Birth28「甘い罠に絆されて」
「沙都、こちらにおいで」
私は陛下の大きくしなやかな手に腕をしっかりと掴まれ、引き寄せられます。胸がドキリと音を立てた時には、陛下の懐にすっぽりと抱かれておりました。しかもですよ?
―――どういう事ですか、こちらは?
驚愕と共に目に刺激が打たれます。何故だか私は陛下の膝の上に向かい合わせで座らせられているのです。これはまさしく抱っこ座りというものではありませんか!私は幼児でもコアラでもありませんよ?
―――陛下は何を考えていらっしゃるのでしょうか。
問わなくても、おおよその見当がついており、私の鼓動は乱調子となって動揺を隠し切れません。このような至近距離で、めくるめく妖艶な微笑を讃える陛下に、直視出来る筈がありません。陛下はもう少しご自分の美をご理解するべきです。
「あの陛下、これは…」
あぁ~声が揺れていましたよ、動揺しているのが丸分かりです。
「其方との夜毎のスキンシップは大事な時間だ」
えぇ、おっしゃる通りです。お腹の御子がより健全に生まれるには陛下との交わりが大事なのは分かっておりますよ。ですが、本来そこには気持ちの触れ合いがあっての事ですからね。今の私と陛下の関係はそこまで深い訳ものではありません。
出来れば昨夜のような濡れ事は避けたいのですが。まずは陛下、お願いですから、その美顔の中にある美しき双眸で見つめられるのをお止め下さい。自分の意思と反する気持ちになるではありませんか。
その熱視線は乱調な鼓動に輪をかけ、私の頬を熟れたトマトのように赤くさせます。もしや陛下は敢えて私を熱っぽい気持ちにさせようとしているのではありませんよね?
大きく動揺しているものの、無駄に突っ込みを入れまくっている私の頬には奥ゆかしき笑みで見つめる陛下の大きな手が包み、そして額を重ねられます。
「昨夜は無理強いをさせた。今宵は優しく寵愛しよう」
陛下、ヤル事には変わりのないお言葉ですよね。そこに私の意思は…。
「んぅっ…」
突っ込み終える前に、私の唇は奪われておりました。重なり合う唇から微熱が渦巻き、何処からともなく躯が疼いてきます。それは昨夜の甘い余韻が舞い戻ってきたように思えました。
―――またしても私は…。
恋人以上がする行為に、後悔の念が生まれます。そんな思いを目の前にして、生々しいリップ音が洩れ始め、陛下の柔らかな唇の感触にくすぐられておりました。陛下はおっしゃった言葉の通り、優しく軽いスキンシップをされているようでした。これは本番前のイチャコラシップとも言えます。
「んっ、んっ…」
リズミカルな口づけによって生じる深い熱に絆されていきます。これをなんといえば良いのでしょうか。陛下に触れられてしまえば、まるで媚薬の効果のように躯は敏感となり、抵抗が失われていくのです。
私の力が弛緩されたのを見計らい、陛下は難なく舌を差し入れられます。舌は優しく掬われ、まろやかに包み込まれます。舌触りが心地好く、絡めば絡められる程、その感触は甘美となり、気が付けば自分から陛下の舌を追っておりました。
「んぅっぁ…」
熱によって蕩けた甘い声が零れると、ここからが発揮というように、舌の絡みが濃厚となり、いつしかクチュピチャと性感を刺激する唾液の音が鳴り始めます。ここまできてしまえば、昇り詰めたいという淫らな愛欲が生じてきました。
これでは結局、昨晩の出来事と二の舞を踏んでしまうではありませんか。自分ではもう少し理性に忠実だと思っておりましたが、それを覆すのが陛下です。陛下が恐ろしい媚薬そのものなのです。熱に浮かされながら舌で翻弄をされ、口づけに没頭しておりました。
「ふ…ぁっ」
軽く吸い立てるような口づけが下へ下へと落ち、私の肌を震わせていきます。一つ一つの口づけは印づけるように甘美で刺激的な感触です。それに酔いしれている内に、私は陛下と共に寝台へと落ちていきました。
なんという事でしょう。陛下は私を覆い被るような体勢となって、悠然たる様子で見つめていらっしゃいます。どうしましょう。既に陛下の中では出来上がっているようです。反対に私は不安げな表情をして見つめ返します。
―――どうか私の複雑な気持ちに気付いて下されば…。
「今、其方の面持ちと躯は熱を帯びているようだな」
え?私の表情は不安げではなくて恥じらいでいる、と?恍惚としている様子なのですか?それでは自分の思いとは逆効果ではありませんか!
「口づけだけで上気するとは其方は感じやすいのだな?」
お止め下さい!なんだかとても自分がふしだらな子に思えてくるではありませんか。
「私は別にそのような気持ちには…」
「そうか、では」
「あぅっ!」
「この湿り気はどう説明するのだ?」
私が素直に認めない事が陛下の気に障られたのか、狡猾な方法で私の淫らな気持ちを引き出そうとします。その方法とは私の夜着(ネグリジェ)の中に隠れる秘密の場所を指で擦って来られたのです。
「あっ…あぅ…あぁっ」
ショーツに隔てられ、直ではないにしろ、敏感な花芯に触れられると、躯が痺れたように震え上がります。
「どうした?説明はつかぬのか?」
「はぁん…あぁ…あん」
言い訳をしようにも擦る指の動きが速まり、熱い吐息と色気づいた声しか発せません。そんな私の様子を陛下はご満悦そうに見下ろしていらっしゃるのです。
「あぁ、そうだ。この潤いを帯びた唇に口づけるのを忘れていたな」
「え?」
―――い、今なんと?
嫌な予感が横切ります。案の上、次の瞬間には陛下の手が私のショーツをずらし、秘部の姿を露わにさせます。茂みは雨でしたったような水気を帯びており、これでは言い訳のしようがありません。
「あぁんっ」
そして秘部を弾かれるように擦られると、再びよがる声が零れます。今度は直に触れられている為、刺激が何倍も強く、私は酸素を求め続けます。
「こちらの唇も待ち望んでいたようだな。訴えているようにヒクついておる」
「あぅ…そ、そんな…事は…はぁあんっ!」
眼裏に眩むような一閃が走り、躯が大きく仰け反ります。私が何か言うものならば、それを阻止するように、陛下の唇が私の下の唇を塞いでくるのです。初めは小鳥が啄むように軽くされておりましたが、その内に片足を高く上げられ、開かれた花襞に舌が舐(ねぶ)ります。
「はぅんっ…あ…あぅ…あんっ」
陛下の生温かい舌はまるで羽のような優しいタッチをされ、なんとも言えぬ恍惚感を与えられます。その私の抗う様子がないと見た陛下は次に花襞を開き、さらに舌を潤いの境地へ落とされます。
舌は何かを探すように内部を舐り回っていました。動きは縦横無尽であり、まるで踊るように軽やかです。すっかりと色づけられた頃、ようやく舌の感触から解放をされます。
「はぁ…はぁ…はぁ」
「先程から探しておる其方の舌が一向に見つからぬ」
陛下はなんと妙な事をおっしゃるのでしょうか。下の唇に舌がある筈がありません。
「あぅっ」
「もう一度、丹念に探してみるか」
「はぁんっ…そこ…には…ありま…せ…いやぁんっ」
「おや、ここに姿を隠しておったか」
こことは花芯の皮を指でひん剥かれ、素の秘玉を目にした陛下は妖しげな笑みを覗かせ、はばかりなく、そこに舌を這わせて来られたのです。