Please8「甘い蜜は溢れ続け」




 ここでアクバール様はいつものニッとした余裕のある表情に戻ってしまう。

「あんっ、あぁんっ」

 さっきの散々の行為で秘所に熱が籠ってしまっていた。軽く擦られるだけでも、躯がくねってしまう。下肢をモジモジとさせている私に気付いたアクバール様はサッと私のショーツを脱ぎ取る。なんて手際がいいのだろう、やっぱり手馴れているのだろうか?

 引き寄らされ、寝台の上へと躯を倒されそうになった。でも今日はこのまま彼に主導権を握らせるわけにはいかない。私には最後の仕上げをしなければならないのだ。そして魔法使いから言われた二つ目の呪解方法を思い返す。

 ――貴女が上位となって彼を溺れさせなさい。

 これをやってやっと完全に呪いが解かれるのだ。私は覆い被って来るアクバール様へ手を添えて制止をかける。

「ま、待って下さい」
「なんだ、また? 今度は別の奉仕でもする気か?」
「そうです」

 サラリと答えた私に、アクバール様の動きが止まる。きっと彼は冗談で聞いたのに、私が躊躇いもせず、うべなって驚かれたのだろう。もう少しで呪いが解かれる事を目前としている私は本気だ。

「へー」

 感心しているのか、アクバール様の笑みの意味を考えると怖い。それから彼は私の夜着に手を掛ける。

「な、なんですか?」
「オマエも脱げ。その方が挿れ易いだろう?」
「……っ」

 彼の美しい顔には似合わず、卑猥な事を平然と言うものだから、今度はこちらが目を剥く。声の発せられなかった頃の彼の紳士さは何処にいったのだろうか、本当に! パパッと夜着を剥ぎ取られ、私はアクバール様と同じく一糸纏わぬ姿を露わにした。

 ――そ、それにしても……。

 自分が上位になるって、どんなんだろうか? 魔法使いはああだこうだと言っていたけど、本当にそんな体位があるのかと、私は冷めた目をして彼の説明を聞いていた。今考えれば、聖域であんな卑猥事を熱弁する魔法使いって……。

「オレはどうしたらいいんだ?」
「うっ……」

 アクバール様に促され、私は言葉につかえた。話を聞いているのと実際は雲泥の差がある。促されてもどう答えたらいいのか。彼は私の出所を見ているのかもしれない。私は必死になって記憶を辿って思い出す。

「そ、そしたら寝台の上で仰向けになって下さい」
「分かった」

 彼は私の言葉通り、素直に寝台の上で仰向けとなる。うー、立派に屹立している雄芯が妙に毒々しく目に焼き付いてしまう。アレを今から自分で挿れるのかと思うと、フラリと目眩に襲われそうとなっていた。そこをなんとか気丈を保ち、私も寝台へと入る。

「し、失礼します」

 緊張から上擦った声をして言葉をかける。

 ――う~やっぱ無理ぃ。

 だってこれから足を大きく跨いで目の前の雄芯これを挿れなきゃならないなんて。そもそもこんな大きいものが入るのかな? いや、いつもアクバールから挿入されているから入るのか。うーん、でも見た感じ入らないよね?

 考えれば考えるほど、躊躇いが強くなっていく。ここで怯んでいる場合ではないんだけど、これからしようとしている行為があまりにも未知過ぎて、戸惑うなという方が無理だ。

 ――あぁ~本当にどうしよう。

 そんな私の迷いの迷いが露骨に表情へと現れていたのだろう。

「どうした? 怖気づいているのか?」
「ち、違います!」

 アクバール様から悟られてしまい、動揺した私は思い切って彼の躯へと跨る。訳も分からず、彼の腹部に手を置き、出来るだけ呼吸を落ち着かせ、ゆっくりゆっくりと腰を落としていく。とはいえ、心臓はバクバクと爆音を上げていて、今にも破裂しそうだ。

 ――うぅ~やっぱイマイチ穴の位置が分からない。

 私は顔を顰めながら的確な位置を探る。なかなか上手く嵌められずにいたのだが、結合部に雄芯が触れる度に甘美な痺れが回っていた。

「ふぁっ、あん」

 秘所が湿ってから満たされない時間が長く、焦らされている感覚で躯が過敏に反応してしまっていた。それが却って満たされたいと欲望を掻き立て、私はグッグッと雄芯を無理に押し込むようにして必死になる。

「あぁっん!」

 なかなか沈ませられない私を見兼ねたアクバール様が痺れを切らしたのか、いきなり雄芯を下から一気に内奥へと突き上げられた。予想していなかった事に私は躯を大きくしならせる。

「ほれ、奉仕してくれるんだろう?」
「はぁん、あんっ」

 小刻みに揺らされ、快楽を与えて早くしろと煽られているのが分かる。私は項垂うなだれていたが、再びアクバール様の腹部に手を添え体勢を整える。馬の上でもないのに、足を大きく広げて跨り、雄芯を咥え込んでいる姿はなんて厭らしいのだろう。

 それでも今はやるしかない。私達それぞれの未来の為に、呪いを解かなければならないのだ。目的を思い出した私は気合いを入れ直して、ゆっくりと腰を上下に連動させる。ズンズンッと質量の圧力に一瞬グッと息が詰まるが、すぐに鼻にかかった甘い声が出始める。

「あんっ、やぁんっ……」

 繋がって間もないのに、既にグチュヌチュとお互いの濃厚な蜜が混ざり合う音が響く。それはなんて羞恥心を刺激するのだろうか。そして突く度に潤骨油が増していき、さらに淫猥な音を響かせていた。

 始めは慣れないせいか単調な動きであったけれど、その内にどんどん快楽を得たいという欲に芽生え、縦横無尽に腰を揺らし、無我夢中で踊り続けた。本当に気持ちいい。こんな淫らな事を自分からやっているのかと思うと、妙な興奮を覚える。

「やぁっ、はぁあんっ、あんあん」
「はぁはぁ……」

 ふと、アクバール様の表情を覗いてみれば、彼もまた今までに見せた事のない艶めく姿となっていて、甘い吐息から愉悦に浸っているのが伝わる。それにキュゥと自分の胸の内と秘所が熱くなるのを感じる。

「くっ、レネット……締め付けるな」
「こ、故意……では……ありま……せんっ」

 無意識の内にアクバール様の雄芯を締め付けてしまったらしい。でも彼だってどんどん雄芯を膨張させ、今は灼熱の塊となって苦しいぐらいの重圧感を突き上げてきていた。

「えっ、ひゃぁあんっ!」

 アクバール様は私の返しが口答えだと思って癪に障ったのか、下から私の双丘をたぐり寄せ、意のままに翻弄させる。それだけじゃない。花芯も指で刺激されていた。ただでさえ、雄芯が動くだけで花芯は擦れ、頭がおかしくなりそうとなっているのに、これ以上の快楽は無理!

 甲高い嬌声を上げ続けていた私の理性は飛んでしまい、快楽に身を委ねる。結合部に目を向ければ、信じられないぐらい蜜が滴っており、シーツの湿り気がとても生々しかった。

 もう何がなんだか分らない。思考さえ奪われるような快感が躯中へと駆け巡り、頭と心臓が破裂寸前となる。このままでは私は壊れてしまう。もう達してしまいたいと最後の欲望が生じていた。

 それがアクバール様にも伝わったのか、それとも彼も同じ気持ちだったのか分からないけれど、突然にパンパンと激しく穿ち始められる。それによってバランスを崩した私からアクバール様の手が離れる。代わりに穿ちに合わせて躯は大きくしなり、双丘が乱舞していた。

「はあぁんっ、あぁんっ、もう……」

 ブワッと何かが頭の芯まで奔流してきた。もう達する。そう気が付いた時、グッと膣内いっぱいに欲の塊に圧され、その直後、熱い精の飛沫が吐き出された。

「くっ」
「ふっぁああんっ!」

 堪えられず弾けた声と共に、私はへたれ込むようにしてアクバール様へと躯を預けた。

「「はぁはぁはぁはぁ……」」

 お互いが酸欠状態となって、せいを求めるように酸素を貪る。脱力感が半端なかった。目眩がしたように頭の中がクラクラとする。だけど、繋がったままの状態が幸福感に満たされていた。

 同時に離れ難い気持ちとなっていたが、本来の目的を考えれば、今日のこれが最後である事を思い出す。それが妙に侘しさを感じるのは何故だろうか。預けている躯からアクバール様の温もりが、熱が心地好いから、本来の気持ちと異なっているのだろうか。

 ――私は今のアクバール様から離れたいんじゃなかったっけ?

 そうだ、彼の為にも自分の為にも、このまま一緒にいては駄目なんだ。

 ――きちんと彼に伝えなければ……。





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