第九十五話「言葉責めの前戯」




 淫らな言葉なのに、期待してしまう自分がいる。私は無意識の内に瞼を開いて、キールの厭らしく動いている指を見遣る。ニ本の指が奥まで入っては抜かれを繰り返されていて、目が離せずにいた。

「やぁぁん、はぁぁん、やん、あん、んぁぁん」

 奥から抉るように打ち突けられる。その度に漏れるグチュヌチュとした水音は酸素を求める私の喘ぎ声と共に響いていた。

「すげー音」
「やだぁ、恥ずかしいよぉ」
「ここ好きだろ?」
「ふぁぁん! そこダメだよぉ」

 第ニ関節まで入った指を手前へと曲げられる。ざらつきのあるそこは私の最も弱い場所で、容赦なく衝撃をビリビリと与えられる。指の腹を付け、執拗に擦り回されていた。

「んっ、んんぁ! あんあん、はぁぁん、やぁぁん!」
「気持ちいい?」
「やぁぁん!」

 キールから甘ったるい声で問われる。私のこの鼻にかかった声で丸わかりの筈なのに。

「答えろって」

 さっきとは打って変わった低い声で言われ躯が怯む。

「き、気持ち……いい」
「どのくらい?」
「す、凄く……気持ち……いい……あん、強くはダメェ」
「もっとされたい?」
「う、うん。で……も……もう蕩けちゃう…からダメだよぉ」

 私は恍惚に滲んだ瞳で訴える。でも……。

「蕩けていいよ」

 行為が緩む事はなく、むしろより激しさが増す。

「ふぁぁん! そんな……に……掻き……乱し……ちゃ壊れちゃうよぉ」
「もっと声聞かせて? そしたらちゃんとイカせてやるよ」
「やぁん、ん、んあ! あん、あん、あぁぁん」

 キールの言葉に応えようと、勝手に嬌声が上がっていく。淫猥に鳴り響く蜜音も興奮も高まっていき、頭の中はドロドロに蕩けていた。そして快感にどっぷりと浸かっているせいか、体勢を変えられていた事に気付かなかった。

 いつの間にか躯がベッドに沈められていて、屈折して立てられた膝が左右に大きく開いていた。開ききっている恥ずかしい場所もキールには丸見で、彼はそこをしっかりと凝視していた。

「だいぶパックリ開けてんな。すげービショビショに濡らしてヒクついているし、挿れたら食い千切られそうだな」
「や、やぁ!」

 わざわざ秘所の状態を説明されて、羞恥心を煽られる。

「でも欲しがってるしな。応えてやんないと」

 キールは指で花芯の皮をひん剥き、そこに綺麗な顔を埋め込んで舌を使って舐め上げる。

「ひゃぁあ」

 さらに指で弱い部分を責め上げる。舌と指の同時責めだ。

「ダ、ダメェ、同時に責めちゃ!」

 舌は縦横無尽に動いてはグリグリと押し潰すように捏ねくり回り、間髪入れずに責めてくる。

「やぁぁん! ダメだってぇ!」

 どんどん重なっていく刺激に私は顔をフルフルと振るけれど、動きは加速するだけだった。

「ふぁぁぁ! やぁんっ、あん、あぁんっ」

 もう頭がおかしくなるよぉ。どうしようもない愉悦が何度も波打ち、脳天まで昇り詰めてくる。

「イキそう?」
「あぁん、イッちゃうよぉ!」
「声可愛いね。もっともっと啼かせたい」
「やぁぁん!」
「こうやって突いたり、撫で回したりする度にエロイ声上げてくれて、堪んないんだって。ずっと弄りたくなる」

 容赦ない言葉に私は恥ずかしさのあまり身を引きそうになったが、キールからしっかりと脚を押さえ付けられていた。そこに花芯を口内に含まれて吸い上げられた。

「あぁぁん、それはダメだよぉ」

 ビリビリと奔流が押し寄せてきた。ただでさえイキそうなのに弱点を責めてくる。躯を大きく飛び跳ねて反応する私に、キールは何度も吸い上げた。

「やぁぁん! ダメなのにぃ、こ、壊れちゃうよぉ!」
「じゃぁ、やめていいの?」

 またしても意地悪に問われる。どうしてわかっている事を訊いてくるの? 私はまなじりに涙を滲ませて答える。

「ダ、ダメ!」
「どっち?」
「や、やめないで、続けて、んぁぁん、やぁぁっ」
「どうして欲しいの?」
「やんっ、わかってるじゃん!」

 言葉責めは執拗に続く。

「わかんないって。だからオマエの口から言えって」
「やだぁ、は、恥ずかしいもんっ」
「早く言わないとやめるぞ」
「ど……うして……意地悪……ばっか……言うの?」
「やめていいの?」
「ちゃんとイカせて! 早くキールのが欲しいよぉ!」
「いいよ、あげるよ。でもまだイクなよ」

 生殺しの言葉をかけたキールは私の胸の突起を摘んで、乳房全体を揉みしだく。もう片方の手は秘所の弱い部分を舌は花芯を責め立てる。

「やぁぁん!」

 私は快楽の波に呑み込まれてしまい、脳内が芯から真っ白となった。

「はぁぁん、あん、あん、あぁぁん、き、気持ち……いい、あん、あん、あぁぁん、あぁぁん! もうダメェ、イキそうだよぉ!」

 グチュグチュヌチュヌチュと凄絶な蜜音が私の甲高い声と重なって響き渡る。行為はとどまらず、とうとう快楽が脳の髄まで到達する。

「んあぁあんっ!」

 私はガクガクッと激しい痙攣を引き起こし、快楽の極致へと達してしまった。

「ふぁぁ、はぁはぁ、はぁん、はぁはぁ」

 グッテリと力が抜け落ち、私はその場に倒れ込んで肩で息をする。キールは秘所から顔を上げると、私の髪を優しく撫で始めた。頭を撫でらているのはとても心地良い。

「大丈夫か? ちょっとやり過ぎたかな?」

 や、やり過ぎだよ! 行為も言葉も。ちょいと文句を言いたかったけど、脱力感が半端なくて言えなかった。

「でも気持ち良さそうだったし、達したからいいよな」

 おい、勝手に人を満足させた気になるなよな! お主の自己満だぞって突っ込みたかったけど、喜色満面を向けられちゃなにも言えないよ。

「千景」
「?」

 キールはフッと真顔になった。

「もう挿れていいか? 今日はもう前戯にゆっくり時間かける余裕がない。今すぐにぶち込みたい」
「!」

 キールは欲望を含んだ顔でストレートな気持ちをぶつけてきた。そして私の有無を訊く前に、既に寝衣を脱ぎ始めてしまったではないか! 素早く脱ぎ終えてしまい、全裸の姿で私の前へと屈み込んで来た。





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