「これから食事をしようと思っていたんだけど、キールも一緒にどう?」




「え?」
「御飯まだなんでしょ?」
「あぁ」

 私の問いに一瞬面食らったキールだったけど、納得したような表情をして、こっちへとやって来た。テーブルを挟んで私の真向いまで来ると、

「もしかして、その量一人で食べる気だった?」
「へ?」

 ――なんだ、いきなり?

 キールは私の前に並べられているアラビアン料理何十品をマジマジと見つめながら問う。

「そのつもりだったけど?」
「いくらなんでも食べれ切れないだろう?」

 キールはなにを言っているんだと言わんばかりの苦い顔をしていた。

「はい? いつも私はこれくらい食べているけど?」
「は?」
「は? ってなんだよ! 晩餐会の時はこれ以上出ているじゃん」

 基本、部屋食だけど、たまにキールやアイリッシュさん達と晩餐会に参加させてもらっていて、その時はこれ以上の豪華なお料理が並べられるのだ。みんな食べてんじゃん、なにを今更!

「確かにこれ以上の料理は出ているけど、完食はしていないだろう」
「え?」

 そ、そうだったけ? あっしは完食してますけど?

「オレはいつもは晩餐会の料理の四分一を食べている」

 な、なんですと! という事はあっしのこの料理の三分の一ではないですか! 確かに量は多いとは思うけど、シェフさんがしっかり栄養を考えてカロリー計算をしていると聞いていたし、てっきりキール達も同じ量を食べていると思っていたのに、なんという事だ!

「よくそんな食べて太らないな」

 さらにキールから突っ込みが入ったぞ。ヤ、ヤバイな、キールの三倍は食べていると実証してしまっているではないか!

「わ、私の世界ではこれぐらいが当たり前なの」
「そうなのか?」
「む、むしろこれでも超少ない方なんだからね」
「オマエの世界って大食いなんだな」
「ぶ、文化の違いですぅー」

 ふぅーなんとか誤魔化せたな。実際はキール達が食べる量と現実世界は変わらないんだけどね。

「せっかくだから、温かい内に食べようよ」
「でもそれってオマエだけの分じゃん?」
「今日は特別にわけてあげてもよろしくてよ?」
「シェフに新しいのを用意してもらうよ」
「かっわいくなーい」

 ッカー、人の行為を無駄にするなっての!

☆*:.。. .。.:*☆☆*:.。. .。.:*☆

 部屋にキールの料理が運ばれ、今、彼と二人モシャモシャと食事中であった。しかし………本当にキールの料理の量は私に用意された食事の三分の一であった。何故レディの私の方が三倍も多い? 用意してくれていたシェフさんや使用人の方々は今までどなん思おうてたんでしょうね!

 いたたまれない気持ちはあっても美味しい料理を食べる手は止まらなかった。それに私は嬉しかった。

「千景……、さっきからニヤついているけど、そんなに食べるのが嬉しいのか?」

 私のニヤつきに気付いたキールが透かさずに突っ込んできた。

「それもあるけど、なんだか今日はいつも以上に美味しいなって思えてさ。一人で食べてもこのお料理は美味しいけど、やっぱ誰かと一緒に食べるともっと美味しいね」

 私は素直に気持ちを伝えた。

「そういや、オマエいつも一人で食べているもんな」
「そうだよ、キールは?」
「オレはアイリや官職達、誰かしらと食べている」
「そっか」

 現実世界では私も彼氏や女子会といった誰かと食事するのが当たり前だったからな。マシンガントーク炸裂で盛り上がって、楽しい時間過ごしていたもんね。

「たまにはこうやって部屋食でもいいかもな」

 キールは感慨深い表情をして吐露した。どうしたんだ、急に? と、

 思ったけれど、私は引き続きモシャモシャと食していたら、またもやキールからの視線を感じた! なにやら目を細めてジッとこちらを見つめているぞ、なんだなんだ? ……あ、もしかしたら!?

「キール、これ食べたいんでしょ?」

 ちょうど私はフォークで刺したトロピカルケーキを口に入れようとしていたのだ。きっとキールはコレが食べたかったに違いない。

「は?」

 キールは突拍子もない声を上げたけど、私は気にせず身を乗り出してケーキが刺さったフォークを差し出す。

「なんだよ?」
「なんだよって、はーい、あーん」

 私はせっかくだから食べさせてあげようとケーキをキールの口元へと向けた。キールはキョトンとして動かずにいたけど、すぐに口を開けてケーキをパクリと入れた。その姿が妙に色っぽくて、私は一瞬ドキンッとしてしまったよ!

「美味しい?」

 キールはコクリと頷く。やっぱこのケーキが食べたかったんだね。色々と美味しいケーキはあるけど、このトロピカルケーキは格別だからね。そしてモシャモシャとケーキを喉に通したキールは……?

「千景、オマエ意外に大胆だったんだな?」
「はい?」

 なにを言い出すんだ、コヤツは? キールは心なしか熱を帯びたような艶めかしい表情をしていた。なんだなんだ急に?

「今の肉欲を求める行為だろ?」
「はい?」

 なに言っちゃてんだ? なにをどうしたら、あーんが発情になるんだ!

「抱いて欲しい相手に差し出して相手が食べたら、欲を受け入れたって事になるもんな」

 な、な・ん・で・す・とぉおお!!

「な、なに勝手な文化作ってんだよ! 私が知らないと思って変な事を言い出すなよな!」
「嘘じゃないって」

 キールは冷めた表情をして私の言葉を跳ねた……という事はだ。さっき差し出したケーキをキールは食べたよね……って事は?

「今日の夜は体力使うな」
「!?」

 ボソッと呟いたキールの喜悦満足そうな表情を目にした私はムンクの叫び顔となった! そして……その夜、私はキールにしっかりと頂かれてしまったのであった!




グッドED「やっぱ誰かと一緒の食事はより美味しい」 :キーワード②「o」

http://romancer-for-you.jp/wazawainohime/multi-①②③④.html

キーワードを①から④まで並べてURLを完成させると、新たなストーリー「エクストラED」へと続きます。





web拍手 by FC2


inserted by FC2 system