだと言い切れた。ただ彼には普通の人と大きな違いがあった。それは……彼は「声を出す事」が出来ない。  でも他人の声は理解している。耳には障害がなく、声を失っているだけなのだ。これは天性のものではない。では何故か……? なんと悪い魔法使いから呪いをかけられたというのだ。何故このような悪い魔法にかけられたのか、その原因はわからないそうだ。  突然、魔法使いは彼の前に現れ、黒魔術をかけた後、怒涛の如く忽然と姿を消した。あまりの一瞬の出来事で、呆然としている内に既に呪いは起きていた。それがどれだけ恐ろしく嘆く事であっただろう。  私はこの豪邸と彼の外面からして、由緒ある家柄の方だとは分かっていた。実際に彼は公爵様の地位を持っている。そんな彼がひっそりとこの森に身を潜めているのは声が発せられなくなってから、貴族社会では厳しい生活を虐げられるようになり、都会から疎遠となった。  こんな素敵な方が表から消えてしまうのは惜しいという気持ちはあったが、そのおかげで私達は巡り会えた。それを私達は不幸中の幸いだと前向きに考えていた。意思伝達は身振り手振りで察するが、どうしても理解の出来ない時は文字を書いて気持ちを表していた。  声を気にしなければ、彼の家柄や人柄と私にとってはすべて問題がなかった。だから私は彼を選んだ。私の家族も最初は彼の声を気にして、結婚を認めていなかったが、見て行く内に彼の誠実さを知っていくと、私達の仲を認め、ようやく私達は身も心も結ばれたのだ……。 ✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻  室内に明かりが戻る。私もアクバール様も寝台の上で共に裸身であったが、私は羞恥心を感じるよりも、サーと血の気が引いていき、蒼白となっていた。 「あの……アクバール様……です……よ……ね?」  私は恐々と弦が震えるような声で問う。今、私の目の前にいる男性は常に温和しく光りを湛える貴公子の姿ではない。……まさか私と繋がった事によって、彼に何かが起きてしまったのだろうか。私は冷や汗と共に、心臓が痛いくらいに高鳴っていた。 「どうした、顔を強張らせて? オレはオレだ。アクバールだ」  いいえ、違います! 私の知っているアクバール様ではないわ! 私の旦那様はいつも柔和な雰囲気で穏やかに微笑む包容力豊かな人だもの! 今の彼はそんな様子は微塵も感じさせない。…でもまさかこれが本当の彼の姿だと言うの?  「何か物言いたげだな?」  彼は私の心を悟るように口角を上げて笑う。それを目にした私はカッと何かが弾けた。 「お声が出るようになってから、今までのアクバール様と随分と雰囲気が異なる気がして……」  自分でも不満が表情に出ているのが分かる。柔和どころか野生的で殺伐とした感じがする。まるで獲物を狩る野獣のようで、危険なシグナルさえ感じる。これは明らかに私が愛した旦那様ではない。私は素直に胸の内の気持ちを吐露した。 「オレは初めから何も変わっていない。一体どんなイメージをもってオレを見ていたんだ?」  彼は私の言葉に、少しの揺るぎも見せない。返って冷静に問われてしまう。 「それは……。常に温かく微笑みながら、私を優しく包み込んで下さる方だと」  出会った時から今までずっとそうだと思っていた。そんな彼だから一生涯を共にと誓ったのだ。それなのに、私の思いとは裏腹に……。 「そうか。随分と面白いイメージを抱かれていたものだな」  フッと鼻で笑われる。さっきから私の反応を面白おかしく感じ取って物を言うアクバール様に、とうとう私は爆発した! 「今の貴方は私が愛したアクバール様ではありませんっ」  何が悲しくて躯を重ねた直後に、こんな言葉を吐かなければならないのか。こんな方だと分かっていれば、初めから結婚などしなかった。私は彼に対する愛情が冷めていくように思えた。さらに涙が溢れ、頬に伝っていた。 「勝手なイメージをもっておいて、その言葉はないな。まぁ、呪いを解いた感謝があるから、今の言葉は忘れてやる」  アクバール様から「呪い」という言葉を耳にして、私の頭の中に閃光が迸る。  ――呪い。そうだ、だからか! 「呪いを解く為に私を騙していたのですか! 私から愛をもらう為に、完璧な旦那様を演じて! 愛して下さっていた事も全部嘘だったのですか!」  そうだ、私は騙されていたのだ。呪いを解く為の駒に過ぎなかったのだ。かつて彼に見せた事のない姿で取り乱し、大声をぶつける。そんな泣き叫ぶ私の姿を見せても、少しも動揺せず、平然としているアクバール様がとても恨めしく思えた。 「馬鹿を言うな。呪いを解く方法は相思相愛で身も心も結ばれなければならない。オレはオマエを愛している」 「え?」  愛しているという言葉に一瞬、怒気を忘れる。そこに不意を突かれ、気が付けば、私はアクバール様の腕の中にいた。  ――ドクンドクンドクンッ。  息が止まるほど、ギュッと抱き締められ、鼓動が早鐘を打ち始める。  ――そうだ、今はお互いに素肌だったんだ。  温もりが変に息吹きを感じさせ、顔に恥じらいの色が溢れる。それに輪をかけて、アクバール様は私の耳元で微かな吐息と共に甘く囁く。 「愛している、レネット」  躯の芯から蕩かされるような痺れが生じる。 「この雪のように真っ白で透き通る肌、陽射しの光さえ弾く美しいブロンドの髪、どの宝石よりも輝かしいエメラルドの瞳、耳をくすぐる愛らしい声、芯が強く常に気丈に振る舞う姿、すべてが愛おしい。オレのレネット」  私を求めるように、何度も何度も「愛している」の言葉を重ねられる。それと同時に、私の耳に彼の唇が落ちる。輪郭をなぞるように舌を滑らせたり、窪んでいる溝を責めたり、また耳たぶを甘噛みしてみたり。何処が一番感じるのか探るように舌が回る。 「ふ……ぁっん」  穴に舌先が入り、独特な音によって犯される。過敏に反応を示したものだから、そこを重点的に責められる。言葉と愛撫の繰り返しされ、その度に胸の奥へと彼の想いが浸透していくようだった。呪いを解く為の偽りかもしれないという訝しささえも消し去るような情熱をぶつけてこられ、私の気持ちが絆されていく。 「んっ……あぁん……」  躯中が熱く火照り、快楽に酔う声が零れる。鼓動が余り高まって呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうだった。いつの間にか、アクバール様に対する嫌悪感が嘘のように無くなり、再び蕩けるような熱が戻ってきてしまう。私は戸惑い、身動みじろぎ一つ出来ずにいた。  さらにクイッと顎を上げられ、アクバール様の美しいお顔を間近にして唇が重なり合う。容易く割られた唇に熱が籠められた舌が入る。すぐに舌が絡み、拙い私の舌を誘導するように、アクバール様の舌が優しく舞い、ふわふわと心地好い陶酔感が生まれる。  徐々に私の舌が軽やかな動きになっていくと、お互いの舌は熱と潤いが深まり、刺激的なリップ音が洩れ始める。すると、それが合図かのようにアクバール様の舌は貪るように私の口内を蹂躙していく。それに上手く舌が合わせられず、瞳に潤いが帯びる。  苦しいぐらいに責められているのに、こうやって繋がっている事に幸せを感じていた。さっきまでの憤りは何処へ行ってしまったのだろう。躯中から溢れる熱に逆上せてしまいそうになる。  やがて舌は流れるように下へと滑り落ちて行き、双丘へと目を向けられる。アクバール様の大きな手はしっかりと膨らみを上げ、まだ初々しさを残す色づいた蕾に狙いを定めた。 「ん……っあん」  軽く唇で挟まれただけで、目眩に襲われたような感覚に陥り、固く目を閉ざす。やっぱりまだ慣れない。ここに唇を挟むなんて母乳を飲む赤子だけがするものだと思っていたから。 「ひゃ……ぁんっ」  熱くぬめった舌が軽やかな動きをして蕾を躍らせる。真っ白な肌の中に唯一色づいた桃色の蕾はいつしか色を深め、どんなに責められてもピンッと硬さを失わず屹立し、存在をより一層際立たせていた。 「硬くなっているのが分かるか?」 「やぁ……」  蕾を挟まれながら声をかけられる。アクバール様に触れられるまで目にした事のない姿の蕾に居た堪れない気持ちになっている私は彼から視線を逸らす。 「初々しい果実が今はすっかり色気づき、厭らしい姿に変わったな」 「や……めて……下さい」  言葉責めも交じらせて、私の羞恥心を煽っているのが分かった。より頬の赤みを深めた私に不敵な笑みを浮かべるアクバール様は舌で舐り始める。執拗に蕾を翻弄し続ける彼のなんとも淫靡な姿に躯中が痺れ、下肢からの滴りに気づいてしまう。  ――これは……。 「やぁっ……」  それが何かと気付くと、私の恥じらいが強まった。その変化に気付いたアクバール様は真っ先に原因のその場所へと手を伸ばす。 「やっ、駄目っ……んぁあ」  制止をかけた時には既に遅く、クチュッとした水音が耳を犯していた。羞恥を極限まで煽る卑猥な音だ。少し前までは誰にも触れられた事のない秘密の場所だった。そこをアクバール様によって開発されてしまったのだ。  こんな場所に人の手や舌が触れるなど、ましてや潤いが生じ水音まで洩れるなど、全く知らない事だった。大人の世界でしか知り得ない禁断の行為だ。成人を迎えたばかりの、まだあどけなさを残す私には信じられない光景だった。 「随分と濡れていると思いきや、蜜が滴っていたのか。どうりで……」  実に満足げに笑みを零すアクバール様へ私は悔しい気持ちと羞恥心を顔いっぱいに散らす。彼は私のなんとも言えぬ複雑な顔を見つめたまま、熱を含んだ甘い声で名を呼ぶ。 「レネット……」  もうこの声だけで性感帯を刺激され、全身に鳥肌が立ちそうになる。確実に私の躯はアクバール様の毒牙にかかっていた。 「言っておくが、オレはオマエを離すつもりはない。心が離れてしまえば、また呪いにかかってしまうからな」  アクバール様の琥珀色の瞳から決然たる光が走ったように見えた。  ――それは……。  完全には呪いが解け切れていないという事? また思わぬ言葉に、私の心は動揺する。 「わ、私はもう今までのようには愛せませんっ」  咄嗟に投げかけた言葉がこれだ。私は彼に対して不信感が生じているし、このまま一緒に居たって絶対に心は離れていく。 「今更、結婚を取りやめなんて出来るのか? 伯爵令嬢の名に傷がつくぞ。第一、アガット伯爵がそれを許すと思うか?」  返された言葉に、うっと言葉が詰まりかける。ヤバイ……、彼にはすっかり見抜かれていた。確かにお父様なら有り得る。体裁をとても気にする人だから。でもだからといって、こんな危険な方の傍に一生涯はいられない。私はなんとか動揺を隠して言葉を返す。 「そ、それは事情を話せば、お父様達も分かって下さる筈です!」 「そんな世間は甘くないぞ。事実、オレは虐げられた身だ。その若さで傷物になったオマエに対して、世間の風当たりは冷たいだろうな」 「そ、それでも私はもう傍にはいられませんっ」 「そうか……」 「?」  妙に素直に私の言葉を受け入れたかと思ったら、いきなり彼は私の躯を寝台に落とし、 「やぁあっ!」  そして両膝を立てられ、大きく左右に開かれた足の奥にある秘密の場所へと顔を埋められる。大きく空気に晒されただけでも恥ずかしい場所をアクバール様は難なく舌をねぶり回す。抵抗もなく、受け入れてしまった自分にも驚いてしまう。 「あんっ、あん、やぁあん……」  開発したての隘路を再び解かされていく。触れられる度に自分の口から厭らしい声が上がっていた。その声がどんどん甘くなり、蕩かされていくのが分かる。しっとりと潤ったその場所を舌は容赦なく、侵食していく。 「あんっあんっ」 「劣情を掻き立てる濃厚な蜜の味だな」 「やぁっ」  唇を離されたと思いきや、またとんでもない淫らな言葉を落とされる。 「それとも人を狂わせる媚薬か? そんな危険なものはすべて払拭しておかなければならないな」 「な、なに言って、ひゃぁあんっ」  ピチャクチュッと水音を弾き、より潤いを深められる。かと思えば、大袈裟に蜜をすする音を上げられ、私は叫び声のような嬌声を上げる。その上、胸の蕾まで手を掛けられ、重なる快楽に気がおかしくなりそうだった。 「もっと欲しいか?」 「い……やぁ……んあっ!」  質問されて何も答えていないのに舌が襲ってきた。 「下の口は欲しいとパクパクとさせて言っていたぞ」 「そん……なの、知ら……ないですっ……やぁあんっ」  私の感じる場所すべてを暴いていく。アクバール様は絶対に私以外の女性の味を知っている。じゃなきゃ、こんな的確に気持ちいい場所を探り出せないもの。そう思ったら、なにやら胸の中がざわついてきた。 「考え事とは余裕だな」 「え? ひゃっ! そ、そこは……ダ、ダメッ! いやぁあんっ」    ほんの少し意識が別にいっていただけなのに、アクバール様の機嫌を損ねてしまった。熟れた花芯を味わうように咀嚼そしゃくされ、戦慄が全身に駆け巡る。最も敏感な秘玉を遠慮なしにめちゃめちゃにされる。  頭をフルフルと横に振り行為に制止をかけるが、それが返って執拗に責められてしまい、私の躯は幾度も跳ね上がった。これは明らかにアクバール様の機嫌を損ねたお仕置きだった。故意ではないのに……。 「はんっ、あぁんっ、やぁあ!」  快楽に支配された躯に理性が吹き飛び、溺れ落ちて行く。ゾクゾクと何かが昇り詰めてくる。もう駄目……。 「き……気持ち……いぃっ……イッちゃうっ!」  そう叫んだ瞬間、頭がスーと真っ白になり、眼裏にパァンッ! とスパークが弾けた。 「ふっぁああんっ!」  ガクガクッと躯が大きく痙攣し、次の瞬間には強張っていた緊張が弛緩され、火の光が弱まるように力尽きていく。無力になった私を肌で感じ取ったアクバール様は私から躯を離した。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」  私は不足している酸素を必死に取り込む。半ば放心状態で上手く呼吸が整わない。そんな中だけど、無意識の内にアクバール様へと視線を落とす。彼は満ち足りた表情を見せていた。 「ここはいつでもオレを受け入れるようだな。オマエの心が離れているのであれば、とうにオレはまた声を失っている」  そして肩をそびやかし、余裕の言葉を投げる。なんて傲慢な人だろう。そう私は不満を抱いたのに、反論しようと思わなかった。ただ……。 「呪いは完全に解かれていないのですか?」  心の疑問を零した。私が傍でしっかりと愛していれば呪いは解かれるが、離れてしまえば、また呪いは舞い戻る。この先、何があるのか分からない。果たして中途半端に呪いが残っているのは良いのだろうか……。 「完全に呪術を解く方法は、それをかけた魔法使いにしか出来ない」 「でしたら、その魔法使いを探しに行きましょう!」  バッと私は横たわっていた躯を起こし、満面の笑顔をアクバール様に向けて提案をする。 「いやに乗り気だな?」  何処か呆れたような面持ちを見せる彼だが、私が離れても呪いが戻らないようにするにはやるしかない! 「この先も呪いに縛られるのは嫌ですよね? 私も気が気ではございません! そもそも何も悪い事をしていないのに、呪いをかけられる事自体おかしいではないですか! きっときちんと話し合えば、魔法使いも分かってくれる筈です! ですので探しに行きましょう!」 「……そうだな。探しに行ってもいいかもな。今度ソイツに会ったら、ぶっ殺そうと思っていたところだ」 「物騒な事言わないで下さい!」   もう嫌! こんな野蛮な人から早く解放されたい~! 絶対に魔法使いを見つけ出して、呪いを解いてもらわなきゃ! ✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻ 「はぁー」  ――やっぱり無理よねー。  私はシュヴァインフルト国デリュージュ神殿の前で、深い溜め息と一緒に諦めを悟った。この一週間、ありとあらゆる場所を巡って例の魔法使いを探したけれど、早々見つかる訳ないわよね。無謀だとは思ったけど、だからといって何もせずに、あのオレ様アクバール様の傍で強要されているのは堪え難く……。  情報をもとに、呪いをかけられた場所デリュージュ神殿を始め、魔法使いが寄り付きそうな場所を点々と回ってはみたけれど、そもそも情報自体が漠然とし過ぎていて、無理があるのよね。分かっている事は人型で、呪いをかけられる程の魔力をもつハイレベルな魔法使いだという事。  この世界の魔法使いは海底に棲んでいる。そして今、魔物がむやみに地上をうろつくようになり、人間の魔力が強化し、その影響で魔法使いは地上から疎遠になっていた。だから地上に現れる魔法使いはそれなりの能力をもつ。  基本は海に棲む生き物だし、普段が地上にいるとも限らない。この際、魔導士の力添えをしたいものだ。実家に戻って探してもらおうかな。でも魔法使いを探しているだなんて知れたら大目玉だ。魔法使いなんて危険なイメージしかないのだ。  とはいえ、アクバール様が呪いをかけられたのも二十年も前の事であり、呪いをかけられた理由すらも分からない。魔法使いが残した唯一の言葉が、この呪いを解くには「真の愛を手に入れ、愛しの者と身も心も結ばれる事」と。  しかもその愛が離れてしまえば、再び呪いは身に降りかかるという。そして他人に呪いの解き方を教えてしまえば、その呪いは永遠に解かれなくなる。だから私はアクバール様と結ばれるまで、呪いが解かれる方法を知らなかった。  ――はぁー、気が重い。  呪いは完全に払拭し切れていないのよね。そんな馬鹿げた呪いから解放させ、私も彼から離れなければ。……さてと。  ――これ以上、闇雲に探しても時間の無駄よね。  この後、私は今日の締めにデリュージュ神殿の内部へと足を運び、例の魔法使いが見つかるよう、祈りを捧げて神殿を後にした……。  …………………………。  ――まだアクバール様は戻って来てないのかしら?  神殿の出入口を出てすぐに私は辺りを見渡す。もとはアクバール様と一緒に訪れていたのだが、彼は仕事がある。声が出るようになってから、多忙が増し、私と魔法使いを探している間も、時折抜け出して仕事をしていた。  ――仕方ない。アクバール様が戻られるまで待ちますか……。  そう思い、扉を出てすぐの階段を下りようとした時だった。  ――フワッ。  ほのかに漂う甘いスウィーツのような香り。ふと私の横を通り過ぎる人物に思わず私は振り返って、相手の後ろ姿を目にする。深紫色のローブを身に纏い、頭までフードをスッポリと被っている。さっきほんの一瞬だけど、覗いた横顔は端正で美しく、目を見張るほどだった。  背の高さと躯つきからして男性だろう。彼がフードに手をかける。そうか、神殿では被り物が禁止されているものね。ハラリと取られたフードの中から、まばゆい陽射しの如く、キラキラとした艶やかなブロンドの髪が流れた。  ――なんて美しい髪なの。本当に男性なのかしら?  息を呑んで相手の後ろ姿に見惚れる。あんまりにも見つめていたものだから、相手が私の視線に気付いてしまったようで、突然に振り返った。  ――うわっ。  私は目を大きく見開く。本当に女性かと思った。男性は妖艶な月光のような美しさを湛えた中性的な容姿をしていた。ただ一番目を引くのが赤い瞳だ。  ――……赤は魔女と魔法使いの……ひ……とみ?  そう認識した時、寒慄が走る。  ――この人は魔法使い? ✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻  ――本当に教えられた通りの事をすれば、呪いは解かれるの?  先に寝台へと入っていた私は枕を握って今日の出来事を振り返っていた。デリュージュ神殿で出会ったあの男性だが、咄嗟に私はとっ捕まえた。彼が例の呪いをかけた魔法使いのかもしれないと思ったからだ。  魔法使いは見事なブロンドの髪をもった中性的で美しい容姿をしていると聞いていた。そして瞳はガーネット色。赤い瞳は魔女や魔法使いのみがもつ。数少ない情報だが、それと一致した男性を私は恐ろしさも考えずに、手を掴んで呼び止めた。  必死な様子の私を魔法使いは動揺する素振りも見せず、静かに神殿の内部へ入ろうとしたものだから、私も合わせて再び内部へと足を入れた……。魔法使いの只ならぬ雰囲気とオーラに何度も身を引きそうになったが、こちらとて自分とアクバール様の将来がかかっている。何もせずにこのまま引き下がるわけにはいかなかった。  魔法使いは私が隣にいても気にもせず、ゆっくりとマイペースに内部を回っていた。私はいつのタイミングで話しかけようか、四苦八苦していたが、一通りの少ない場所へと来た時、今だ! と思って口を開いた。意外にも魔法使いは立ち止まって、私の言葉に耳を傾けたのだ。  ――結果。  魔法使いから呪いを解く方法を得られた。彼はそれだけしか答えなかったのだ。呪いをかけた魔法使いなのか? 何故呪いをかけたのか? など、聞き出したい重要な話は沢山あったのだが、何も答えなかった。  そして……、呪いを解く方法があまりにも度胆を抜かされる内容で、聞いた時の私は思考が完全に止まってしまっていた。生まれてこの方、耳にした事のない内容で、そんな事を世の中の男女がしているのかと耳を疑ったほどだ。それは……。  ――今から言う内容の奉仕をすべて行う事。  それもすべて性的な意味だ。……有り得ない。とにかく有り得ない。あんな内容をどうやってやればいいのよ! しかも奉仕の件をアクバール様に話せば、呪いは永遠に解かれないという。  なんと頭の悩ましい。あの魔法使いは本当にとち狂っていたんだ。そんな人に呪いをかけられたアクバール様が心底気の毒でならなかった。あ~、でも一刻も早く呪いを解き、アクバール様も私も自由の身にしなくては……!  ――数十分後。  湯浴みから上がってきたアクバール様の姿を目にした私は心臓が胸の外へ飛び出すかのように激しい鼓動を打つ。バス上がりの湿ったアクバール様の寝衣姿は色香を放っていて、余計にドキドキがまない。。  それでもって、これから私は例の奉仕を実践しなければならない。鼓動が切迫し過ぎて、途中で気絶してしまうのではないかと懸念すら覚える。  ――あー、既にもうクラクラとして気絶してしまいそう。  頭を抱えるようにして俯いていると、ふと気配を感じる。目の前が影っていると思ったら、アクバール様がいたのだ。いつの間に寝台へと入ったんだろう。   ――本当になんて綺麗な男性セクハラだろうか。  数秒見つめ合うだけで、躯が火照り始める。 「どうした? 今日はいやに恍惚とした表情をしているな? もしかして誘っているのか?」  どうやら急に熱を帯び始めた私の表情は欲情の色を現していたようだ。「そんな筈ないではないですか!」と反論するつもりが、アクバール様の艶やかな姿と有り得ない内容の奉仕の件とで、色々複雑な感情が入り混じっていた私は自分でも信じられない行動をとった。  自ら手を伸ばし、アクバール様の首へと腕を回し彼へと躯を委ねる。そしてそのまま自然な流れで、彼に口づけを落とす。こんな大胆な事をするのも、すべてあんなとんでもない話が出たからだ。  こんな事を自分からするなんて恥ずかしくて穴があったら、一生出たくないぐらいの気持だったけど、こんな事も呪いを解く今日で最後だからと自分に言い聞かせた。アクバール様と共に自由を手に入れたら、別々の道を歩む、そう私は決めていた。だから覚悟をもって奉仕をする。 「んっ……ぁ……んんっ」  濃厚に絡み合う舌は快感を追うように、お互いの口内を軽やかに舞っていた。この数日で私の口づけも少しは上達したようだ。時を忘れるように没頭していれば、お互いの息が荒くなり、その内に唾液が口元から零れるようになる。  いつも激しい口づけはされるけど、今日はまた一段と火が点いたように熱い。初めて私から求めた口づけに、アクバール様も興奮をされたのかもしれない。そう思うと、なんだか歯痒い気持ちとなった。  時間が経つにつれ、激しくなりすぎ、鼻呼吸でも追い付かなくなって、苦しさのあまり口元を離してしまう。目にした名残惜しそうな表情をされるアクバール様のお顔を目にして、躯がズクッと疼く。 「今日はどうした?」  質問をされ言葉に詰まる。アクバール様からの熱い視線をひりひりと肌で感じていたが、私は視線を泳がせ、頭の中で良い言葉を探り出す。 「今日はその……感情が高まっていまして……」 「そうか」  え? 今の言葉で納得されたのだろうか。 「ひゃぁあっ」  意表を突かれ、私は驚きに声を上げる。いつの間にか、私の夜着の裏へと伸びたアクバール様の手が秘所を襲う。ショーツの上から弾くように擦られていく。 「あんっ、い……きなり」 「疼いて仕方ないみたいだな? 既に湿っている」 「やぁっ、そ……そんな事は……んあっ!」  ズンッと指を深められ、抽迭が始まってしまう。 「あん、あんっ、ま、待って……」 「口は頑固のようだが、躯は待てないだろう?」 「そ、そうでは……なくて」  このまま私が気持ち良くなっている場合ではない。私がアクバール様にご奉仕しなければ意味がないのだ。理性が残っている内に事を済ませなければ。私はアクバール様の瞳をしっかりと捉え伝える。 「きょ、今日は私がアクバール様にご奉仕します」 「?」  彼の大きな双眸が大きく揺れる。顔を紅葉のように真っ赤にして伝えた私は消えて無くなりたかった。 「レネット、今の言葉の意味を分かって言ったのか?」 「は、はい」  私のような経験のない女子おなごがとんだ言葉を飛ばしたと驚きだろう。でも冗談でこんな恥ずかしい事が言えるものかと私は開き直っていた。あの魔法使いからはまず……。  ――まずは主人の雄芯を満遍なく愛撫しなさい。  そう言われていたのだ。  私の答えにアクバール様は一度寝台から離れ、素早く脱衣された。彼の裸体が眩しく映る。贅肉は殆どひとかけらもなく、念入りに鍛え上げられている精悍な躯つきに雄々しさを感じた。この逞しい躯に私は毎夜抱かれているのかと改めて思うと、また体内に熱が集中し始めた。  再び寝台へと腰を掛けるアクバール様は足を開く。開かれた先に私が要求を出した男性器が威風した姿で現れていた。目を瞑りたくなる。いくらこの一週間、アレが繋がっていたものであっても、いつもは燭台の灯りが消えている中でた。でも今日はしっかりとした明るさがある。 「レネット……」  甘い声で名を呼ばれる。アクバール様から誘われているのが分かる。私は意を決して、彼の前までいき、腰を落とす。すると猛々しい雄芯を間近にする。  ――こ、これは?  例えようのない生き物が屹立していた。こ、こんなものを男性は常に躯の一部としてもっているの? いや、今は姿形が変わっているから、尚そう思うのかもしれないけど、と、とにかく、生々しくて私の目には刺激が強すぎだった。 「どう奉仕してくれる?」  雄芯を突き出され、促されているのが分かった。私は高鳴る心臓の音と共に、楔を手にする。  ――うわっ。  強調するかのように張っているそれは熱をもって脈打っていた。本当に躯の一部、というか別の生き物にすら思えるぐらい生々しい。私は魔法使いに言われた事を思い出し、まずは亀頭の下部を握り、皮ごと上下に擦っていく。確か動きが途切れない方が、気持ち良くなると言っていたかな? 拙い動きではあったが私は懸命にしごいていた。  次に亀頭の根元部分を弾いたり、捩じったりもしてみる。そうする事で、亀頭と竿の両方を刺激出来るから感じやすいらしい。案の上、アクバール様の躯が小刻みに反応を示すようになった。私は何気なく彼の様子を一瞥する。途端に鼓動が速まる。  彼の余裕の顔が砕かれ、恍惚を得た色っぽい表情をしていた。こんな顔をさせているのは、まさに今自分がしている事によってなのかと思うと、妙な興奮を覚えた。そこから変に好奇心が湧き起こった私は思い切った行動に出た。  亀頭をそっと口に挟む。そしてすぐに優しく舌を這わせる。敏感な部分だと聞いていたから、ひっかりたり、歯を立てたりしないようにと最善の注意を払う。 「……っ」  頭上から艶っぽい声が落とされたのを耳にする。とうとうアクバール様から声が洩れたのかと思うと、私の気持ちはさらに高揚した。だからもっと気持ち良くなって欲しいと次に、亀頭の裏筋を唾液で十分に濡らしてねぶり始めた。同時に親指の腹を使って竿も擦る。 「んっ……」  アクバール様の躯の揺れが大きくなり、感度が上がっているのが伝わる。先端からみるみると蜜が溢れ出し、拙い私の手淫でも気持ち良ければ、こんな反応を見せてくれるのだと私は素直に喜ぶ。  そして最後に私は根本から全体へと舐め上げたり、出来るだけ奥まで咥えて上下する時に少し捻りを加えたりと、自分なりに工夫を凝らした。すると、彼の雄芯は張り詰めてより大きくなっていき、色っぽい吐息が零れ続けた。  それに感化された私の下肢もおのずと蜜が滴るようになる。初めてする行為なのに、こんなに没頭している自分が淫らに思えたけれど、恥かしいとは思わなかった。むしろ反応してくれるアクバール様を見て喜びを得ていた。 「レネット、そろそろ……」  絞り出すような声を出したアクバール様の雄芯がドクドクと脈打ちが激しくなり、彼は急いで私の躯を離した。その刹那、雄芯の先端から大量の精が噴き出し、私は目を見張った。  そろそろというのは達するという意味で、私が濡れないよう躯を離してくれたのかな。そのまま精を飲み込ませようとしなかったのは彼の優しさだったのだろうか。確かに吐精された液はまだ初々しさの残る私には刺激が強すぎた。 「はぁ、はぁ……」  見上げると、アクバール様は息を整然させ、表情が恍惚で溢れている。そして私と視線がぶつかると……。 「初めてにしては上出来だったな? 何処かで学んできたのか?」 「そ、そんな筈ないじゃないですか! 私はアクバール様しか知らないのですから!」  他の男性をちらつかせる言い方されて、私は本気で怒る。私はそんな尻軽ではない。 「ははっ、冗談だ。それほど上手かったと褒めているだけだ」 「冗談でも嫌です」 「悪かった」  素直に謝られると、何も言えなくなる。物言えずなんとも言えない表情をしてじとッとアクバール様を見つめていたら、彼は罰が悪そうに苦笑いをしながら、 「え? ひゃぁあっ!」  そっとまた私の秘所へと手を伸ばしてきた。 「随分と濡れたな。これなら愛撫しなくても、すぐに挿れられそうだ」  ここで彼はいつものニッとした余裕のある表情へと戻ってしまう。 「あんっ、あぁんっ」  さっきの行為で散々秘所に熱が籠ってしまっていた。軽く擦られるだけでも、躯がくねってしまう。下肢をもじもじとさせている私に気付いたアクバール様はサッと私のショーツを剥がす。なんて手際がいいのだろう、やっぱり手馴れているのだろうか?  躯を引き寄らされ、寝台へと躯を倒されそうになった。でも今日はこのまま彼に主導権を握らせるわけにはいかない。私には最後の仕上げをしなければならないのだ。  ――貴女が上位となって彼を溺れさせなさい。  これをやって、やっと完全に呪いが解かれるのだ。私は覆い被って来るアクバール様に手を添え、制止をかける。 「ま、待って下さい」 「なんだ、また? 今度は別の奉仕でもする気か?」 「そうです」  サラリと答えた私に、アクバール様の動きが止まる。きっと冗談で聞いたのに、うべなって驚いたのだろう。だって、私は本気だもの。 「へー」  感心しているのか、アクバール様の笑みの意味を考えると怖い。そしていきなり私の夜着に手を掛ける。 「な、なんですか?」 「オマエも脱げ。その方が挿れ易いだろう?」 「……っ」  美しい顔に似合わず、卑猥な事を平然と言うものだから、今度はこちらが驚く。声は発せられなかった頃の紳士はいずこにいったんだろう? 本当に! パパッと夜着まで剥ぎ取られ、私はアクバール様と同じく生まれたまんまの姿を露わにした。  ――そ、それにしても……。  自分が上位になるってどんなんだろう? あーだこうだと魔法使いは言っていたけど、本当にそんな体位があるのかと、私は冷めた目をして説明を聞いていた。 「オレはどうしたらいいんだ?」 「うっ……」  アクバール様は私の出所を見ているのかもしれない。私は必死で思い出す。 「そ、そしたら寝台の上で仰向けになって下さい」 「分かった」  彼は私の言葉通り、素直に寝台へ仰向けになる。うー、立派に屹立している雄芯が妙に毒々しく見える。アレを今から自分で挿れるのかと思うと、フラリと目眩に襲われそうになっていた。そこをなんとか気丈を保ち、私も寝台へと入る。 「し、失礼します」  緊張から上擦った声をして言葉をかける。  ――う~やっぱ無理ぃ。  だって、これから足を大きく跨いで目の前の雄芯を挿れなきゃならないなんて。そもそもこんな大きいもの入るのかな? 見た感じでは入らないよね? 「どうした? 怖気づいているのか?」 「ち、違います!」  悟られて動揺した私は思い切ってアクバール様へと跨り、彼の腹部に手を置いて、ゆっくりと腰を落としていく。うぅ~やっぱイマイチ穴の位置が分からない。顔を顰めながら、的確な位置を探る。なかなか上手く嵌められずにいたのだが、結合部が触れる度に甘美な痺れが回る。 「ふぁっ、あん」  湿ってから満たされない時間が長く、焦らされている感覚で躯も過敏に反応してしまっていた。それが返って満たされたいと欲望を掻き立て、私はグッグッと雄芯を無理に押し込むようにして必死になる。 「あぁっん!」  なかなか沈ませられない私を見兼ねたアクバール様が、痺れを切らしたのか、下から一気に雄芯を内奥へと突き上げた。予想していなかった事に私は躯を大きくしならせる。 「ほれ、奉仕してくれるんだろう?」 「はぁん、あんっ」  微妙に小刻みに揺らされ、快楽を与えて早くしろと煽られているのが分かる。私は項垂うなだれていたが、再びアクバール様の腹部に手を添え体勢を整える。馬の上でもないのに、足を大きく広げて跨り、雄芯を咥え込んでいる姿はなんて厭らしいのだろう。  それでも今はやるしかない。私達それぞれの未来の為に、呪いを解かなければならない。目的を思い出した私は気合いを入れ直して、ゆっくりゆっくりと腰を上下に連動させる。ズンズンッと質量の圧力に一瞬グッと息が詰まるが、すぐに鼻にかかった甘い声が出た。 「あんっ、やぁんっ……」  繋がって間もないのに、既にグチュヌチュとお互いの濃厚な蜜が混ざり合う音が響く。それはなんて羞恥心を刺激するのだろうか。そして突く度に潤骨油が増していき、さらに淫猥な音を響かせていた。  始めは慣れないせいか単調な動きであったけれど、その内にどんどん快楽を得たいという欲に芽生え、縦横無尽に腰を揺らし、無我夢中で踊り続けた。本当に気持ちいい。こんな淫らな事を自分からやっているのかと思うと、妙な興奮を覚える。 「やぁっ、はぁあんつ、あんあん」 「はぁはぁ……」  ふと、アクバール様の表情を覗いてみれば、彼もまた今までに見せた事のない艶めく姿となっていて、甘い吐息から愉悦に浸っているのが伝わる。それにキュゥと自分の胸の内と秘所が熱くなるのを感じる。 「くっ、レネット……締め付けるな」 「こ、故意……では……ありま……せんっ」  無意識の内にアクバール様の雄芯を締め付けてしまったらしい。でも彼だってどんどん雄芯を膨張させ、今は灼熱の塊となって苦しいぐらいの重圧感を突き上げてきていた。 「えっ、ひゃぁあんっ!」  私の返しが口答えだと思って癪に障ったのか、彼は下から私の双丘をたぐり寄せ、意のまま翻弄させる。一層甲高い嬌声を上げた私は理性が飛んで快楽に身を委ねる。結合部に目を向ければ、信じられないぐらいの蜜が滴っていた。  もう何がなんだか分らない。思考さえ奪われるような快感が躯中へと駆け巡り、頭と心臓が破裂寸前となる。このままでは壊れてしまう。もう達してしまいたいと最後の欲望が生まれる。  それがアクバール様にも伝わったのか、それとも彼も同じ気持ちだったのか、分からないけれど、突然にパンパンと激しく穿ち始められる。それによってバランスを崩した私からアクバール様の手が離れる。代わりに穿ちに合わせて躯は大きくしなり、双丘が乱舞していた。 「はあぁんっ、あぁんっ、もう……」  ブワッと何かが頭の芯まで奔流してきた。もう達する。そう気が付いた時、グッと膣内いっぱいに欲の塊が圧され、その直後、熱い精の飛沫が吐き出された。 「くっ」 「ふっぁああんっ!」  堪えられず弾けた声と共に、私はへたり込むようにしてアクバール様へと躯を預けた。 「「はぁはぁはぁはぁ……」」  お互いが酸欠状態となって、生を求めるように酸素を貪る。脱力感が半端なかった。目眩がしたように頭の中がクラクラとする。だけど、繋がったままの状態が幸福感に満たされていた。  同時に離れ難い気持ちになっていて、本来の目的を考えれば、今日のこれが最後である事を思い出す。それが妙に侘しさを感じるのは何故だろう。私は今のアクバール様から離れたいんじゃなかったっけ?そうだ、彼の為にも自分の為にも、このまま一緒にいては駄目なんだ。  ――きちんと伝えなければ……。 「アクバール様」 「なんだ?」 「黙っておりましたが、これで呪いは完全に解かれました」 「は?」  彼はギュッと抱き締められていた躯を離す。両手を寝台につき、覆い被さる体勢で私を見下しているその表情は呆気に取られている様子だった。  ――何故そのようなお顔を?  ここは喜びに顔を綻ばせるところじゃない? ……でもし終えた後に唐突に伝えたものだから、信憑性がないのかもしれない。 「実は今日、デリュージュ神殿で例の魔法使いに会いました」  私は一から説明をしようと思った。 「例の魔法使い?」  アクバール様は眉根を寄せ、顔を顰める。 「あー、見事な金髪で女みたいな顔をした男か?」 「そ、そうです」 「ふーん。まぁ、ソイツはオレの従者だけどな」 「はい?」  ソイツって……? この話の流れからしたら、魔法使いの事? いやいや、それオカシイよね? だって、呪いをかけた魔法使いが従者だなんて! 「あの赤い瞳をしていましたが、まさか魔法使いが従者とは言いませんよね?」 「いんや、アイツは魔導師だ。だから瞳の色を変えるぐらいわけない」  ますます訳が分からないんですけど? 彼は何を言っているの? 「瞳の色を変える? なんの為にですか?」 「呪いをかけた魔法使いのフリをする為だ」 「はい……?」  フリってなに? 私が目をパチパチとさせ理解しようと試みる。えっと……今日会ったあの男性は魔導師でアクバール様の従者? 赤い瞳は人為的に魔法で変えていた? え? え? あの男性は例の魔法使いではな……い? 思考が理解に苦しむ、いや拒んでいる? 「そんな瞳の色も変化へんげしない魔法使いが容易く現れるわけないだろう?」  アクバール様から鼻で笑われる。なにそれは……? えっと、そしたらだよ? 繋がらなかった事柄がやっと紡ぐ。……刹那、私はサッと血の気が引いていく! 「また私を騙したんですか!?」  信じられない! さっきまでの私にさせていた事はアクバール様のからかいだったというの!? とんでもないエロメンだ! 本当に最低! 有り得ない!! 私は激情に駆られ、涙を流し訴える。 「またとはなんだ? それに酷いのはどっちだ? 散々オレを愛していると言っておいて、離れようとしていたではないか?」 「そ、それはお声が出るようになられて、思っていたアクバール様と違うので、騙されていたと思ったんです!」 「オレは初めから騙してはいないと言っているだろう? オマエが勝手に思い描いていたんだろう?」 「……っ」  酷い。思い描かせていたのはアクバール様なのに、非があるのは私だけみたいな言い方をして! 「だからといって、従者に魔法使いのフリをさせて、私にあんな卑猥な事をさせるなんて最低です! もう見損ないました! 本当に大っ嫌いです! 離縁してもらいますから!」  悔し紛れに私は嫌悪感と決別の意思をぶつける! それなのにアクバール様は呆れたと言わんばかりの溜め息を吐く。なにその態度は! 腹立たしい! 「離縁などしないと何度言ったら分かる? オレを愛していないのであれば、とっくにオレの声は失っている」 「うっ」  言われている事は最もだった。確かに彼に対して愛情が冷めているのであれば、呪いが舞い戻っている筈だった。でも私は認めたくなかった。こんな簡単に人を騙すような酷い人とこれからやっていくだなんて……。 「互いに愛し合っているのだから、離縁する必要はないだろう?」  アクバール様は決然と言い放った。なんて傲慢なの。「必要があります!」と言葉を返そうとした。そしたら……。 「思ったよりもいい根性をしているな、レネット」 「え?」 「漠然とした情報でも、諦めずに魔法使いを探そうとしていた根性だ。普通ならとっくに諦めているだろう。ましてオマエは箱入り娘で難なく暮らしてきた身だしな」  な、なに急に褒めて! 思いがけない言葉を言われて、私ははにかんでしまう。 「それと、そう焦って魔法使いを探す必要はない。アイツは必ずオレの前に現れる。なんせオレの声が元に戻ってしまっているからな」 「え?」  ――どういう意味?  戻って来るって? 魔法使いが誰か分かっているような言い方だよね? え? え? 本当にどういう意味? 私はポカンとして口を開けたまま、アクバール様を見つめる。そんな私を見て可笑しいのか破顔した彼は寝台から離れ、寝衣に手を掛ける。 「それだけの根性があれば、王太子妃としてやっていけるだろう」 「はい? どちら様が王太子妃様なのですか?」  次から次へと訳の分からない言葉を落とされて、私はどうしたらいいの? 「オマエの事だ、レネット」 「……はい?」  なんのご冗談で? 私は間髪入れずに瞬きを繰り返す。その間にもアクバール様は軽やかな動きで着衣する。そして着終えた後、クスリと嫌な笑みを浮かべる。 「オレはシュヴァインフルト国、王位継承者のアクバール・ダファディルだ。宮殿で暮らしていた頃は王太子と呼ばれていた」 「え? …え?」 「さてが明ければ、従者達が迎えに来る。これでここの生活ともオサラバだ。宮殿に帰ったら王太子帰国の前夜祭を始めるか。翌日には結婚祝いの披露も挙げてもいいな。のちに待たせていた式も挙げよう」 「え? え? ……あの? お話が見えて……ない……のです……が?」 「次期に例の魔法使いが現れる。まぁ次に目にした時、息の根を止めてやるけどな。それまでに祭りごとは終わらせておいた方がいいだろう。色々と忙しくなるぞ、レネット王太子妃殿……」  最っ高に美しく嫌な笑みがアクバール様から波紋のように広がる。えっと……今、彼はなんと言っていた? 王太子? ……え、え、えぇえええ!? いきなり上質な言葉を叩きつけられたって、はいそうですか♪なんて納得がいきますか!  こんな事があって……? そ、それに、わ、私には王太子妃なんて荷が重すぎる! 無理無理無理です! そう泣き叫んだところでも現実はそう甘くはなかった……。が明けたら、アクバール様の言う通り、宮殿からの華やかなお迎えが来て……。  その後は面白いぐらいにトントン拍子に事が進んで行った。色々と言いたい事はある。だけど、今はこれだけ言わせて欲しい……。「お願いですから、離縁して下さい!」もう本当に無理ですから!





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