STEP12「公開のイチャコラ!?」




「わぁ~!凄い」

 私は食卓に並べられているお料理を目にした途端、驚嘆の声を上げた。朝食だからといって簡素なものではない。パン、お肉、野菜、お魚とあらゆる食材が色とりどりの姿となって盛り付けされ、食欲を誘っていた。

 私は今、殿下と他二名(省略)と一緒に食卓のに訪れていた。さっきまで王太子の件で腹立たしい事ばかりだったけど、このお料理を見たら、機嫌も上々しそうであった。それほど豪華極まりない!

 それにお料理を並べている長テーブルも凄い。一体何人、いや何十人腰かけられるんだろう?重厚なテーブルに思わず萎縮してしまいそうになる。純白のテーブルクロスには間違っても料理を零せないわ。

「既に腹が減っている事だろう?ゆっくりと召し上がるといい」
「はい」

 隣に立つ殿下から言われ、私は笑顔で答える。わーい!やっと御飯だ!知らぬ間に王太子に会う予定を入れられて、朝食が延びたからね!実はお腹が減って機嫌が斜めだったのもあったんだよね。

 とはいっても呑気に朝食だけをもらうわけにもいかないのだ。何故なら食しながら例のジュエリアに関する話し合いもしなければならないからだ。それに気が重い。せっかくのお料理なのにね。

―――さて席は何処に座ろう。

 こういう場合、出入口に近い下座に座るべきだよね。でも出来れば殿下の隣に、きゃ❤それともお顔が見える正面がいいかな~。って乙女心を炸裂させて期待していた時だ。

「君はここに座って」


 魔術師に指定された席はまさに下座だった。そして殿下は…。オーノー!一番あっちゃならん斜めの席ってなに嫌がらせ!?確かにそこが上座ではあるけど、不満ありまくりだっての!

―――グスン。

 つくづく乙女心を砕いてくれているよね、当の本人達は無意識だろうけどさ。う~隣が騎士で正面には魔術師になったよ。二人共、超美形だけど、嬉しくないわ。

「アッシズ、悪いが席を替わってくれ」

―――へ?

 悲しんで俯いていたら、殿下の声が聞えた。それも騎士に席を変わってくれって?それって…?

「ヒナの隣りにはオレが座る」

 キタァアア―――――o(((≧□≦)))o―――――!!!!なにこの胸キュンな展開!!今の発言は期待しちゃっていいんですか?問いたい問いたい問いたいよぉおお!!私が萌える雄叫びを上げている間に、騎士は殿下と席を替わった。

「自己紹介がまだだったな。オレとヒナは名前を教え合ったが、グリーシァンとアッシズの紹介が出来ていなかった。だから彼等を前にした方が紹介しやすいと思い、席を譲ってもらった」

―――へ?

 腰をかけた殿下はすぐににこやかな笑みを広げて口を開いた。もしや、今のってまたしても私の早とちりってやつでしたか?心に冷たい風が吹いていった気がした…。とはいえ、そういえば横文字の名前でイマイチ覚えられなくて、勝手に魔術師や騎士と名付けて呼んでいたんだよね。

「まずはこちらから見て左がグリーシァン・ヴェルディグリ。彼は我がエルフェンバイン家に仕える魔術師だ」

―――え?本当に魔術師なの?

 彼は恰好が物語に出て来る魔法使いのようなローブを着ていたから、勝手に魔術師と命名していただけだったんだけどな。

「そして師の称号をもつ有能者だ。何か困った事があれば、彼を頼るといい」
「滅相もございません、殿下」

 魔術師…じゃなかった。グリーシァンと呼ばれた彼は殿下から「有能な」と持ち上げる言葉を言ってもらえたもんだから、謙遜したようだ。にしてもこの胡散臭いチャライ感じのヤツが偉い位をもっていたとは世も末だと言いたい。んでもって、とんでもない性格の悪さ、とても頼りに出来ないですわ!

「そしてグリーシァンの隣にいるのはアッシズ・ブリスフル。彼もグリーシァンと同じくエルフェンバイン家に仕える騎士だ」

―――おったまげ!こっちも本当に騎士だったんだ!

 私の見る目もなかなかのものだと感心した。まぁこっちも甲冑姿だったてのもあるけどさ。(さすがに今は食事時だから鎧は取っているけどね)

 それにしても、横文字の名前は覚えにくい~。一先ず、魔術師はグリーシァン?騎士はアッシズね。この三方、年はそんなに変わらなさそうに見える。みな、私の少し上ぐらいかな?

「彼も優秀な騎士団長だ。きっとジュエリアを探す上で、大いに力を貸してくれるだろう」
「勿体ないお言葉です、殿下」

 グリーシァンもだったけど、アッシズも殿下に対しては素直じゃない?確かに殿下の方が身分が上だから恭しくなるのはわかるけど、もちと私に対しても柔軟になってもらいたいものだわ。

「最後にそちらはヒュウガヒナタだ。オレはヒナと呼ばせてもらっている」

―――や、やだ、殿下ったら!

 私は頬に熱が集中するのを感じる。名前は一度しか言っていないのに、殿下はフルネームを覚えててくれたんだ!それに本当にヒナと呼んでくれていて、う、嬉しすぎる!

 ニンマリとして喜ぶ私とは違って、フンとした態度のグリーシァンと仏頂面のアッシズの二人は超感じが悪いな。明らかに私をよく思っていないのがわかる。何がそんなに気に入らないのだろう。私、別になにもしていないし?

「さて、せっかく並んでいる料理だ。ある程度頂いてから本題に入るとしよう」

 殿下の言葉に、私達は食事へと手をつける。でも私はすぐに手が止まった。

「どうしたヒナ?」

 私の様子の異変に、殿下がいち早く気付いてくれた。

「あ、いえ」

 大変言いづらい。ここで正直に言ったら、グリーシァンとアッシズにバカにされそうだし、それに殿下の前で恥晒しになる。どうしよう…。

「黙っていたらわからないぞ。困っているのだろう?」
「あ、はい。あの、その頂き方がわからなくて」

 殿下の瞳が微動する。完全に驚いたようだ。やっぱ、そうだよね。高級料理の食べ方がわからないのかとマジ引くよね。ていうか、実は昨日もそうだったんだけど、この世界の食事はフォークやナイフ、スプーンといったもので食べるんじゃないんだ。

 何て言えばいいのか、フォークといったものの代わりに、何層にも分かれている枝のようなものや、うっすい四角い板のような形のものを使って食べる。昨日は部屋に一人だったから、適当に刺したりして食べたんだけど、さすがに殿下達の前ではそれが出来ない。

「え?君って下々なコなんだ。確かにこれは高級料理にしか使わないカトラリーだけどさ」

 ぐっ、やっぱきたよきたよ、今の言葉はグリーシァンからだった。完全に人を見下した言い方だったよね、予想通り!

「え?」

 スッと私の手に伸びてきた美しいもう一つの手。

「で、殿下!」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう!だってだって突然に殿下が私の手をとり、カトラリーを握らせて、さらにその私の手を握ってきて!?

「これはこうやって使う。この料理にはこれで押さえ付けて真ん中の腹から皮を取る」
「は、はい」

 殿下がきちんと私の手を握りながら丁寧にレクチャーをしてくれる!わ、私は握られている手から脈打ちがバクバクいっているようで、心臓がもちません!グリーシァン達の前でイチャコラではないですか!いっや~ん❤

「喪女」
「腐女」

―――は?なに今の呟き?

 目の前の奴らボソっと呟いたよね?コ・イ・ツ・等~!きっと私の零した嬉しさの笑みを目にして嘲笑いやがったか!





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