Birth86「一体感の幸福を得て」




 手を重ねられ、指がギュッと絡み合います。切に願いを吐露されるオールさんの姿はとても色づいており、私は膣内の奥から疼きがズクズクと波打ち、破裂しそうな緊張よりも彼をいち早く受け入れたい気持ちが勝ります。

 その思いがきちんと躯にも伝わったのでしょうか、気が付けばオールさんの熱い楔がズズッと私の中に沈み込んで来ました。不思議に負担もなく、とても自然に根本まで収まったのです。

―――無事に受け入れられたのですね。

 私はホッと胸を撫で下ろしました。

―――やっと一つになれました。

 躯全体から歓喜に満ち溢れます。繋がった部分がとても心地好い温かさなのです。

「全部入りました。有難うございます」

 そうお礼を下さったオールさんからも、嬉しさが零れ落ちるような笑みが広がって、さらに私の疼きはズクンズクンと深まり、繋がった結合部がキュキュッと引き締まったように感じられました。

「煽られているのですか?」
「え?」

 思いも寄らぬ事を問われて私は目を剥きます。ど、どういう意味で…?もしかして今の締め付けが、オールさんにそう思わせてしまったのでしょうか。

「そ、そのような事は…」
「今、沙都様の中が僅かに蠢いていらっしゃいました」
「!」

 い、いきなり言葉責めでしょうか!オールさんにしては意外にも意外です。

「き、気のせいですっ」

 微妙に私自身も感じてはおりましたが、恥ずかしさを隠す為、咄嗟に嘘を申し上げてしまいました。あわふためく私の姿を目にしたオールさんはフッと先程とは異なる笑みを覗かせます。こ、これは完全に私をからかいましたね?的な笑みですよ!

「私としては繋がったまま暫く悦に浸りたいと思っておりましたが、それでは沙都様はご満足出来そうもありませんね」
「え?」

 き、気のせいでしょうか?オールさんがとても意味ありげに微笑んで見えますのは?そ、それに私が満足出来ないなどと、そのような事…。

「ま、満足が出来ないなど、し、暫くこのままでも構いませんよ?」

 あ~変にどもってしまい、真実味が欠けるではありませんか!

「ご無理をされずに。また締められましたし」
「!」

 今、私は締め付けたのでしょうか!自分では全く気が付きませんでしたよ!笑みを深めるオールさんはとても嬉しそうではありますが。

「では動いていきます」
「は、はい」

 羞恥に身を置いている間にも、事が進められていきます。オールさんは私の膝に手を添えて、膣内に収まっている楔をゆっくりと引き、そして再び子宮口へと向かって優しく圧力をかけていきます。

「あぁっ」

 一目で分かる心地好さそう気な吐息が零れました。

「ふ…っあぁ、あんっ」

 愛撫の時と同様、時間をかけて一定のリズムで抽挿が繰り返されます。溢れる程に潤う膣内で楔はたっぷりと水気に包まれ、差し抜きされて擦れる度に水気が泡立ち、快感を生み出します。

 少し抵抗があったのは初めだけで、今、楔は膣内に吸い寄せられるようにして沈んで密着しています。初めてとは思えない程しっかりとです。それはどんどん私がオールさんに色づけられているのですね。

 またこのフワフワ感がたまりません。指や舌では届かない最奥にまで、しっかりと染み渡り、この愉悦感は魂まで蕩かされそうな、ある意味狂気とも言え、自身を忘れてしまいそうになります。

 私は羞恥と酔いしれによって瞼を閉じておりますが、ズンズンと差し抜きされる様子が頭の中では鮮明に映し出されており、形づけるまでの快感が滲み溢れ出ていたのです。あまりの愉悦感に肩を震わせるように、躯が揺れておりました。

「沙都は悦ばれますと中が蠢くのですね」
「はぁ…ん?」

―――い、今のオールさんの言葉は?

 喘ぎ声を洩らしつつも、私は何とも言えぬ恥じらいに見舞われます。先程からの間に入る言葉責めは、やはり私の気のせいではなさそうです。

「あんっ、わ、私の中…ではなく」

 オールさんの方が蠢いているのでは?と、言葉を続けようとしたところ、

「ふあっ」

 キュッと快感が募り、躯が仰け反りそうになります。

「また引き締められましたね」

 どうやらそれがまたオールさんの楔を締め付けてしまったようです。こう何度もタイミング良く引き締めてしまえば、違うと言えなくなるではありませんか。そしてオールさんはとてもご満悦そうです。

「い…意地悪…ですよ」

 この蕩けるような陶酔感を与えて、尚も言葉責めをするなど、彼の意外な一面を発見しました。

「失礼をしました。放さぬようにしっかりと甘えて来て下さるようで嬉しく」

―――その言い方もずるいです。

 そう言われてしまえば、何も言えなくなるではありませんか。

「徐々に沙都様の中が形づいてきましたね」

 形づいてきたというのはオールさんの楔に合わせて彼色に染まってきているという事でしょうか。それがとても心地好い響きに聞こえます。

「気持ち良いですか、沙都様?」
「はぁんっ、んあっ、あんっ」

 言葉にしなくても、このよがり声が答えています。

「もっと気持ち良くなって下さいませ」
「ふっ…ぁあ」

 突然、オールさんは大きな手全体で私の胸を包み、腫れたように膨らんでいる蕾を摘んで、形を尖らせるようにして揉みしだきます。

「んあっ」

 今までとは異なった強い刺激に、電撃が突き抜けるような快感に襲われます。さらに腰の動きを速められ、互いの情液の泡立つ音がより明確に聞こえてくるようになりました。

「あぅっ、はぁんっ、ダ、ダメ…です」
「どうして駄目なのですか?」

―――うぅ、素で訊いていらっしゃるのですか。

 それともまた意地悪をされているのでしょうか。チラッと視線を見上げますと、オールさんは艶めかしい息遣いをされていますが、私とは異なり、まだまだ綽然とされているご様子です。

―――私はこんなにも、いっぱいいっぱいですのに。

 先程から何処となく感じておりましたが、オールさんはロールキャベツ男子かもしれません。普段は草食系に見えますが、実は隠れた肉食系です。

「また沙都様の中が強く蠢きましたね。下のお口が答えて下さいました」
「!」

 まさに的中です!再び都合良く言葉責めをされてしまいました!お答えをしておりませんから!と、突っ込みを入れようとした時です。

「ひゃっあ」

 躯が弾けるように跳ね上がりました。躯を落とされたオールさんは私の胸の飾りに唇を挟んで甘噛みをされたのです。強めでないとはいえ、壊れ物のように敏感となっている躯には十分な刺激が駆け抜けました。

 私は甘すぎる痺れに耐え切れず、思わずオールさんの躯を押し出そうとしましたが、赤く色づいた蕾をちゅぅちゅぅと音を立てて挟み込まれ、抗う力を失わされます。その間も熱塊は私の膣内で脈動を打って熱を注ぎ込んでいました。

「あんっ、んあっ、はぁあんっ」

 押さえ込まれた私は狩りを続けられ、ひたすら嬌声を上げておりました。逃げ場を求める隙はありません。この甘美な快感に痺れ続けていれば、自身の存在すら忘れてしまいまそうになります。

 ですが、触れられればられる程、比例してこの快感から離れたくないと思うのです。官能を見事に引き出されてしまいました。その淫らな思いがオールさんに伝わってしまったのでしょうか。

「沙都様、あまり煽らないで下さいませ」
「んあっ…?」
「何度も引き締められるので、理性ごと私は持って行かれそうです」

 私の胸元から離れ、熱く息を乱して、そうおっしゃるオールさんの妖美な姿に、私の方の理性が吹き飛びました。

―――オールさんが欲しいです。もっともっと感じていたいです。

 咄嗟にそう思った時、オールさんが息をグッと息を詰められ、そして反射的にとでも言うように、熱塊を引き抜かれました。

「はぁ…はぁ」

 彼は屈んで私を見下ろす姿勢で、乱れた息を整然とされます。私は繋がりが切れた事に、とても切なかったのですが、冷静沈着なオールさんの煽情的な姿を目にするだけでも、快楽を得ておりました。

「すぐに挿れますから。あのまま繋がっていては本当に持って行かれそうでしたので、最後の理性で一度、離させて頂きました」
「はぁ…は…離れられなくても」

 良かったのにと、私は心の底から思いました。

「そう煽られてしまいますと、今度こそ引き戻せませんよ?」

 オールさんの表情はとても真剣です。彼の言葉がどういう意味を示しているのか分からない訳ではありません。ですが…。

「そ、それでも…繋がっていたい…と思います」

 もう離れている方が不安になります。

「今はオールさんを躯全体で感じていたいのです」

 そう私は正直な気持ちをお伝えしました。すると、彼は愛おしむように表情の熱を深め、私を見つめ返します。

「では遠慮せずに行かせて頂きますね」
「は、はい」

 私が答えた後、オールさんは私の内腿に手を添え、左右に足を開きます。反り立つ熱塊を宛がい、そちらを徐々おもむろに収めて行かれました。





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