第四十七話「お仕置きという名の調教」
「んあっ」
「なんだよ? もう随分と濡れてんな。仕置きをされてるって自覚あるのか? 気持ち良くなられちゃ、仕置きにならないんだけど?」
「か、感じてないよ」
私は嘘をついた。乱暴に嬲られていたけど、視界に入る行為に感化され、躯中に快楽が回って、自分でも濡れてきていたのがわかっていた。でも感じて濡れているのが、キールに知られたら具合悪くて、正直に言えなかった。
「じゃぁ、なんで濡らしてんだよ?」
「そ、それは生理現象で女性は身を守ろうとして、出ちゃう時もあるんだよ」
咄嗟に答えた内容は実際にある事だった。感じていなくても身を守る為、生理的に濡れる事はある。
「へー、じゃぁ、しっかり仕置きが出来るな」
「え?」
キールは突然花びらを押し開いて、ズンッと指の一本を深くに沈めた。
「ふあぁっ、い、痛い」
まだ十分に湿っていなかった為、奥への侵入は激痛が走り、私は顔を歪めた。すると、指は引き抜かれ、今度は優しく花びらが揉まれる。さっきとは違って甘やかな快楽が流れていた。
「はぁぁん、あっ、あぁん」
自然と蕩ける声が零れてしまう。それから指は花芯を下から大きく擦り上げた。
「はぁぁんっ」
電流が迸って躯はしなり、そのまま私は流れるようにキールへと躯を預けた。それによって握っていたスカートの裾を下ろしてしまい、しかも体勢が崩れてキールにもたれてしまったから、さぞ怒られるかと思っていたけれど、キールはそんな素振りを見せずに、私を抱えて執拗に花芯を弄っていた。
「あん、あん、あぁん……やん、はぁぁん」
花芯の皮をひん剥かれて摘ままれ、擦り上げかたと思えば、左右に揺さぶられたり、捏ねくり回されたりと、潤いに溢れ出てきた蜜を秘所全体に纏わりつかす。そして潤骨油でふやけてきた花びらを、再び指が割り、奥へ奥へと沈んで行った。まずは一本入り、
「ふあぁぁん」
「随分と気持ち良さそうだな。やっぱり仕置きだと思ってないだろ?」
「んぁ! わ、わかっ……てるよおぉ、んぁああっ」
間もなくしてニ本目の指が沈み、重圧感に押されて息遣いが荒くなる。ニ本の指は往復を繰り返し、突かれる度にグチュリヂュプリと音が洩らしていた。
「んあっ、やぁん、はぁぁん、あんっ」
「痛いって言ってた時は仕置きの意味をわかっていると思ってたのに、いつの間にか厭らしい音出してさ、反省が見えないんだって。オマエ乱暴にされた方が性的快感なんじゃね? 相当な性虐淫乱症だよな?」
「ち、違……う……もん」
キールの言葉責めに、カァーと熱が躯を支配する。そして再びニ本の指が第二間接まで沈むと、手前へグイッと曲げられる。行き届いた場所をすぐに擦り立てられ、振動を与えられる。そこは私が最も弱い場所だった。
一段と嬌声が上がり、否定した言葉も虚しく、私は快楽に蕩けそうになる。躯がビクンビクンッと飛び跳ね、キールの首に回している腕に力を込める。
「ひゃっ! あん、あん、んあぁぁん、やぁぁん」
「さっきから締め付けてばっかだな。咥え込まれて指が食い千切られそうだよ。少しぐらい緩めろよっ」
「し、して……ないよぉ」
またキツイ強い口調で注意をされてしまい、視界が涙で霞み始める。指の動きは容赦なく私の弱点を責め続けていた。指の腹をつけたままグリグリと回される上に、空いた親指が花芯を弄り、頭の中が真っ白に塗り潰される。
グチュグチュヌチュヌチュと潤う厭らしい音と、自分の鼻にかかった甘ったるい声が頻りなしに部屋中へ響き渡っていた。
「あぁぁん、いやぁぁ、あん、あん、あぁぁん」
「言ってもさらに締め付けてきやがって。ほら、イキそうになってんじゃねーよ」
「そん……なこ……と……言われ……ても、だってキールが」
「さっきから口答えばっか言ってんなよっ」
弱いニヵ所を同時に、しかも半ば乱暴に激しく責め立てられる。
「あん、あんっ……んぁぁ、はん……あぁぁん、いやぁぁんダ……ダダメェダ……ダやぁああん」
高波に呑まれてしまうと、秘所がキュゥと引き締まった、その瞬間! ガクンッガクンッ! と、躯全体が痙攣を起こし、私はエクスタシーへと至った。
「はぁぁん、あん、はぁ、はぁはぁダダ……はぁダダ……はぁ」
すっかりと力が抜け落ち、グッタリとなってキールにもたれ、私は酸素を求める。勝手に達してしまって、きっとキールは怒っている筈だ。私はビクビクとしながら、キールの言葉を待った。でも彼はなにも言わず、代わりにギュッと私を抱き寄せていた。
「……?」
それから私の髪をまるで愛おしむように優しく撫で始め、柔らかな声で語り出す。
「人の意識の世界で行われる試練は非常に厳酷だと言われている。あまりの非道な内容に狂気へと陥る者もいる。オレも過去に一度経験をした事がある。今でもほんの少し思い出すだけでも震え上がる。それをオマエはよく逃げ出さずに乗り越えられたな」
「それは私のせいでキールを死なせたくなかったし、それに王にもシャルトにも、約束をしたんだ」
「約束?」
「自分の命に代えても、キールを助けるって」
「………。オマエ意外と大した女だったんだな」
「なんだ、意外とは! 私は初めから大した女だぞ!」
「ハハッ。……千景」
「なに?」
「感謝している、有難う」
キールの腕に力が込められ、その温もりに私はおのずと涙が頬に伝った。心の底から湧き上がる安堵の涙だった。
「本当に良かったぁ」
無事にキールが眠りから覚めて、本当に本当に良かった。あのまま目を覚まさず、死んでしまっていたらと思うと、気がおかしくなりそうだった。悲しさに押し潰されて、心が死んでしまいそうだった。
私はキールに応えるようにギュッと躯をより強く重ねた。ドクンッとドクンッと感じるキールの心臓の音がなにより彼が生きていてくれているという安心だった。
「もうベッドに入れよ」
「うん」
言われて私はキールから離れ、ベッドへと入る。ゆっくりと寝よう。キールも相当疲れているだろうし。………しかし、その考えは大いに崩れ落ちた。何故なら眠りにつこうとした私のスカートの裾を再びキールがたくし上げてきたからだ。
「なっ、なにしてんだよ!」
私は心底信じられんという奇異の眼差しをキールに向けて言う。
「なにって仕事まであと数時間はある。それまでにしっかり仕置きをしておかないと
「お仕置きはさっきので終わったんだろ!」
「誰が終わったなんて言ったんだよ? そう簡単に終わらせられるモンじゃないだろ? 仕置きというか、オマエにはしっかりと調教しておかないとな」
な、なんという事だ! さっきまでのイイムードが一気に興醒めし、青ざめへと変わる。そして私はあっちゅー間にすっぽんぽんにされ、
「や、やぁぁん、や、やめてよぉ、あん、あぁんっ」
キールの仕事の時間を迎えるまでに、たっぷりとお仕置きという名の調教が行われたのであった。