STEP13「ジュエリアの企みとは」




 ――数分後。

「そろそろ、本題へと入るか」

 食事の頃合いをみて殿下は私達に声をかけた。それまでは食事をとりながら、他愛のない話や仕事の会話がなされていたが、本題はジュエリアの事だ。

 ――デザート……。

 かつて目にした事のない豪華なデザートを前にして、手がつけられないのか。グスンッ。ってそんな事よりもだ。

「殿下、あの」

 これからというところの話を折って申し訳ないと思いつつ、私はどうしても訊いておきたい事があった。それは……。

「ジュエリアの話の前にお聞きしたい事があります」
「なんだ?」

 私の突然の申し出に殿下は軽く首を傾げて問う。

「はい、私は何故ジュエリアとして捕まっていたのでしょうか?」

 そこ知りたくて仕方なかったんだよね。だって私はこのBURN UP NIGHTの世界に入り込んで気付いた時には牢獄へと繋がれていた。どうしてそうなったのか、その過程を知りたいのだ。

 …………………………。

 一同が目を丸くしているように見える。なんでだろう? 一先ず、最初から話をした方がいいかな。

「私、この世界に来たてほやほやなもので、まだここの事がよくわからないんです。本来なら何処かのフィールドに案内され、異性との出会いを求めていくんですよね? でも私の場合、気が付いたら牢獄に繋がれていて、ぜんっぜん意味がわからないんですよ」
「「は?」」

 私は真面目に説明をしたにも関わらず、グリーシァンとアッシズから「は?」って言われたよね?

「君こそなにを言っているのかわからないんだけど? フィールドとか? 異性と出会いを求めるとか? 現実見てる?」

 ――なにその問い返し?

 グリーシァンは珍獣を見るような目つきをして私に問う。こっちがそんな顔をしたいぐらいだ。

「この世界は現実なんですよね? まだ信じ難い気持ちはありますが、きちんと現実として受け止めていますけど?」
「本当に大丈夫か? 明らかに現実として見ていない気がするが」

 今度はアッシズが不穏な眼差しを向けて言う。さっきからこの二人が言っている意味の方がわからないんだけど?

「え? だからここはBURN UP NIGHTというゲームの世界ですよね? 皆さんは私同様にオンラインのゲームを始めて、この世界に入り込んだじゃないんですか?私は登録したばっかで、このゲームのルールやシステムがわからないと言っているんです」
「うわ~、ジュエリアじゃなかったとしても、狂気満載の頭だね。ゲームってなに? それのルールとかシステムとか、聞いている限りだと、異世界から来ました的な発言をしているけど、なに? 本の世界の空想を体現化しようとしているの?」
「は?」

 さすがに今のグリーシァンの言葉なくない?

「私は事実の話をしているだけなんですけど、なんでそんな非難した言い方をされなきゃならないんですか!」
「オマエがわけのわからない事ばかり並べて言うからだ。いくら魔法が存在しているとはいえ、召喚魔法など空想にしか過ぎない」
「は?」

 なに今のアッシズが言った召喚魔法って? つぅかこの世界、やっぱ魔法が存在するのか!

「いやですから、皆さんは導かれてこの世界にやってきたんじゃないんですか?」
「重症だね。この世界はこの世界だよ。聞いている限りだと、異世界から来たように聞こえるんだって」

 完全に私を不審がっているグリーシァンの態度に不快感を覚える。ていうか、この人達って私と一緒で外の世界から来たわけじゃないの? だってジュエリアはBURN UP NIGHTって口にしていたし。ヤツも外から来た人間だよね? てっきり他の人もそうだと思っちゃうよね。

「そうですけど? 私はこの世界の住人ではありませんから」
「なんか本気で言っているっぽいよね? これで本当に大丈夫でしょうか、殿下。この者にジュエリアを捕まえさせるのは」
「…………………………」

 え? なになになに? なんか私、頭がオカシイ人扱いされてない? 大真面目に答えた私の言葉をフルシカトしたグリーシァンは何故か殿下に私の事を確認しているし、殿下も黙然として私を見ている。

「ヒナ」
「はい」

 少しを置かれた後、殿下は重々しそうな口を開いて私の名を呼ぶ。

「オレ達は先日、ジュエリアを捕まえるあと一歩のところまで来ていた。そして追い詰めたヤツの姿を目にし、それが……ヒナ、意識を失ったオマエだったのだ」
「はい?」

 ――え? え? どういう事?

 いきなり話題が変わった? いや本来、私が求めていた話に戻ったというべきか。だけど、どう反応をしたら良いのか困る。

「えっと、私は何処にいたのですか?」
「マラガの森の中にある小屋だ」
「ぜんっぜん、そこがわかりません!」

 何処じゃそこは! ……きっと私が最初に落とされたフィールドなんだろうな。私の反応に殿下達はおぼつかなげな表情をしていた。うん、別に殿下の言葉を信じていない訳でもないし、私も嘘は言っていないよ。

 にしても気を失っていたのはなんでなんだろう? んでもって、なんでそこにジュエリアがいたのか? んー、考えてもわかるわけがないけど、初っ端から謎めいたまま飛び込んでしまった感なんだよね、本当に困った。
「私はジュエリアではありませんから」

 私は眉根を寄せ、念を押す。これ大事。

「それはこれから証明してもらうよ。それまでは仮にジュエリアではないという前提で話を進めていくよ」
「感じわるっ!」

 思わず本音が洩れた。案の定、グリーシァンから冷たい視線が送られる。うん、見なかった事にしよう。それと、あともう一つ疑問がある。

「ジュエリアは本当に魔女なんですか?」

 魔法が存在をしているのなら、魔女がいてもおかしくはない……とは思うけど、まだ疑わしいよね。めっちゃ怪しいヤツではあるけど。

「確証がある訳ではないが、あの生真面目な兄上を絆し心を掴んだ事や、小屋から姿を消した事など魔女としての気質は十分にある」

 え、王太子って生真面目だったの? 今朝がた目にした時は我儘な王子様って感じだったけどね。

「確かに牢獄でジュエリアに会った時、彼女は見張りの兵士を眠らせたと言っていました。数人の兵士をどうやって眠らせたのか、その時、私も魔女ではないかと思いましたね」
「公爵令嬢の姿をした魔女か。捕まりかけたにも関わらず、この宮殿に姿を現すとんでもない女だな」

 鋭い表情に変わった殿下の様子が感慨深い。あれは厄介者だもんね。

「他に牢獄で彼女とどのような話をした?」

 殿下は次の質問へと話題を切り替えした。

「あ、はい」

 ん~、ひたすら人の事をバカにしていた記憶しかないんすけど? お手洗いの事とか? それ言いたくないわ! あと、ヤツも外から来た人間だって事か。これも言ったら、また狂人扱いされるから、今は伏せておこう。え? そしたらあとはなにもない? ……いや、一つだけ。

「ルクソールに殿下にジュエリアじぶんの悪事がバレて逆切れをしていました。勝手に王太子が自分を好いていただけなのにーって。自分が誑かしたとは思っていないようでした」
「やはりジュエリアは兄上を愛していないのか。なにか別の目的があって兄上に近づいたようだな」

 殿下は気付いていたんだ。王太子がジュエリアから愛されていないという事に。気の毒過ぎるけどね。

「それは王妃の座でしょうか」
「それも有力な考えだが、今はなんともだな」

 愛してもいない男に近づく、よっぽどなにかよこしまな考えがあるんだろうな。捕まりかけたのに、牢獄にいた私に会いに来たし、それも目的達成への執着なのだろうか。

 ――んー、本当にヤツの目的って一体……。





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