Birth47「甘やかな褒美」
「んっ…ふっ……んぅ」
室内に甘い吐息が幾度も零れ落ちていました。その吐息が空気と交われば、濃艶な色香となって室内へと広がっていきます。そして次第に空気が扇情的になっていくのです。息をつく間も許されぬ程の絶え間なく続く口づけに、私の意識は朦朧となりかけていました。
ですが、不思議と躯は逃れようとせず、相手の熱の籠っている舌を追い続けます。何度このような深い口づけを重ね、舌を絡めてきたのでしょうか…そう、アトラクト陛下と。
こちらの世界に訪れてから、毎夜陛下に抱かれ続け、当初はいくらお腹の御子を守る為といえ、愛を語らぬ間柄でこのような睦事に抵抗を感じていましたが、今はその時とは明らかに違った感情を抱いておりました。
寝台の上で私は陛下の腿に跨って腰を落とし、彼の首と後頭部に手を回して、口づけを交わしていました。吐息がいつの間にか唾液へと変わって零れ落ち、互いが温かい素肌を感じ合っていたのです。今日のこの時間は特別のように思えました。
あの「過酷な試練」を終えた後だからでしょうか。いつもと熱の入り方が異なっていたのです。今、ふと思い出すだけでも慄然となりますが、同時に達成感を迎えられた喜びもありました。それに最後のオールさんの素敵な笑顔が、ご褒美といったところでしょうか。あれは御馳走様レベルのものでした。
「今回の試練は非常に難易度が高いものでした。そちらを無事にクリアされ、私は貴女に感服致しました」
そして彼から始めてお褒めの言葉をもらえたのです。このような言葉、とても意外でした。清々しい快い気分を迎えられたところでしたが…その後が凄まじかったですねー。オールさんのエヴリィさんに対する限りなく冷たいの視線が、傍から見ていて憐れに思いました。
どうやら今回の試練の内容が事前の打ち合わせとだいぶ異なっていたようで、オールさんはかなりご立腹されていました。獣化になるのは納得の上だったようですが、問題はあの相手の魔獣ですね。
話し合いの時よりも遥かにレベルの高い魔獣であった為、思いがけない痛手を負ってしまったわけですね。あくまでもフリという事でしたので、当初は大きな傷を負う予定ではなかったそうです。
神官様やエヴリィさんからしては、より現実感を出す為、ハイレベルな魔獣を用意したそうですが、それをエヴリィさんがきちんとオールさんに説明していなかったようですね。彼曰く、退魔師のオールさんなら、大丈夫であろうと自己判断をしたようです。
ですが、あれは退魔師とはいえ、苦痛の闘いだったと思います。怪我の方も流血が酷く、いくら後で回復魔法をしてもらえるとはいえ、命懸けだったと思います。そんなオールさんの姿を見て、さすがにエヴリィさんも罰が悪そうにしていた訳ですね。
ですが、オールさんのご立腹な様子も一時的なものだったようで、宮殿へと戻る頃には全く気にしていない感じでした。彼は根に持たないサラッとした性格のようですね。一先ず、事が無事に終えられ、本当に安心しました。
さて宮殿に戻った私は今後がどうなるのかとても不安でした。帰る途中は神官様とエヴリィさんは、お二人だけで大事なお話をされていましたし、オールさんと私は疲労感で、会話をする気力がありませんでした。そして実際、宮殿へ戻るとすぐに、
「今日はもうごゆっくりとお休み下さいませ。その後の事はまた後日お話を致します」
と、エヴリィさんから伝えられました。なんだか拍子抜けしてしまい、張り詰めていた緊張が解け、より大きな疲労がグッと押し寄せてきました。自室へと戻った私はお風呂に入り、その後は死んだように深い眠りへと入りました…。
目が覚めたのは晩御飯の時間も過ぎた頃でした。どうやら食事の前にナンさんがお迎えに来られたようですが、私の返事がなかったので、そのまま休ませてくれたようです。悪い事してしまいましたね。
目が覚めてから寝台の上でボーとしておりましたが、暫くして使用人さんがお迎えに上がられました。私の臥し所は陛下の寝室ですからね。そして寝室で待っておりますと、間もなくして陛下がお戻りになりました。
彼は真っ先に私へと赴かれ、「今日はよく頑張った。其方を信じていたぞ」と、笑顔を満開にされ、おっしゃいました。それがまた甘い艶やかな笑顔であり、蕩かされそうになりましたよ。オールさんの笑顔といい、今日は二重に美味しい思いをしました。
それもあってか、今日はお腹いっぱいとなり、食事をしたい気持ちではありませんでしたが、なんせ私は妊パーですからね。陛下のお気遣いで部屋食のご用意を頂きました。お腹が満たされた頃には陛下が浴室から上がられて、共に晩酌をした後、例の甘い時間へと入ったのです。
「んあぁっ…」
膨らんだ風船が突然に割れたように発した嬌声。陛下から唇を離されてすぐに秘部へと手を伸ばされ、思わず声を上げてしまいました。先程まで濃厚な口づけにのめり込んでいただけあり、秘部はすっかりと潤いに溢れていたのです。
「先程から感じ取っていたが、やはり蜜が留め処なく溢れてきておったか」
「あぅ、お、おっしゃらないで下さい」
恐れ多くも陛下の素足に白濁した液を滴らせているなど、醜態そのものです。私は羞恥が込み上げるのと同時に、顔に熱が集中してしまい、陛下と視線を合わせずにおりました。
「そう恥ずかしがるでない。其方が素直に感じているという事ではないか」
「そ、それが恥ずかしい事なのです」
私と視線を合わせようと覗き込もうとされる陛下から、私は意地となって恥ずかしさを訴えます。
「其方は私に感じさせられるの事が恥ずかしいと言うのか?」
「そ、そういう意味では…んんぅっ」
私の思いとは別の意味で捉えられた陛下のお言葉を否定しようとしましたら、再び唇を塞がれてしまい、合わせて秘部の花芯を指で弾かれてしまいます。
「んっ、んぁ、んんぁっ」
こうやって否応なしに行為を進めるのが、ご都合主義者の陛下のやり方ではあるのですが、私の躯と思考は熱によって溶けていくチョコのように、みるみると蕩かされていくのです。そしてめくるめく快感はまるで多幸感に浸るような心地良さがあり、ここから離れたくないと思わせるのです。
これは快感へと絆し、羞恥さえどうでも良い事だと思わる陛下の策略ですね。それに完全に私は嵌っているのですから、自分の負けを認めざるを得ません。いえ、むしろこのような甘美感であれば、快い気持ちとなっています。陛下の魔性は恐ろしいものです。
「はぁん、あぁ、んっ」
口元を解放されたと思いきや、秘部を翻弄する指は変わらぬ動きをして、私に快楽を与え続けていました。
「まだ恥ずかしいと思っているのか?ここの蜜は私の指にドロリと纏わりついてきているが?」
「…っ」
またそう羞恥を煽る言葉を。陛下の一つ一つの言動や行動が私の躯を疼かせるのです。
―――もう…達したいです。
この滴っている蜜を目にすれば、躯が限界にきているのが分かります。陛下は必ず前戯をされますが、それは焦らしの時間でもありました。焦らされれば焦らされる程、欲情は膨らみ、猥雑な考えが湧き起こってくるのです。
―――もっと…強く…激しく…滅茶苦茶にして欲しいです!
カッと胸の中で爆発してしまい、私は自ら大胆な言葉を吐露してしまっていたのです。
「陛下…お願いです。もう下さい」
「私のが欲しくなったのか?」
「は、はい」
そうハッキリと言われてしまうと、それこそまた恥ずかしさに身を埋めてしまいたくなります。
「そうか。では其方が自分で挿れるが良い」
―――え?