番外編⑭「甘い蜜よりもトロトロに」
軽やかな舌の動きで唇が割られる。キールの舌はすぐに私の舌を絡み取った。その瞬間、躯にビリビリッとなんとも言えない甘い刺激が走る。キールの熱が籠った塊は肉感的な動きをして、私の舌を翻弄していた。
「ん……んぅぅ…」
――気持ちいい……。
無意識に色声が落ちる。そんな自分の声を抑えたいのに、それよりも快感を追う方に意識が向いてしまう。キールの舌の質量感が生々しくて堪らない。潤いに溢れる舌の感触が心地好い。
私の感じる場所を的確にキールの舌は舞う。甘さと激しさを使い分けた絶妙な舌技に私の躯は小刻みに揺れ続ける。私はこの熱に浮かされる感覚が好きだ。幸せな気持ちに溢れるから。それに今日はいつもとはなにかが違う。
――どうしたんだろう?
いつもより丁寧で尚且つ情熱的なチューなのだ。キールの中でなにかがあったのだろうか。もしかしたら、あの子供達と出会った影響かな? キールも気付いていたのだろうか。勘の鋭い彼だ。
考えてみたら、刺客の疑いがあるかもしれない子供達をあんなにアッサリと帰ったなんて言わないもんね。少しでも危険な可能性があれば、今頃血眼になって子供達を探している筈だ。
キールもアイリもあの子達の正体に気付いていたんだ。子供達の姿がなくなった時、帰るべき場所に帰ったのだと悟ったのだろう。キールの心にも感慨深いものが生まれたんじゃないのかな。だから今日はこんなにもキスが情熱的なのか。
そして私は女の子の顔を思い出したら、急にまた胸が締め付けられる。必ずあの子とはまた巡り逢える。こうやってキールと愛し続けていれば、いずれ……。キュンと胸が高鳴る。きっと、あの子は私とキールの……。
「んっ、んぅ……んぁっ」
パンダちゃんの存在を改めて認識すると、躯の熱量が高まったのか、口元からより淫靡な声が洩れた。その私の変化がキールにも伝わったのか、彼の行動にも変化が現れる。キールの大きな手が服の上から私の胸を揺らし始めた。
「ふ……っぁあ」
熱い吐息と共にキールの舌が私の耳朶や首筋へとゆっくりと滑り落ちていく。ちゅくっと水音が鳴って熱が肌を伝う度に、躯が喜びに震え上がる。この甘い痺れがキールの愛なのだ。
――心臓の音がヤバイな!
心臓が恐ろしく波打っていて、このままだと本気で破裂してしまうんじゃないかと心配になる。何度もキールとは触れ合っているのに、今でもこの緊張には慣れない。私の胸をガッツリと掴んでいるキールに、この爆音が伝わっているんだろうな。
チラッとキールの表情を覗けば、うん、零れるような色気に私の躯はズクズクに疼いてしまう。いつでもキールからバニラのような甘い香りが漂っていて、それも香水とかではなく先天的なものだから凄い。
この香りが私は大好きだ。でも実は濃密な色香も含まれていて、あれよあれよと私はエッチな気分にさせられてしまう。恐るべし! 悩殺的な香りでもあるのだ。今、まさにその瞬間に見舞われていた。
「やぁあっ」
とても拒否っているとは思えない色の含んだ声を発してしまった。コロンと二つの膨らみが姿を現した。キールが私の夜着をずらし、あからさまに胸を晒し出す。そしてフニフニと下から掬い上げるように膨らみを堪能し始めた。
私は胸の形が歪むのを目にする度に快感が伴い、口元から切なげな吐息を洩らす。もう見ていられない! 今日はいつもと様子が違って妙に恥ずかしいのだ。私が瞼を閉じると、グッと唇が深く塞がれてしまう。
「んっ、んぅっ」
すぐに濃厚に舌が絡んで、さらに胸の頂を弾かれる。口元からは甘く、胸元からは強い痺れが躯中へと浸透していく。見なくても胸の桃色がピンと屹立しているのを感じる。その内に摘まれ、指の腹でグリグリと擦られたり、優しく捏ねくり回されたりもする。
うぅ~、こんな風に刺激を与えられていたら、ピンクが色気づいた姿に変わってしまう。そしたらキールは食べ頃だと言って、パックリと口の中に入れてしまうんだ。この先の事を想像するだけで、下肢にジワリと水気が帯びてくる。
「はぁあっ、あんっ」
口元を解放されると、籠っていた熱が一気に外気へと霧散していった。キスが終わっても胸への刺激は続いていて、ピンク色を摘まれたまま、両手でもみくちゃに踊らされる。
「んあっ、やぁん、あぅっ、あんっ」
私がよがり声を重ねていく毎に、キールの表情がより濡れ色に染まる。とてもティーンとは思えない匂い立つ色気だ。劣情が沸々と湧き、瞳がトロンと蕩け切る。そんな私の物欲しげな姿にキールの勢いが増す。
「ひゃあっ」
キールは頂を口に含んで私の躯を寝台へと落とす。おのずと彼の躯も流れるように落ちて、私の躯を覆う。急にここにきて私は周りの事が気になり始めた。だってここは客室であって外には見張りの衛兵がいるんじゃ?
喘ぎ声が丸聞こえなんて……ひょぇえええ!! キールはきっと気にしない、むしろ聞かせてやればいいと、とんでもない事を口にしそうだが、私は瞬殺してしまう! 今ここで衛兵の事を口に出したら、熱が冷めてしまいそうで迷う。
「考え事? 随分と余裕なんだな」
「んあ? ……ふっぁああ!」
一気に昇り詰めてきた。キールは私の気を読み取ったんだ。私の意識がキールから離れていたのが気に食わなかったみたいで、その腹いせが今の衝撃だ。それからピンク色の実が真っ赤になるまで嬲られる。
もうキールの超美技に酔わされて、衛兵の事なんてどうでも良いと思ってしまう。こうやって結局は快楽の渦に呑み込まれてしまうのはいつもの事。もうダメ! 駆け上がってくる波によって痙攣が起きる!
「もう……イッ……ちゃうよぉ!」
達しが近い事を口に出した途端、
「ふぁああん!!」
パァアア――――ンッと視界が派手に弾け、世界が白一色へと変わった。一瞬で硬直した躯が緩々に解れていくのと同時に力が奪われていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
私は視界がボンヤリとさせながら、肩で息を切っていた。
「胸だけでイッた?」
ヒョコッとキールが顔を覗かせて問うてきた。問われた内容もだけど、彼の色気のある顔に私の下肢がズクズクに疼き始める。カァーって一瞬にして顔に熱が集まる。
「図星だろ? 顔が真っ赤だぞ」
「……っ」
自分でも気付いているって! 顔が熱いのは触れなくてもわかる。
「そ、そういう恥ずかしい事、い、言わないでよぉ」
私はキールから視線を逸らして訴える。
「今日の千景はエロイよな」
「な、なにいきなり……ひゃぁあっ」
スルッと下肢を伝ってキールの指がオパンツの上から秘所をツンッと強く弾いた。
「もう湿っているな。やっぱ今日の千景はエロイな」
「ち、違うもん!」
「あ~、そうか。千景は毎日エロイんだったな」
「な、なに言って……やぁああん、あんっ、あんっ」
マッチに火を点けるように強く擦られる。それも何度も何度もだ。腰が勝手に浮いて踊ってしまう。敏感になっている今の躯ではオパンツの上からでも刺激が強過ぎる。
「こんなにびしょ濡れにしてるんだから、千景はエロイだろ?」
「あんっ、ちっ、違うぅ……んんぅっ」
「勝手に腰が厭らしく動いているぞ? 煽ってんの?」
「ちっ、違……う……って、キ、キールが……さ、触るからぁあんっ!」
「擦りつけて煽ってくるなって」
「やぁ……だぁあっ……や、やめ……てぇ」
私じゃなくてキールの方が煽っている。散々煽りながら指の動きを止めない。逃げ場のない私の躯はずっと踊りっぱなしだ。その動きがキールの情欲を煽り、彼に卑猥な言葉を言わせてしまうのだろう。
「千景、一人だけ気持ち良いのはズルイぞ」
「あんっ?」
――ど、どういう意味?
なんだかいつもの責め方とは違う。酔わされながらも私は違和感を覚えた。それから指が秘所から離れたと思ったら、キールがしたり顔で私を覗いている。な、なんか嫌な予感がするぞ。
「うわっ」
いきなりスカートの裾を掴まれ、ガッと持ち上げられる。
「千景、手を上げろ」
グッと両手を無理に上げさせられると、スルリと寝巻きが頭からスッポリと脱げた。視界が一瞬真っ暗になったが、次の瞬間には下着姿になっていた! 今日は黒糸の刺繍と紫色のレースをあしらった小悪魔的デザインの可愛い下着だった。
「ほら下着も脱げって」
「や、やぁっ」
キールがブラの紐に手を掛け、半ば強制的に脱がせようとしているではないか! 私は反射的にキールの手を払い退けようとすると、キールの手の動きが止まる。
「いつも思うんだけど、なんで今更? この一年、散々千景のエロさを見てきたってのに」
「へ、変な言い方しないでよ!」
キールは悪そびれた様子も見せず、シレッと人をエッチなコ呼ばわりしてきた!
「や……だって……ばぁっ」
私の抗いも関係なしにキールは強行突破をしてきた。目も留まらぬ速さでブラを剥ぎ取り、続いてオパンツも人のお尻の割れ目から手を引っ掛けて、そのままズルッと下ろしてしまった! 呆気に捉われる。見事に私はすっぽんぽんだ!
「エッチエッチ!!」
羞恥のあまり私は胸元を腕で隠しながら文句を飛ばす。
――どわっ!
目が飛び出しちゃったよ! キールが素早く脱衣して、あっちゅー間にすっぽんぽんとなっているではないか! 神業か! 今日は前戯が短めだし、ちょっぱや本番に行こうとしているのか!
そ、それにキールの一物がご立派に天を仰いでいるではないか! もう準備万端なんですか、キールさんは! 今日はいつも以上に立派に見えるな。す、凄い形だ! いやんっ。私はキールに背を向けてモジモジと俯いてしまう。
「ほれ、気持ち良い事してやるよ」
「やぁっ……」
キールに腕を掴まれ、躯を後ろに押し倒される。私は口では拒否るものの胸には淫らな期待を膨らませていた。さっきから下肢の奥が疼いて仕方ないのだ。秘所を中途半端に弄られておいて達していないんだもの。
――あれ?
目線を見上げると、キールの顔が上下反対にあった。私の頭の先に彼の躯がある。私と視線が絡むとキールは躯を屈め、私の脚を大きく開いてきた。
「や、やぁっ……」
嫌と言いつつも、自然にキールの動向を追ってしまう。彼は艶めかしい顔が私の濡れそぼっている秘所へと入る。
――ピチャ、クチュッ。
「ひゃ……っあ、あんっ、んあぁう」
熱の籠った舌が水音を立てて秘所の表面を這う。刹那、私の口元から心酔した声が上がる。ビリッとした刺激はじんわりと躯の内部へと浸透していき、恍惚感を生んだ。
跳ね上がる私の下肢をしっかりとキールの手が押さえ付ける。拘束されるのもエッチの演出なのだ。舌は軽やかに滑って万遍なく回る。花芯に触れると、さらに美味しそうに音を立て味わい尽くす。
「あんあん……気持ちいい……そ、そんなに……食べ……ないで」
弱々しくされて声に抑揚が出ない。
「……千景、自分だけ快感に酔うなって」
「あんっ?」
さっきも似たような事を言われた……よ……ね?
「オレにも気持ち良い事してよ?」
――え?
キールはサッと私の躯を起こし、入れ替わるようにして自分の躯を倒す。
「このまま尻をオレの顔の方に向けて跨ってきてよ」
「え? だってそれって……」
「いいからやれって」
少し強い語気で言われた私はビクついた。言われた通りキールの上に跨り、お尻をキールの顔の方へ、すなわち秘所を押し付ける形となる。は、恥ずかしいよぉ……。私が俯いて硬直していた。すると、下からキールがまた注文をつけてくる。
「千景、躯を前に屈んでよ」
「え? な、なんで?」
「早く前に倒せって」
反射的に私が躯を前に倒し始めると、いきなりお尻の付け根をガシッとキールの両腕が固定してきた。な、なに!? ……ハッ! 目の前にキールのご立派な雄芯が「こんにちは」をしている? ……って、え? こ、こ、こ、これってぇええええ!?
「千景、オレにも奉仕してくれよ。互いに奉仕し合おう」