お願いですから、離縁して下さい!―アクバール(ヒーロー視点)―




レネットの年齢17歳⇒34歳(見た目は17)

レネットの年齢が12歳~16歳の時(見た目は6~8)

アクバールの年齢⇒54歳(見た目は27)



「誰だ、オマエは?」

 オレは瞳を鋭く光らせ、相手を見澄ます。空気さえも強張るような剣呑な雰囲気を散らしている目の前の相手が尋常でないのは外貌からして分かる。

 ここは大国シュヴァインフルトのデリュージュ神殿の内部であり、この主祭壇を目の前にし、顔を覆うように身を纏う愚か者を一度だって目にした事はない。

顔は素肌を見せなければならない。それがこの国が崇高する神官かみフュリボンに対しての敬意である。それに反するこの愚弄者は…。オレは無遠慮に相手を物色する。長身で深紫の上質な素材のローブを着用している。おおかた魔導師といったところか。

 しかし、師の称号をもつ者が礼儀を知らぬなど、一体どういうつもりなのか。いや、そもそも何故、今ここにいられる?オレは瞬かず、相手を射るような鋭い視線を送りつける。

 睥睨へいげいしたその様子は変化をもたらせた。相手は頭上まで覆っていた布を剥ぎ、同時に黒曜石のような漆黒の長い髪が宙を舞った。一瞬、オレは瞠目としたが、すぐに顔の片側を歪めた。

 相手の顔の一部が酷く爛れていたからだ。パッと目にした時、思わず目を見張る程の痕だ。だから相手は顔が見えぬよう覆っていたのか。いやそれよりも、もっと目を引くのが…。

―――深紅の双眸…。

 厄介だ。魔導師かと思っていたが、この瞳の色は魔法使いだ。だが、ありのままの色を見せているのは故意か、それとも単純に愚かなのか。魔法使いであるならば、皮膚の爛れも難なく綺麗な肌に戻せるだろうに、コイツは一体…。

 この世界の魔女と魔法使いは海底に棲んでいる。そして魔物がむやみに地上へと徘徊するようになった近年、人間の魔力が強化し、その影響によって魔女や魔法使いは表へ出現しなくなってきていた。

 そんな世にも関わらず、変化へんげ一つもせず、この神殿へ堂々と現れるこの魔法使いは…。よりによって今日だ。数時間後、この神殿では王位継承の戴冠式が行われる。既に内部は式の装飾に彩られていた。よって今ここは王位を継承するオレ以外の者は立ち入り禁止となっている。

 目の前のコイツが現れるまで、オレは戴冠式の前の祈りを捧げていた。その神聖なる場にコイツは足を踏み入れて来たわけだ。内部へと入る各扉には衛兵士が立っていた筈だ。その者達が何も騒がず、容易くコイツを入れる訳がない。

「何をしに来た?」

 オレは率直に用件を問う。胸の内には波紋が広がっていたが、それを表には出さず、平静を装っていた。

 …………………………。

 相手は何も答えない。その代わり、ゾッとする冷笑的な薄笑いを浮かべていた。

―――コイツは何かをしでかす。

 ある種の予感に身の危険を感じ、額から汗が滲み出た。そんなオレの様子を感じ取った相手は見据えるよう微笑んだままでいる。不気味極まりない。

 …………………………。

 数秒、牽制し合うように視線をぶつける。相手の紅の瞳が毒々しい血色にも見えていた。それも束の間、魔法使いは軽やかに身を翻し、オレに背を向けた。

「?」

 オレは眉根を寄せ、相手を注視していると、ヤツは氷のような嘲笑を浮かべた横顔だけを覗かせる。その不敵な笑みが何を意味するのか。

「これは助言です。呪術を解く方法は“愛する女性と相思相愛で身も心も結ばれなければなりません”」

―――呪い?なんの話だ?

 魔法使いは男とも女とも言い難い中性的な声で、訳の分からん内容を諭し、尚も言葉を紡ぐ。

「ただし、その想いは未来永劫でなければ意味がありません。片方でも想いが崩れるのであれば、再び呪いが降りかかる事でしょう。では貴方様に光のある未来を心よりお祈り致しております」

―――は?

「だからなんの話を…」そう言葉を投げようとした。そこでオレは気付いた…。「声」が出ないという事に。

―――声を失っている…?まさか、呪いと言うのは…!

 一瞬で頭の中が真っ白となる。そのほんの瞬きに魔法使いは忽然と姿を消し、そして神殿内部には胸騒ぎめいた黒い影に覆われるオレの姿と静謐せいひつな空気が戻っていた…。

✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻

「アクバール様ぁ~!窓の外をご覧になって下さいよ!早く早く~!」

 朗らかな陽射しが部屋の隅々へ広がり、眩く思わず目をすがめた時だった。

―――そんなすぐに見れねーよ。

 オレはソファに腰かけたまま、相手に恨めし気な視線を送りつける。そんなオレの様子に気付いていてもシカトだろうな、コイツは…。新緑が華やかに森を彩る季節だった。何気ない日常に一つの新たな風が舞い込んできた。

「女のコなんですよ!可愛い可愛い、金髪の天使!こんな森深くにあんな可愛い女のコが来るなんて、これは運命のコですよー、きっと!」

 やかましい。言っているオマエも見事な金髪で女みてーな顔をしているけどな。目を輝かせ、無駄に息を弾ませている従者、魔導師のクレーブスとは逆に、オレは冷静な気持ちで窓の外を覗いてみた。

 …………………………。

 益々オレは表情が冷める。というか、呆れたという方が正しいだろうか。

―――言葉の通り、本当に女のコだ。

 目に映った少女は幼女だった。年は12歳~16歳といったところだろうか。

「えぇえぇ、ですから女のコなんですってば。かっわいいですよねー?もみくちゃにしたい❤」

 変態的に聞こえる。コイツが言うと、性的な意味で聞こえるから危険だ。実際、頬を紅潮とさせ、頭の中で何を想像しているのか分かったものではない。

―――あのコの何処が運命のコなんだ?

 もう一度、オレは窓の外へ目をやる。

「え?どうせなら可愛いコの方がいいですよね?」

―――オレはオマエみたいに幼女の趣味はない。

「気長に待てばいいじゃないですか?」

―――何年待てばいいんだ?オレはこんな檻の中で、何十年といるつもりはない。
 
「と言われましても、こんな森奥深くに早々、女性は現れませんよ?」

―――んな事は分かっている。

 オレは舌打ちをし、嫌気を刺した表情をクレーブスに叩きつけ、元いたソファばしょへと戻った。さらに深い溜め息を吐く。オレは厄介な「呪術」にかけられている。それによって「声」を失っているのだ。

 事の始まりはシュヴァインフルト国で行われる王位継承の戴冠式の日であった。王太子のオレは式の前に行うデリュージュ神殿の大祭壇の前で祝詞しゅくしを捧げていた。この時の内部は清めの意味で、王太子のみしか許されていない。

 そんな聖なる場に、只ならぬ人物が現れた。血の色の双眸をもつ「魔法使い」だった。深紫色の上質なローブを身に纏い、顔の一部が深く爛れた、見てくれからして不気味なヤツだった。

 目にした瞬間から剣呑さを感じ取ってはいたが、案の定、ヤツは狂気を孕んだ事をしでかした。呪いと称し、それはオレの声を奪った。それを解くには「愛する女性と相思相愛で身も心も結ばれなければならない」しかも「想いは未来永劫でなければ意味がない。もし片方でも想いが崩れるのであれば、再び呪いが降りかかる」という。

 馬鹿げている。愛する女と身も心も結ばれる、まるでおとぎ話のようなロマンチックに聞こえるが、実際はそんな甘いものではない。声を失う事によって、様々な内容に支障をきたした。まずは政務が円滑に行いない事だった。これは王政社会としてとんだ致命的であった。

 それでも始めの頃は魔導士らと魔力を使い以心伝心をし、他者と会話をしていたが、それもある程度の時間のロスが生じる。政務は一刻を争う場合が多く、いかに捌いていくのかが重要であった。オレが虐げられる存在になるのも時間の問題だった。

 結局、オレは使い物にならないと判断され、宮殿から遥か遠くにあるこの森へと追い出された。こんな所に追いやられたのも、周りからの厳しい目から悲愴感を背負う生活を少しでも緩和させようとの気遣いからだった。

 そんなオレの事を想っているようなに思えるが、実際はてんで違う。何故なら今回の呪術は予め仕組まれた目論見だったからだ。「黒幕」が誰か検討はついている。ソイツはあろう事に、とんでもない魔法使いと手を組み、今回の出来事を起こした。

 今の時代、魔法使いは地上には姿を現さない疎遠な存在の筈だ。それが人間に手を貸すなど、黒幕はよほどの対価を与え要望したのだろう。そんな事が出来るヤツなど限られている。オレはソイツを絶対に許さない。いつか必ず法の前で裁いてやる…。

✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻

 とんでもなく長かった。それもそうだ。呪術をかけられた時が成人したばかりの34、あれから20年の歳月が経ち、今オレは54を迎えた。そして相変わらず、この森の中での生活を送っていた。

 ただこの年には大きな転機があった。それはレネット・シュベーフェル、オレより20歳としの若い女性を妻として娶った。時折、この豪邸やしきの前に現れるあの金髪の少女だ。

 彼女の成人を機に、次に彼女がやって来た際、わざと正門を開き、豪邸やしきの中へと来るように招いた。それまではここは結界を張り、外からは中の人間の姿が見えないようにしていた。

 この日は偶然を装い、初めて彼女と顔を見合わせた。(というかクレーブスに無理に後押しされたと言う方が正しいが)彼女を受け入れるかどうかはここから始まった…。

 実は彼女を迎える前の20年間、幾人もの女と接してきたが、どれも好ましくなかった。財産と地位が目的の女ばかりでうんざりであった。その状態が何十年も続いたのもあり、オレの中で変化が起きた。あの金髪の少女を視野に入れるようになったのだ。

 クレーブスの情報から、少女は貴族の侯爵令嬢であった。幼い頃から躯が弱いらしく、それでこんな田舎に越してきたそうだ。最初、目にした時はあまりに幼すぎて恋愛対象として見られなかったが、月日が経つにつれ、美しい娘へと成長していき、いつしか意識するようになった……というのは綺麗ごとだ。

 実際はクレーブスから「金髪のコいいじゃないですか~!」と、執拗に勧められていた。アイツは時折、レネットの様子を見に行っていた(今思えばただのストーカーだ)。彼女は都会生活が短いせいか、あちらならではの穢れを全くもっておらず、純真無垢で、それでいてしっかりと自分の色をもった芯の強い娘であると聞いていた。

 初めはほぼ興味本位から彼女と接っしていたが、気が付けば彼女の色に染まっている自分がいた。レネットはこんな田舎で育っているが、英才教育を受けているのもあり、教養や人を思いやる心をもち、なにより息を呑む程の美しさまで持ち合わせていた。

 そして純粋にオレに思慕を抱いてくれていた。この20年間、ろくに男と接してきていない為、彼女はとても初々しかった。都会の王族や貴族の娘は社交を学ぶ為、ある程度は男との交流をもつ。ウブなように見えても、実は作られたフリである事が多いが、レネットの場合は天然そのものであった…。

 そしてオレ達は出会って数ヵ月で相思相愛となり、トントン拍子に婚姻まで至れ、初夜の日を迎えた。20年もの呪いがようやく解かれる日が来た。こんな喜びに浸れる日を愛する女性と迎える、この上ない幸福だった。ただ…。

「お声が出るようになってから、今までのアクバール様と随分と雰囲気が異なる気がして…」

 そう控えめで、か細い声で言うレネットの表情は明らかに不満と訝しげさが現れていた。「案の定」という反応にオレは思わず笑みを零した。それが返って彼女には不満を煽らせたが。先程までの甘美な時間の雰囲気がぶち壊してしまったな。

 元々、オレは柔和な作りの顔立ちをしている。黙っていれば穏和で優し気な印象を与えるようだが、口を開けばその印象は崩れるようだ。のちに国を司る王太子が外面通りの中身であれば、必ず潰される。国政はそんな甘いものではない。

 そんな事を知らないレネットからしてみれば、胸を打ち突かれる思いをしたのだろう。だが、オレは初めから彼女に好意をもってもらう為に、騙していたわけではない。

「今の貴方は私が愛したアクバール様ではありませんっ」

 しまいに彼女は珍しく感情的になっていた。しかもだ。

「呪いを解く為に私を騙していたのですか!私から愛をもらう為に、完璧な旦那様を演じて!愛して下さっていた事も全部嘘だったのですか!」

 とんでもない疑いをぶつけてきた。そこを疑われるのは心外だ、今回の呪術は相思相愛でなければ、解かれないからだ。オレは心の底から彼女を愛している。それが間違いない事をオレは彼女の全身を愛撫して証明する。

 そもそも幾分かの事で、オレへの愛情が冷めぬよう、レネットを存分にオレ色に色づけている。今更容易に離れる事など出来ないだろう。それに彼女の父親アガット侯爵は娘が傷物になったと世間の目を気にして、離縁を許さない。完全な策士だな、オレは。

 なんだかんだ文句を言いつつも、レネットの躯はオレを受け入れている。彼女は間違いなく、オレへの想いは温かいままだ。でなければ、再び呪いが降りかかっている。レネットは呪いを解く相手として選んだだけのある想いや絆の強い女子おなごだ。

 そして…。

「その魔法使いを探しに行きましょう!」

 レネットから理解し難い言葉が飛んできた。純真な彼女らしい発言ではあるが…。

「いやに乗り気だな?」

 オレはとんだ無茶振りだと呆れる。呪いをかけた魔法使いか…。黒幕を辿れば、ヤツは近くにいるのだろうが。それには色々と下準備が必要だ。声も戻った事だしな。…そうだ、であれば、わざわざこちらから赴く必要もないだろうな。

「この先も呪いに縛られるのは嫌ですよね?私も気が気ではございません!そもそも何も悪い事をしていないのに、呪いをかけられる事自体おかしいではないですか!きっときちんと話し合えば、魔法使いも分かってくれる筈です!ですので探しに行きましょう!」
「…そうだな。探しに行ってもいいかもな」

 やたら乗り気なレネットに水を刺すのも悪い。それに彼女にも外の世界を知る最初の一歩にもなる。

「今度ソイツに会ったら、ぶっ殺そうと思っていたところだ」

 このまま乗ったフリをして、王宮生活に戻る準備をして行くか。…とまぁ、少しはレネットの機嫌が回復したところで、また愛を深めておくか。

「きゃっ」

 彼女から短い悲鳴が上がる。オレが素早く彼女の背を寝台へと倒し、覆い被さったからだ。

「な、何をするのですか!」
「何をって決まっているだろ?」

 オドオドと顔に恥じらいを霞めているレネットも、これからオレがやろうとしている事を分かっているようだ。

「わ、私はそんな気では…」

 彼女はオレから思いっきし視線を背け、減らず口を叩く。ならばとオレは、

「ひゃぁっ」

 彼女の蜜で濡れそぼつ秘境に手を伸ばし、身を潜める花芽を弾く。ほんの打ち振りであったが、彼女のさっきまでのブスッとした表情が崩れ始めた。

「あんっ、あんっ」

 花芯を何度も何度も弾いていけば、彼女がるみると陶然と酔いしれていく様子が分かる。まるで繭に包まれたようなウットリとした恍惚な表情だ。

「あんっ、あんっ、あんっ」

 弾くと同時に上がる嬌声がなんともそそる。おまけに今、彼女は裸身を晒している。愛する女の扇情的な姿を目にして、気持ちは昂り、行為に深く傾倒していく。

「どうした、レネット?その気ではないと言っていた筈だが?」
「んっ…」

 ついでにオレはわざと意地悪な問いかけを投げると、彼女は悔しいのか羞恥心からなのか、食いしばって双眼を潤ませていた。それにオレは口元を綻ばせる。本当にレネットはからかい甲斐があるな。

「本当はオマエもその気だったんじゃないのか?」
「ちっ…違い…ます」
「そうなのか?見せてやりたいな、今のオマエの姿。股を大きく晒し出して、快楽を貪っている姿は淫乱そのものにしか見えないな」
「やぁっ、ちがっ…んあぁっ」

 レネットがオレの言葉を否定しようと口を開こうとした瞬間、オレは花芽をぐにっと捻じ込むように押し潰した。多感な花芽は本来細心な注意を払うところだが、豊潤な蜜が溢れているおかげで、多少の強い刺激も今の彼女には快美感となるようだ。

「あんあんっ、それ…だめっ!」

 駄目と言われて、誰がやめるかと本能の赴くまま、湿潤としたその場所を執拗に責め続ける。さらに花芽の包皮を剥ぎ、素を露わにした秘玉にぬめった蜜をネットリと纏わせてやると、レネットから一層甲高い声が上がる。

「んあっ!ゃ…ぁあん」

 躯を跳ね上がらせ、目を頑に瞑り、快楽へと昇り詰めているようだった。そんな反応を見せられてしまえば、もっともっと快楽へと溺れさせてやりたいと欲が湧き起こる。

 だが、敢えてオレは秘玉の責めを抑えた。代わりに秘裂を割り、中指を沈ませる。ヂュブッと摩擦する水音と共に、指は難なく吸い込まれていった。

「あぁ…っん!」

 新たな強い刺激を受けたレネットから甘美な声が洩れる。一度はこの秘境を開拓したが、まだまだ狭隘の地に指一本でゆっくり左右へと振り、解していく。クチュクチュと官能的な水音と、レネットの息を詰めながらの甘い喘ぎ声が零れる。

 内奥は生温かく絡み付く蜜の感触がたまらない。まるで甘えてよがってきているようにすら思える。レネットがいくら口ではその気がないといえど、躯は正直だ。いや、快楽に支配されたという方が正しいだろうか。今の彼女は完全に恍惚に身を任せている。

「気持ちいいか?」

 緩慢な動きのまま、オレは陶酔しているレネットに問いかける。

「あんあんっ」

 問わなくても、この蕩け切っている表情と声を見て聞いていれば、分かる事だが、敢えて彼女の口から言わせたい。本能のエゴだ。そして彼女は胸元で両手拳を握り、必死になって快楽の波に堪えている。呼吸をするのもやっとな彼女に返事をする余裕はなさそうだ。

「気持ち良くないのか?」

 さらに責めてやりたいと己の欲望のまま、次の行動へと出る。

「だったらこれならどうだ?」

 今度はヂュブヂュブと粘稠ねんちゅうの音と共に抽迭を始める。

「ふぁ…ああんっ!」

 レネットの躯が大きく仰け反る。背が寝台に戻ると、グッと息を詰めて質量に堪えていた。

「まだ気持ち良くないか?」
「やぁ…っぁん」

 質問に答えるのが恥ずかしいようだな。半目で訴えるエロイ姿が堪らなく劣情を掻き立てる。出来心でオレは指をもう一本増やし、抽迭の速度を上げる。

「んぁああんっ!」

 重圧が二倍になり、レネットはより一層甲高い嬌声を上げた。

「やぁんっ、はぁんっ、だめっ」

 呼吸を乱調させ、寝台のシーツに助けを求めるように掴み上げ、快楽に堪え続ける。ここまで来てまだ素直に吐露しない。けっこうな強情だ。いやただ単に余裕がないだけか。それでも尚、彼女の口から気持ちいいと言わせたい欲望は消えない。

「まだ駄目か。なら…」

 さらにオレは指を増やし、三本で指を突き、引いては蜜口から最奥まで一気に攻め込む。

「んっあぁ―――!」

 意想外な指の蠢きにレネットは断末魔の如く、声を張り裂ける。それは狂気したような叫び声だった。中で指を振盪しんとう/rt>し続け、または第二関節まで沈ませ手前へと指を曲げれば、新たな快美な地へ入り込み、容赦なく責める。

 今のレネットの頭の中は混沌カオスとしている。満身が快楽の渦に呑み込まれ、そろそろ完全に昇り詰めるだろう。オレは一気にいく。

「んぁあんっ、き、気持ち…いいっ!もう…こ、壊れちゃうっ!」

 やっと欲しかった言葉がレネットから発せられる。同時に指がギュッと食い千切られるかと思うほどに締め付けられ、咄嗟にオレは指を素早く引き抜いた。

「ふっ…あぁああんっ!」

 指と共に膣内から熱い飛沫が放散した。レネットはガクンガクンッと躯を波打たせ、大きく達しを迎えた。

「はぁ、はぁ、はぁ…い、今のは…?」

 彼女の声は震えていた。それにひどく顔が朱色にしている。「今のは」って…?あぁ、そうか。

「今の飛沫はオマエが思っているものとは違うから、安心しろ」

 どうやらレネットは失禁してしまったと羞恥心を抱いているようだ。あれはオレが刺激を与え過ぎて、白色を噴かせただけだ。まぁ彼女からしたら、初目にかかるものであり、想像を絶するものだったのだろう。

「そ、そうなんですか?」

 彼女はおずおずと小動物が震えるような様子をさせながら、再度確認をする。

「あぁ、そうだ。ある場所を刺激し続けると、吐液される。別に珍妙な事ではない」
「よ、良かったです。はしたない事をしてしまったのではないかと心配していました」
「気にするな」

 オレはレネットの前まで躯を覆い、彼女の頭を優しく撫でる。すると、彼女は花が開いたようにパッと微笑む。その初々しい笑顔に、なんとも言えない萌えを感じて、彼女の唇を塞ぐ。

「んっ、んんっ…」

 舌を絡み取り、互いの熱を感じ合い、蕩かされそうで甘美な夢心地に陥る。時折、レネットから洩れる蜜のように甘い声が熱を上気させる。暫くの間、痺れるような陶酔感に没頭していた。

 …………………………。

 息遣いさえするのを忘れ、時を思い出した頃、ようやく彼女の唇から離れた。スッカリと熱に浮かされたレネットが上目使いをしてオレを見上げる。それだけで、こちらの躯が芯から疼く。今すぐにでも暴走しそうなんだが…。

「あ、あの…」

 レネットがモジモジと何か言いにくそうな表情をして、俯いている。

―――?

 何が言いたいのが分からなかったのだが、彼女の視線がオレのある部位に一心しているのを目にして、オレもやっと気付いた。自分でも驚くぐらいに雄芯が隆起していた。レネットの赤子のような艶のある真っ白な肌に、接触していたものだから、彼女は気になっていたようだ。

―――ヤバイ。自分で目にしてもう無理だな。

 抑えに限界を感じたオレは俊敏な行動をとる。レネットの両膝を立て大きく広げ、雄芯を彼女の蜜口に宛がう。その機敏なオレの行動に彼女は目を丸くして様子を見つめる。

「また挿れるのですか!」
「嫌か?」
「…分かりません」

 彼女は視線を横へと逸らす。素直じゃないな。だが、こちらも雄芯が張り裂けそうで、早く満たしたいと心までが爆発しそうなのだ。仮にやめてと言われたとしても、聞き入れようなんて思わないけどな。

「じゃぁ、躯に答えて貰うか」
「え?…ふっ…ぁああん!」

―――悪いな、レネット。

✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻

 レネットを連れ、シュヴァインフルト国の宮殿へと帰国してから、10日ほどが経った。目まぐるしい程の生活で、この数日が2~3日程度にしか思えなかった。戻って来た当日、王太子帰国の前夜祭を行い、翌日には正式な帰国祝いに加え、王太子妃となったレネットとの結婚の祝賀披露宴もおこなった。

 このままトントン拍子に結婚式までもっていきたかったのだが、そこまでの猶予は与えられなかった。なんせ、アイツ…黒幕がいつまでも黙ってはいなかったからだ。オレの行動が目についたのか、ちょくちょくと阻んできていた。おかげで、この数日は政務の仕事に追われっぱなしだ。

 まぁ、そんな疲れも夜に寝室へと戻り、レネットの姿を目にして接していれば、自然と癒されていた。アイツは本当に可愛い。見てくれだけではなく、中身まで可憐さが伴っている。まだあどけなさが残るところも、男心をくすぐる。にしてもだ…。

―――今、思い出しても笑えるな。

 オレは風呂バスに入っているレネットより先に寝台へ入り、一人思い出し笑いを噴き出していた。笑いの原因はレネットが物の見事にオレの思惑に嵌ってくれた事だ。オレを愛しているのに、離れようとする事に苛立ちを覚え、思わず制裁を与えたくなった。

 当初、魔法使い探しはレネットはすぐに諦めると思っていた。情報も漠然としか与えておらず、どう考えても探し出す事は不可能であった。しかし、それでも彼女は粘り強く探していた。

 そのおかげもあって、オレもクレーブス率いる従者達へ帰国の首尾を整わせる事が出来たのだが、それにしても、こうまで魔法使い探しを根気強く続けられると、そんなにオレから離れたいのかと危惧を感じるようになった。

 まぁ、実際レネットは文句を言いながらも、毎夜オレに抱かれていたし、呪いが舞い戻ってこないところをみると、彼女の心が離れているわけではなかったのだが。…とはいえ、心は穏やかではいられず、思わずクレーブスを使って「おいた」を考えてみた。

 それはヤツに魔法使いのフリをしてもらい、似非えせの呪いを解く方法を教示させる。それも性的な方法でだ。オレ的には軽い内容にするつもりだった。レネットは先日に処女を失ったばかりで初々しい。ところが、クレーブスは目を輝かせ、オレが考えていた以上の事をさせようとしていた。コイツは本当にたちが悪い。

「……という内容でいかがでしょうか?」
「おい、レネットは初心者だ。いきなりそんなハードな事が出来るわけないだろ?」
「え?今の内容ハードでした?」
「普段、オマエは女に何をさせているんだ!」

 本人はたちの悪さを把握していない為、余計にヤバイ。コイツはこんなんで、あのオーベルジーヌ国のエヴリィ・アジュールに続く腕の魔導師というのだから唖然とする。

 とまぁ、なんだかんだ言いつつも、オレも男だ。正直、期待していないわけではなかった。が、初級編の内容で収めておいた。そして魔法使い探しのちょうど一週間となる日に、似非魔法使いを決行した。

 素直なレネットはまんまと受け入れて、クレーブスの言う通りの奉仕をオレに行った。消えて無くなってしまいたさそうに、顔に羞恥の熱で上気させ、拙い手つきで懸命に事を成そうとしてくれた。初心者にしては上出来だったな。

 普段は控えめな彼女の淫靡な姿はこちらもかなりそそられた。それもオレだけしか知らない極秘だ。高揚せずにはいられなかった。そして事を終えたレネットから面白い事が発せられる。

「これで呪いは完全に解かれました」

と。そんなわけないだろうと、オレは吹き出しそうになった。本当に似非魔法使いクレーブスの言う事を信じていたんだなと、改めて彼女の純粋さに愛しさを感じた。

―――レネットのヤツ、偉い切れていたな。そりゃそうだが。

「何を笑っているんですか?」

 いつの間にか風呂バスから上がっていた彼女から問われる。一人笑いなんてしていたら、怪訝に思うだろうな。…それにしても、湯上りのレネットは普段のあどけなさが無くなり、ほんのりと色気が漂っている。その色気はこれから先も深まっていくんだろうな。

「思い出していた。オマエが呪いを解く方法を教えてもらったとオレに奉仕した時の事を」
「なっ!」

 オレは下手に隠さず、ストレートに告げる。すると、彼女はあの屈辱を思い出したのか、瞬く間に顔を朱に染めた。それにまたオレは笑みを零した。

「へ、変な事を思い出して笑わないで下さい!」

 レネットはオレから顔をあからさまに逸らし、髪を乾かし鏡台ドレッサーへと足を運んでしまった。よっぽど羞恥を感じたんだな。可愛いヤツだ。あの件についてはオレと彼女の心は相反しているようだ。

 あれがきっかけとなり、やっとオレの正体を明かせた。それまでは下手に明かす事を控えていたのだ。なんせ、オレは一国の王子だ。だが、彼女にはずっと公爵だと偽っていた。まぁ住んでいた豪邸やしきがそれ相応であった為、疑われる事はなかったけどな。

 婚姻を結んだ際も、都にある従者の豪邸(やしき)を借りて、ついでに両親のフリをしてもらい、互いの親と顔合わせもした。従者達は正体を明かさなくて良いのかと懸念していたが、オレは大して心配していなかった。

 レネットが決して心変わりや変に欲を持つ娘ではないと見極めていたからだ。それはクレーブスも異存がないと言っていた。アイツはちょっと(いやだいぶ)難癖はあるが、人を見る目は確かだ。

 身分を明かした翌日には従者達がオレ達を迎えに来る予定だった。勿論、宮殿へ帰国する為だ。長い月日だった。なんといっても丸20年だったからな…。

 そして戻ってからが本当の勝負だった。今は例の黒幕の出所を見計らっている。なんの知らせもなしで、突然とオレが帰国してもどって来たものだから、ヤツのとんだ慌てぶりは笑えたな。今も蒼白として、オレをどうするか目論んでいる事だろう。

 さてヤツがどう出るか。常に宮殿では魔導士達が魔女や魔法使いを感知している。容易に黒幕も魔法使いとはコンタクトは取れないだろう。だが、黒幕の事だ。再びあの魔法使いの元へ行くことだろう。今度こそ、魔法使いもろとも裁いてやる。

 …………………………。

 数十分後、髪を乾かし終えたレネットが寝台へと入ってきた。普段は年相応な容姿をしている彼女だが、湯上りの彼女はほのかな艶っぽさが出る。あと数年したら、可憐さから婉麗えんれいとした花の姿に変わるだろう。そう思うと、先が楽しみで仕方ない。

「まだ笑っているんですか?」

 レネットから不服の声が投げつけられる。どうやら彼女はまだオレが例の奉仕事を思い出して笑っているのだと思われたようだ。

「違う。オマエの姿を見て、この先いい女になるだろうと期待をしていたところだ」
「えっ」

 思わぬ返答だったのだろう。彼女は目を丸くしたが、すぐに頬を桜の花のように色づけた。前から思っていたが、オレからの褒め言葉には弱いようだ。

「そ、それは光栄です」

 そして恥ずかしさをそっと隠すように、掛けシーツを頭まで被った。だが、そのまま寝つかれては困る。オレ達の夜はこれからだからな。オレはさっとレネットの覆ったシーツを剥ぐ。

「な、何するんですか?」

 顔を露出された彼女は眉をきゅーっと顰めていた。

「毎夜思っているんだが、どうせ脱ぐのだから、寝衣を身に纏う必要ないだろう?」
「な、何言っているんですか!」
「それともオレに脱がされるのが好きなのか?」
「そ、そんな訳ないじゃないですか!」

 と、オレはいつものからかいを始め、何やかんやと言うレネットの夜着と肌付けランジェリーを取っ払ってやった。彼女から短い悲鳴が上がったが、聞かなかった事にしよう。

「ま、またこんな無理矢理!は、恥ずかしいじゃないですか!燭台の灯りも消していませんし!」

 レネットは上体を起こし、苦し紛れの文句を飛ばす。

「安心しろ。オレもすぐに裸体になる。これでオマエ一人が恥ずかしい思いをしなくなるからいいな」
「そ、そういう問題ではありませんっ。変な屁理屈をぶつけてこないで下さい!」

 えらく憤懣ふんまんをぶつけてくるな。レネットはそそくさ掛けシーツで白色ミルクの肌を覆ってしまった。

―――ったく、何を今更…。

 オレはプラチナ色の前髪を掻き上げ、溜め息を吐く。じとっと彼女から見上げられるが、オレはてんで気にも留めない。そろそろオレとの色事にも慣れてもらいたいものだ。まぁ初々しさがあるのも萌えるのだが。

 そして変に虚勢を張るレネットに、オレはほんの少し悪ふざけをしてやりたいという気持ちが沸く。そこでオレはとっとと寝衣を脱ぐ。…さてどう料理してやろうか。

「…レネット」
「な、なんですか?」

 オレは意味ありげな笑みに、彼女は思いっきし警戒心を張り巡らせている。

「呪いを解く方法をもう一度やってみてくれないか?」
「は…い?」

オレの言った意味を把握出来ていないようで、目をしばたたかせている。

「…あの?呪いは魔法使いにしか解けないのでは?」

 困惑しながらも正論を吐露させたが、オレはそんな答えが欲しかったわけではない。

「いや、もう一度クレーブスに言われてやってくれた事をして欲しいんだが」
「なっ!」

 ようやく気付いたようだな。そうだ、ストレートに言えば、また奉仕してくれと頼んでいる。

「あ、あれは全く呪いを解く方法と関係ないじゃないですか!」

 彼女はかぁっと顔面に恥じらいの色を広げる。そんな彼女を目にしても、オレは悠々と言葉を続ける。

「あれは当初考えていたものより、随分とソフトな内容なものだ。本来考えていた内容を試せば、今度こそ完全に呪いが解かれるかもしれないぞ」
「んっなわけないじゃないですか!そもそもあれはアクバール様とクレーブスさんが面白半分で考えた卑猥事ですよね!あんな事はもう二度とやりませんから!」
「なんだ?可能性をわざわざ潰してしまうのか?」
「何シレッとして言っているんですか!」

 レネットは頬を膨らませ、プイッとオレから顔を背ける。どうやら完全に立腹させてしまったようだな。オレもここで引き下がりはしないけどな。

「…レネット」

 オレはサッと片手を伸ばし、愛しいレネットの名を呼ぶ。胸の内からの愛を吐露するかのように、甘く囁く。熱の籠ったオレの声に、レネットがビクッと反応を示した。心なしか彼女の頬が紅潮としているのが分かる。

「な、なんですか?」

 そして上擦った声をして問う。声と様子からして、オレがこれからする事を理解しているようだ。

「こっちへ来い」
「え?」

 今度は彼女のエメラルドの瞳が大きな揺いだ。

「あ、えっと…私はもう寝てしまいました!」

 まごついて何を言い出すかと思えば、顔を燃えるように火照らせ、掛けシーツの中へと潜った。……ところをオレは素早く引きずり出す。

「ひゃっ」
「何を訳の分からん事をほざいている」
「や、やめて下さい。私はもう眠いのです!」
「まだやる事があるだろ?大事な時間を略すな」
「無理なものは無理なんです!」
「オレとの夜を何度過ごしている?いい加減に慣れろ」
「いーやーでーーすぅ」

 尚もレネットは抗う姿を見せる。今日はやたら刃向っているな。あー、そうか。さっきのオレの要求に動揺しているのか。さっきからオレが手を触れようとすると、サッと払い退けられていた。

 それに段々苛立ちを覚え、思わずガッと彼女の二の腕辺りを押さえ付ける。それに一驚した彼女は「ひゃっ」と、短く叫んだ後、反射的に逃れようとして体勢を崩してしまい、オレの脚の間に俯せになって倒れ、さらにオレの腹部にガツンと顔面を打った。一瞬の出来事で、彼女はまだ状況も把握出来ず、目を瞑っていた。

「大丈夫か?」
「あ、はい。…!?」

 返答したレネットは意識がハッキリしたようで、同時に仰天する。オレの腹部の下にある例の性器に気付いたようで、刺激物を間近にして目を見張ったようだった。まだ性器は大人しい姿だけどな。目のやり場に困った彼女がたじろいでいるのが分かる。そんな彼女にさらに追い打ちをかけてみる。

「なぁ、レネット。オレの雄芯これをオマエのその豊満な胸の間に挟んで、しごいて欲しいんだが
「は…い?」

 彼女は口をポカンと半開きにしていた。さっきからよく表情を変えて面白いな。

「もっと理想を言えば、先端を口で愛撫までしてくれたなら完璧だな」
「そ、そんなおかしな事出来ません!何考えているんですか!」
「元はさっきの内容で奉仕してもらう予定だった。あの時のオマエは経験値が少なかったからな。考慮して初級の内容にした」
「し、知りませんよ、そんなの!といいますか、勝手な個人のお考えではありませんか!そんなおかしな事を押し付けてこないで下さい!」
「おかしな事でないぞ。大人の世界では存在する事だ」
「え?」

 レネットはハッと息を引き切る。オレの味しか知らない彼女らしい反応だな。今の言葉にけっこうな衝撃が走ったんだろうな。ただここで予想外の事が起きた。レネットはすぐに恥ずかしがるかと思いきや、いやに顔に陰鬱の影を落としていた。

「何故ご存じなのですか?」

 ヤバイ…。珍しくオレとしては微妙に焦る。レネットはけっこう嫉妬深い。少しでも他の女の影を匂わせたものなら、すぐに反応して苦り切る。オレぐらいの年の女なら流せるだろうが、彼女はまだ若い。サラッと流してくれないところが、こちらの痛手とする。

「オレもクレーブスから聞いただけだ」

 苦し紛れだが、一先ずここはヤツの名を出してみた。

「そ、そうなんですか」

 レネットの目つきに安堵の色が蘇った。意外にも今の答えを信じてくれたようだった。そういった若さ故の純真さが有り難かったりする。

―――悪く思うなよ、クレーブス。

 これでヤツは変態…いやもう完全に変態だ。悪いとは思うが、そういうのも含め、フォローするのがアイツの役目だ。痛い所はすべてクレーブスに流し込んでおけばいい。さて、いい加減に本題に入ろうじゃないか。

「レネット。やってくれないか?」

 取り繕った甘い声と艶やかな表情をし、彼女の下唇を優しくなぞりながら誘う。

「な、なに誘惑しようとしているんですかぁ」

 すっかりオレの思惑はお見通しされているが、レネットからさっきまでの威勢のいい凄みは消えていた。これはもう少し押せば陥落してくれそうだな。

「あ、あのような事はもうしませんから!」

 羞恥を感じた彼女が躯を起こし、オレから離れようとした。

―――こうも強情であれば仕方ない。

 こちらも強制的な行動をとった。無理にレネットの動きを押さえ付け、彼女の豊満の双丘を掴む。

「やぁっ」

 彼女がまた離れようとする前に、オレは自分の雄芯を掴んだ胸の谷間に挟み込んだ。

「な、なにするんですか!こんな!」

 突然のオレの行動に彼女は大きく動揺をして両手でオレの上半身をボコボコと殴ってくるが、その時にはオレは既に彼女の胸を揉みしだいていた。

「嫌ですってばぁ!アクバール様の変態!鬼畜!エロメン!大っ嫌いです!」
「実際、これをする女性自身はあまり気持ちいいもんじゃないみたいだぞ。オレがこうやって扱いた方が気持ちいいだろう?」
「なに言って、やぁんっ」

 双丘の胸の頂きを摘んでやると、レネットから甘い嬌声が上がった。

「互いが気持ち良くなる、一石二鳥だな?」
「バカァ」
 既にここで彼女のいかりが性的快さに変わっているのが分かっていた、眼前で卑猥な様子を目にしているんだ。昂奮しないわけがない。それはオレも一緒だった。元々オレはこんな趣味があったわけではない。だが、相手がレネットになると、妙な性的な欲が生じてしまう。

 彼女の純真な可愛さを目にしてしまうと、理性が爆発し、彼女の躯を蹂躙したいと本能が湧き出てくる。それに多少の無理意地でも彼女からの愛情は変わらない。口ではブーブーとは言うが、共に快感へと昇り詰めてくれる。

「はぁ…ぁあん、やぁんっ」

 彼女は目を瞑り嫌だ嫌だと言いつつも、時折、うっすらと目を開けて様子を目にしていた。その表情は明らかに蕩け切っている。それが雄芯に熱を上げ、オレは躍動感をつけて、柔肌で弾力のある双丘を揉みしだいていく。

 落ち着いていた雄芯に硬さが伴い、形づいてきていた。そこからオレは行為を強め、双丘を手繰り寄せ、転がすように擦り合わせて、雄芯への刺激を上げる。ヤバイな。思っていた以上の快楽だ。

 雄芯から躯全体へと快楽感がさざ波のように奔流していく。留まる事を忘れてしまいそうだ。ふとレネットが行為をしているオレの両手に手を合わせる。無意識だろうが、恥ずかしさのあまり制止をかけたいのだろう。だが、オレは…。

「なんだ?自分で扱きたくなってきたのか?」
「んぁっ。ち、違い…ます」

 分かっていたけどな、わざと訊いてみた。オレが自分の考えと違っていたと思った彼女はサッと手を下げた。それにオレは遠慮なく、行為に浸透していく。きめ細やかで滑らかな双丘の感触を両手と雄芯で愉悦する。

 雄芯と胸の頂きはこれでもかというぐらい硬く屹立していた。彼女から洩れる甘い吐息が肌に当たり、心地好さが躯を小刻みに震わせる。互いが高揚感に達していた。たまらない快美感に時の流れすら忘れそうになる。

「はんっ、んあっ、あんっ」
「はぁはぁ…」

―――そろそろだな。

 躯が芯から痺れる感覚を覚え、達しが近い事に気付いたオレは惜しむ気持ちと共に、レネットの躯を離す。

「…っ」

 グッと息を詰める。猛々しくそびえ、脈打つ雄芯の先端から、ドクドクと白濁した液が勢い良く吐精された。溜まっていたものを吐き出す事ができ、気持ちが満たされていく。

「「はぁはぁはぁはぁ…」」

 特に激しい動きをした訳ではないが、視覚から来る淫猥な行為に発揚し、オレもレネットも息遣いが乱れていた。何処かトロンと虚ろな瞳をさせているレネットの頭上に手を置く。

「レネット…」

 オレの行動にビクンと反応を示した彼女は上体を起こし、

「アクバール様なんて大っ嫌いですから」

 痛い言葉を投げつけ、恨めし気にオレを見つめる。そんなふくれっ面した顔まで、心底愛おしく思える。

「無理にやって悪かった。調子に乗っていた」

 オレは反省の色は見せるが、後悔していない。間違いなくレネットも快楽を得ていたからな。彼女の躯は火照っているのか、紅潮としていた。

「機嫌を直せ」
「アクバール様なんて知りません!」

 プイッと視線を逸らし、尚もつむじを曲げる彼女に、オレは目を細め、軽く溜め息を吐く。

「悪かった。これで機嫌を直してくれ」
「え?…あんっ!」

 オレはレネットの敏感な場所へと手を伸ばし、既にしっとりと水気を含んだ茂みを掻き分け、雲隠れしていた花芽に手を掛けた。

「満たしてやるから、機嫌を直せ」
「やぁんっ、あんっ、あんっ」

 少し弾いただけで、レネットの上下の唇から艶々と潤いのある声が上がる。快感によって、力を奪われた彼女はオレにしがみついていた。

「やだぁ、これ…はん…せ…い…してない」
「反省している。悪いと思っているから、こうやって気持ち良くしてやっているのだろう?」
「こん…なの…私は…望んで…ない…です」

 オレの肩に顔を埋める彼女の表情は隠れて見られないが、相当恥ずかしがっているのが分かる。オレの腕を掴んでいる手もフルフルと震えさせながら、力を込めていた。

「そうか、望んでなかったか」

 オレは潔くレネットの中で翻弄していた指を離す。彼女からしたら意外だったのだろうか。呼び覚まされたような表情をしてオレを見上げていた。そんな彼女にオレは口角を上げ言う。

「レネット、またオレの躯の上で跨いでみてくれ」
「…っ」

 今の言葉を耳にしたレネットは声にならない声を上げ、暫く茫然としてオレを見つめていたが、突如、タガが外れたように爆発する。

「アクバール様!いい加減にして下さい!私はもうあのような卑猥な奉仕は二度としないと…」
「そういう意味ではない」
「え?」
「別に奉仕をしろとは言っていない。いいからオレの躯に跨れ」
「い、意味が分かりません!それなのに跨がれますか!」
「つべこべ言わず、言う通りにしろ」
「きゃっ、や、やめて下さい!」

 オレはレネットごと自分の躯を仰向けに落とそうとした。そのまま強制的に彼女を自分の躯に跨らせようとしたのだが、自分が考えていた通りにはならず、スルリと彼女が手元から離れてしまう。

「い、嫌ですから!」

 自分が上位になるのが羞恥でならないのか、彼女はオレに背を向けて、逃げようとする。だが、オレも躯を起こし、引き留めにかかる。勢い良く彼女の腕を引っ張り出し、そのまま自分の躯と一緒に倒す。

「きゃっ!」

 不意に躯を落とされたレネットから悲鳴が上がる。そして寝台に背をついたオレは機敏な動きで彼女の膝立てさせた両足を左右に広げ、自分の顔の上へと跨らせる。

「な、何する…ひゃぁあんっ」

 やる事なんて決まっている。オレはレネットが逃れられないよう彼女の腿に腕を回して固定した後、眼前にある甘い蜜の地に舌を這い回した。彼女の脚に力が入り、ガクガクと震えているのが伝わってくる。

「こ…こんなの、やあっ、あんあんっ」
「奉仕しろとは言ってなかっただろ?逆にしてやる。奉仕する時だけが跨るのではないと勉強になっただろう?」
「あんっ、そん…な」

 いつもは最後に手をつける花芽だが、今回は始めから唇に挟み吸い付いてやった。彼女の最も弱い箇所がここだからだ。逃げ場を失ったレネットはひたすら快楽に堪えている。さらに花芽の包皮を剥き、素の姿にして再びチュゥと吸い上げた。

「あぁあんっ」

 ゾクゾクとさせるいい声だ。蜜が絡んだ花芽はオレの舌に抵抗する事なく、いや、むしろ誘うように絡み付いてきていた。徐々に蜜が溢れ出し、花襞がパックリと開いていく。濃厚な蜜の味と香りは雄の性欲を煽りに煽っていた。

 そもそもレネットの幾度と抗う姿を見させられ、つい辱めてやりたいと性的征服欲が沸いていた。滴るほど溢れてくる蜜によって、花襞はたわやかとなり、奥へ奥へとオレの舌をいざなう。

「あんつ、はぁあんっ、やぁあ…」

 レネットは天に仰いで、よがり声を上げている。嫌だ嫌だと言いつつも、気が付けば、自分からオレの顔に秘所を擦りつけていた。こちらが息苦しさを感じるぐらいだ。オレは反射的に腕を伸ばし、レネットの双丘を掴んだ。

「ふっああんっ!」

 嬌声と共に彼女の躯が仰け反る。胸の下から隆起するようにガッツリと揉みしだく。ぬめった舌だけでビクンビクンと跳び上がっていたところに、新たな責め上げが入り、彼女は意識が吹っ飛んだように悶えていた。

 蜜が溢れるように滴り、オレの口元から零れ落ちる。花襞が完全に開き切り、舌を難なく吸い込ませていく。甘く濃厚な蜜が雄の性欲を極限まで導く。危険だと思わせるほどの甘美な媚薬だ。

「あんあんはぁあんっ」

 レネットはオレの舌、オレの手一つ一つにいくらでも喘いでいた。今後誰一人とする事はない、オレだけが知る彼女の淫乱な姿、一瞬たりとも無駄にしたくはない。

 蜜を絡めたその場所はいつしか紅潮と色づき、より貪欲に快感を追うようにヒクついていた。ビクビクと跳ねるレネットの動きに、彼女の愉悦が伝わる。昂奮を高められたオレはレネットと共に理性を噴き飛ばし、彼女の中を貪り続けた。

「あぁんっ、んぁあっ、あ…あぁっ!」

―――ビクンッビクンッ。

 レネットの腰が一気に跳び上がる。もう達する寸前だろう。そう思った刹那、彼女の躯が硬直する。

「ふっぁああ―――――!!」

 次の瞬間にはガクンガクンと躯を痙攣させ、昇り詰めたと声と共に盛大に達した。

「はぁはぁはぁはぁ」

 完全に力を奪われたレネットはヘナヘナと項垂うなだれると同時に、オレは彼女から離れる。ようやくオレから解放され、さらに力が抜けたのか、彼女は俯せの体勢で寝台へと身を委ねた。

「はぁ…はぁはぁ…」

 まだ必死に肩で息をする彼女の後ろ姿はほのかに桃色となっていた。穢れの知らない綺麗な無垢な躯だ。この躯はオレの味しか知らない。そう思うだけでオレの感情を昂らせる。現に今、オレの秘肉は触れられてもいないのに、張り裂けんばかりに屹立していた。

 準備は整っている。本当はもう少し彼女を休ませてからと良心は思っているのだが、この膨張している雄芯の欲を止める事は無理だ。オレはレネットの前までいき、彼女の臀部でんぶへと手を掛けた。

「な、何を?」

 突然に触れられ、躯をビクンと反応した彼女は顔だけをこちらへと振り向かせ問う。その表情が不安と期待を入り組んだなんとも言えぬ、オレの情欲煽り立てていた。

「悪い、レネット。我慢が出来ない」

 そう伝えるオレは彼女の臀部を左右に広げる。

「そ、それは駄目ですっ」

 そう言うレネットは顔を前して寝台に埋める。駄目と言っても、抵抗する様子はない。オレは遠慮なしにそのまま広げ、そして少し彼女の腰を浮かせた。

「ぁ…ん」

 彼女から甘い吐息が洩れる。開けた先には潤いに満ち溢れる女の場所があった。一目で分かる、彼女も欲しているという事に。聞かずともお互い準備が出来ていた。オレは臀部の上へと跨り、彼女を覆うような体勢で雄芯を秘裂に宛がう。なんの躊躇いもなく、ヂュヂュヂュヂュという水音と共に奥へと沈ませていく。

「ふっぁああん」

 再び重圧に、レネットの躯が前へと浮く。

「くっ…」

 まだ沈ませただけだが、快楽が雄芯に集中する。何だ?今日は一段と絡み付いてくる。まるで待ちわびていたのかネットリとしていた。

「あんあんっ」

 抽挿が始まると、レネットから甲高い声が上がる。その声に雄に熱が集中し、より硬くなって彼女の中を穿つ。既にパンパンッと卑猥の音が響いていた。心地好い温かさから迸るような熱が生じ、次第に息遣いが乱調になってくる。

 穿けば穿つほど、快感が生まれ、思考が狂ってきそうだった。欲に貪り続け、我を忘れる。快楽に溺れるというのはこういう事だろう。そうなるのも相手がレネットだからだ。自分が快楽を追うもの勿論だが、彼女にもどんどんと溺れさせてやりたい。

 欲に支配されていたオレは抽挿を緩め、彼女の腕を掴み、結合部が繋がったまま共に上体を起こした。左右脚を広げ、膝立ての体勢となる。彼女は何事かと顔をこちらへと振り返らせる。オレは何も言わず、両手で彼女の腕と腰を固定し、躯を揺さぶり始めた。

「ふぁっん、あんあんあんっ!」

 この時にはオレの理性は殆どなかった。レネットを快楽へと溺れさせたい、陥落させたい一心でひたすら腰を強く素早く動かしていた。不安定な体勢であったが、彼女の中はオレの雄芯を離さんばかりに包み込んでいた。ギュッと絞り取ろうとするほどだ。

「はぁんっ、もうっいやっ、あんあんっ」

 レネットから鼻にかかった甘ったるい声が零れ続ける。背を向けているが、彼女の豊満な胸が弾んでいるのが分かると、オレは固定していた手を彼女の双丘へと伸ばした。

「あぁああんっ!」

 壊れたような嬌声が上がる。頂きを中心にして強く揉みしだいていく。敏感な箇所を同時に責められた彼女は顔をフルフル左右に振って訴えてきていた。

「もっもうっ、ら、らめっ!」

 舌足らずになり、言葉すら紡げずになっていた。オレは構わず、彼女の中に雄芯を注ぎ込んでいく。グヂュグヂュ!パンパン!精の匂いに充満された室内で、本能のまま躯を揺さぶり続ける。

 互いが全身を戦慄かせ、燃えるような肌の熱が伝わり、汗が滲む。重なり続けた想いの分、律動を刻んでいく。彼女の魂までオレを忘れさせないようにと全霊を注ぐ。誰にも邪魔をさせない、オレとレネットだけに与えられた至福のひと時だ。心と躯が共に満たされていき、全身へと駆け巡る快感は頂点へと達しようとしていた。

「もういくっ!」
「くっ!」

 互いがグッと息が詰まり、何かに堪えるように力を込めた次の瞬間、

「あぁああ――――!!」

 レネットの声と世界が変わるような真っ白な閃光が目の前で放たれると、彼女の中に熱い精が放散され、オレ達は共に絶頂へと昇った。
「「はぁはぁはぁはぁ」」

 脱力感に見舞われたオレ達はその場へと倒れ込む。さすがに今回はオレも体力を使った。暫く放心状態となって酸素を追い求めていた。

 …………………………。

「レネット…」

 数分が経ち、オレはレネットの髪を撫でながら、彼女の名を呼ぶ。その声に彼女は顔を上げ、オレを見る。微かに目を潤ませ、何か言いたげであった。そういう表情が返って、オレの情欲をそそるとも知らずに…。

「どうした、何か言いたげだな」

 その言葉に、彼女は不満げな表情を浮かべる。

「顔が見られないのは嫌です」
「は?」

 言われた意味が分からず、オレは呆けたが、すぐに把握する。

―――そうか、顔を背けてやっていたからな。

 なんだかんだ女性は顔を合わせながら、共に快楽を味わうのが好きらしいからな。

「悪かった」
「ひゃっ」

 理解したオレは俯せになっていたレネットの躯を仰向けに直させる。そして、すぐに彼女の脚を左右に広げ、躯を覆う。

「今度は顔を見合いながらやるか」
「もう!」

 そう言って、オレはちゃっかりと次の快楽の地へと行く為に、雄芯を宛がう。次は耳の奥から蕩けるような甘美な言葉や、窒息させるぐらいの口づけを降り注いでやろう。

「愛している、レネット」

 オレらの夜はまだまだ続く…。

✻ ✻ ✻ ✻ ✻ ✻

「アクバール様、レネット様、おはようございまぁ~す!」

 レネットと共に寝室を出ると、背後から慣れ親しんだ調子の良い声が耳に入ってきた。

「おはようございます、クレーブスさん」

 クレーブスの姿を目にしたレネットが挨拶を返す。深紫色のローブを着用し、相変わらずの女顔に満面の笑顔を乗せて、オレ達の前へと立っていた。

「お二人ご一緒に移動ですか?仲がよろしい事で何よりです❤」

 ヤツはぐふふとも聞こえてきそうな不快な笑みを湛えて言った。その意味ありげな姿に、レネットははにかんだように頬を赤く染めた。

―――ったく。

 オレは煩わしそうに溜め息を吐いた。寝室から共に出て来た時点で夜を過ごした事は百も承知の上、そこにわざわざタイミング良く現れては仲が良いと笑みを零す。コイツは本当に変態セクハラの塊だ。

「それにお二人共、とてもお肌が艶やかで~」

 さらヤツは調子に乗って、余計な言葉を投げつけて来た。肌が艶やかって遠回しにエロイ事していましたよね?と言っているようなものだ。

「あぁ、レネットと一緒で毎夜、心地好い微睡みが出来ている」

 オレも平然と返してやった。それにレネットはギョッと目を剥いていたがな。

「そうですか、そうですか!羨ましいですね~。是非、私もご一緒にさせて頂きたいです!なんでしたら今夜から3P…ぐほっ!!」

 ヤツが最後まで皆まで言わぬ内に、オレはヤツの顔面に拳をお見舞いしてやった。

「結構だ、クレーブス。レネットとの時間はオレ一人で十分だ」
「アクバール様のケチ~!おまけに乱暴者!」

 ヤツは鼻辺りを手で押さえ、気色ばんで叫んだが、んな事はどうでもいい。

「黙れ、このド変態めが」
「ド変態のアクバール様に、言われる筋合いはございません!この変態王子!」

 あー言えばこういう言う、口の減らない厄介者だ。オレは目を細め、屍のような冷たい視線を送ってやる。コイツのせいで、オレの品格がガタ落ちだ。ヤツとのやりとりをレネットに見せるのは甚だしいものがある。オレは隣にいる彼女を一瞥してみた。すると…?

「ふふふっ」

 思いのほか、彼女は笑みを零していた。オレとクレーブスとのやりとりが可笑しかったのだろうか。

「レネット?」

 オレは複雑な気持ちをして、彼女の名を呼ぶ。

「失礼しました。アクバール様とクレーブスさんは本当に仲がよろしいのですね」
「仲が良いなど「えぇえぇ、そうなんですよね~♪」」

 なんだ、今の?オレとクレーブスとの返答が相反してハモったんだが。それにヤツが妙に喜びを顔に漲らせているのは何故だ?気色悪いな。

「アクバール様がお生まれになった頃から、私はずっとお傍で仕えておりますからね。家族同然ですよ~」

 図々しいな。クレーブスの発言に、上から物事を言われている気がしてならなかったが、まぁ一応は親しんでくれているという意味で受け取っておくか。

「そうなんですね。お付き合いが長い分、絆も深くなるものですものね。家族同然と言える仲が微笑ましいです」

 クレーブスの図々しい発言にも、レネットは丁寧に返した。

「何をおっしゃっているんですか~?レネット様もアクバール様とご結婚されたのですから、私達はみな家族になったんですよー」
「「え?」」

 オレとレネットは瞠目する。何気にサラッと決めてくれたよな、今のクレーブスの言葉。だが、悪い気はしないな。その気持ちはレネットも同じように思っているようだ。何故なら、彼女の表情が何か輝いて幸福そうにしていたからだ。

―――こういうのどかな時間が、これからもずっと続けばいいのにな。

 ふと心に湧く純粋な感情だった。多忙な日常を送る自分にとって、こういった何気ない雑談が幸せな時間だったりする。空気が和んでいる中、オレはそっと目を閉じる。

 この幸せを完全なるものにするにはやらねばならないな。首を長くしていても、幸せへの道は遠いままだ。胸にある決意を閉じていた瞼と共にゆっくりと開く。

―――挑みに行こうか、シュヴァインフルト現国王であるヴォルカン叔父上の元へ…。

 近い内に必ずオレは王の座を取り戻す。命ある限りの穏やかな幸せを手に入れる為に。そうオレは固く胸に誓い、歩き出した…。





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