Birth85「繋がりを迎える時」
「あぁ…んっ」
喉奥から込み上げて来る甘い嬌声は溢れるようにして熱い吐息と共に零れます。舌は輪郭に重ね合わせるようにして着実に這わせ、甘い熱を秘めた舌は指の動きとは異なり、またとんでもない陶酔を生んで、私の躯中へと浸透していきます。
唇に口づける時のように秘唇へ触れる時はやおらに吸い付かれ、変わって蜜の入り口を緩やかに割って舌を滑り込ませられれば、舌を絡まされた時のように情熱的な蹂躙となって蜜が泡立ち、水音を響かせます。
何処に舌が触れられても躯の芯までもが痺れ、躯は舞うように揺れ動いて、汗でしとった全身は自分の躯とは思い難い色香を放っておりました。それはすべてオールさんの舌が生む色艶なのです。
満ち溢れる蜜は舌が弾けば水音を奏で続け、潤いが潤いを生じて秘部は確実に受け入れる準備を整えておりました。この先の繋がりを考えれば、私は何とも言えぬ堪らない高揚感に包まれます。
「あんっはぁんっ」
何処までも昇り詰めていかれる恐ろしい快感に身は踊りますが、ふと意識がある事を気に留めておりました。一番敏感な場所にまだ舌が触れられておらず、もどかしく思ってしまう自分がいたのです。
いつから私はこんなに欲深くなってしまったのでしょうか。今のままでも間もなく達せられそうなのですが、求める場所に触れて欲しくて私は独りでに身を捩り、喘ぎ声にも堪える様子が混ざります。
「沙都様?」
私の微かな様子の変化にオールさんはさすがですね、気付かれました。唇を秘部から離されてしまい、私は名残惜しさに目の潤いが深まり、快感の余韻に浸ります。
「どうなされましたか?ご気分が宜しくありませんか?」
不安の色を滲ませ私を見下ろすオールさんに、私はすぐに顔を横へと振ります。
―――そんな筈ありません。
「沙都様?どうなさったのですか」
聞いてしまうのですね。とても答えづらい内容ではありませんか。ですが、今の息を荒げる自分の姿は欲情している獣と一緒です。そんな姿を見つめるオールさんも私以上に艶やかで、とても口にする事が出来ないと思っていた強請りが口元まで込み上げてきました。
「ふ、触れて欲しいのです。そ、その一番敏感な花芽に…」
顔の熱がオーバーヒートをした為、声が段々か細くなり、オールさんの耳にまで伝わったのか自信がありませんでしたが、彼はハッと息を切る様子を見せ、身動ぎされません。
―――ひ、引いてしまわれたのでしょうか。
私は変に欲を出した事を後悔します。しかし、その懸念は次の瞬間には吹き飛ばされます。
「ひゃっ」
突然にオールさんから両足首を手に掴まれ、足を高くして広げられますと、そのまま胸の横にまで持って行かれ、折り曲げられました。臀部が宙に浮き、露骨に晒された秘部がオールさんの顔の目の前にあります。思わぬ行動を起こされ、酷く動揺している間に事は起こります。
「あぁ!」
オールさんの舌がツンッと花芯を弾きました。籠っていた熱が一気に外へと吐き出され、驚愕した私は背が弓なりに跳ね上がりました。そして舌は繊細な動きをして、花芯の弾きを繰り返します。
「はぁんっ、あん…んあっ」
求めていた快楽がひっきりなしに押し寄せ、私の躯は悶えます。
「最後まで大事にと思っておりましたが、沙都様からお願いをされては頂く他ありませんね」
―――え?
「ふぁあんっ」
どうやら私はオールさんの本能をオンにしてしまったようです。花芯は軽やかな舌技で味尽くされていきます。ネットリ執拗に転がされ、かと思えば円を描くように舐られ、私は幾度も訪れる快感に仰け反り、虚ろな瞳をさせて天を仰ぎます。
そして今までとは違う雄々しい刺激と卑猥な光景であるのに美しさを感じさせるオールさんの妖美な姿に、私は性欲の虜に陥り、あられもない声を上げ続けます。そして焦らされる事もなく、確実に快楽の極致へと昇り詰めて行く躯は徐々に痙攣を起こしていきました。そこに…。
「ぢゅぅっ」
「ひゃぁあんっ」
突然、音を立てて花芯を吸われ、包皮さえていた花芽がいつの間にか素の姿となって、頭を擡げられていたのです。赤く濡れそぼった花芽はオールさんの唇に吸われながら舌を這われ続け、そして高まる愉悦と共に、
「あぁっ―――」
私は真っ白な世界へと誘われ、呆気なく達してしまいました。大きく打ち震えた躯と絶した嬌声を耳にしたオールさんは私の躯を優しく寝台の上へと戻します。
「はぁはぁはぁ…」
「大丈夫ですか、沙都様?」
少し罰が悪そうにされて私を覗くオールさんに、大丈夫ですと答えて安心をさせたいのですが、すぐに返事をする事が出来ません。痙攣を繰り返す躯が元に返ろうと必死に酸素を取り込もうとしておりました。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
暫くしてから躯は落ち着きを取り戻します。
「今は大丈夫ですよ」
笑みを含んで答えますと、オールさんも安堵の笑みを浮かべられました。それにしましても、溢れた蜜によって浸透したシーツが生々し過ぎます。このようになるまで愛撫し続けられたのですね。視覚からくる刺激に、またカッと躯が火照り始めました。
「沙都様…」
「は、はい」
ほんの少し意識が他へと向いていましたら、オールさんから名を呼ばれ、ドキリと心臓が音を立てます。声色がとても色づいた熱をもち、耳に直接囁かれたような痺れが走りました。
「そろそろ宜しいでしょうか」
「あ、あのオールさんは?」
このような事を口にしては、はしたないと思われるでしょうか。ただ私ばかり気持ち良くして頂いて、彼の方は満足をされていないのでないかと。
「気に留めて下さり、有難うございます。私の方は大丈夫ですから」
そう答えられたオールさんの表情は嘘をついているようには見えませんでした。私を満足させてオールさんも準備が出来たという事でしょうか。そう思えば、嬉しさで胸がキュゥと締め付けられます。
「では寝衣を脱ぎます」
「は、は、はい」
私らしくもなく口篭りました。宜しいですかというのは…勿論本番をされるという事ですよね。そうハッキリと意識しますと、躯が自分でも朱色に染まっていくのが分かります。そして私の返事にオールさんは寝衣を手早く脱がれていきました。
―――ギシッ。
寝台が軋む音が共にオールさんが私の前まで来られました。彼の職業が退魔師という事もあり、何処となく想像をしておりましたが、滑らかで美しい筋骨は逞しく精悍な体つきをされています。思っていた以上の肉体美で、オールさんのお綺麗な容色からは想像がつきませんね。
その雄々しさは打見しただけでも分かる男性器にも現れていました。あ、あちらが私の中に入るのでしょうか?という野暮な疑問は払拭し、私が食い入るように彼の肉体を魅入っておりますと、彼はそっと私の状態を起こして、私の夜着に手を掛けました。
そのままグッと裾を持ち上げられ、私は自然と腕を上へと上げ、夜着を脱ぎ易いようにしました。互いが一糸も纏わない姿となり、これこそ羞恥に煽り掻き立てられるところではありますが、早く繋がりたいという愛欲も抱いておりました。
サッと頬に手を触れられ、そっと口づけられますと、そのまま自然に背が寝台へと流れていきました。口づけでほんのりとした熱に浮かされていき、フッと唇が離されます。私の躯から離れて見下ろすオールさんの双眸がとても真剣で、これからの出来事を物語ります。
「お力を抜いて下さいませ」
「は、はい」
返事を確認したオールさんは私の内膝に手を添え、左右に大きく広げられました。
「…っ」
何度経験をしても、全面的に秘部を晒されるのは何とも言えぬ羞恥でなりません。それが桜色に火照っております躯に現れていました。そして熱くそそり立つ楔が私の花襞に添えられ、いよいよ来るのだと私は目を瞑って覚悟を決めました。その刹那、
「ふっぁあっ」
花襞が割られ、グチュッと卑猥な水音が弾きます。意を決していたとはいえ、楔がジワジワと花襞を拡張しながら膣内に沈み込んで行くと同時に私の息は押されていきます。私はゆっくりゆっくりと呼吸を整え、受け入れ易いように力を抜いていきました。
丁寧な愛撫によって作られた潤骨油に先端は抵抗なく受け入れる事が出来ましたが、それでも一定の場で動きは止まり、それ以上は沈んで来ようとはしません。どうされたのでしょうか。
「沙都様、どうかもう少しお力を…」
「ふ…あっ」
言われて力が入っていた事に気付きます。緊張からでしょうか。力が入った事によって無意識に抗ってしまったようです。
「どうか私を受け入れて下さいませ」