Birth14「蜜中で生じる揺蕩い」




「はぁ…はぁはぁ」

 私は酸素が追い付かず、呼吸を乱しておりますが、そこには快感の余韻が含まれ、艶めかしい息遣いとなっています。目の前では陛下がご満悦な笑みを顔一面に広げられ、私の様子を見下ろしていらっしゃいます。

「どうやら達したようだな。もっとじっくりと愛撫をするつもりでいたが、私も限界だ。少々手荒にして悪いのだが、最後へと向かわせて貰おう」

―――え?

 ドクンと息もつかぬ程の衝撃が迸りました。「最後」というのは、まさか…繋がるという事でしょうか。ドクドクと速まる心臓の動きに、全身がバラバラに散りばめられそうになります。

 これ以上の行為へ進んではなりません。そう全身から訴えておるのですが、何故か躯は硬直として動かないのです。これでは陛下の行動を待っているように見えてしまいます。

 止めにかからなければなりません。なんとか躯を微動させた時でした。グイッと左足を大きく開かされ、再び秘部が空気に晒し出されてしまい、陛下の目に留まってしまいます。

「あっ…」

 羞恥芯に思わず短い叫びが洩れます。

「湧き出た泉から潤沢な光が放たれておるな」

 美しいお言葉を並べられても、所詮は私の秘部です!綺麗なものではありませんし、陛下がご無理をなさっているように見え、私には虚しさが広がります。

 陛下からしましたら、今までそのようなお言葉に相応しい美しき王妃様や以前にもお綺麗な方々を抱いていらっしゃったのでしょうから、自然であるのかもしれませんが、私には相応な言葉ではありません。

 突っ込みで気が緩んだ先に事は起きました。突如、ガッと鋭いもので貫かれたような衝撃が秘部の中で走り、私は声にならない声を上げます。

「…っ」

 一瞬の出来事に私は苦渋し、腹部に力が入ります。まさか不意を突かれ、陛下の長い指が私の中に入って来るとは油断をしておりました。事が進む前に止めようと思いましても、いつも陛下の方が上手で難航してしまいます。

「はぅ、はぁ、あぁ…」

 ずぶずぶと指の抽迭が始まりました。指とはいえ、ズッシリとした重圧に息の詰まりを感じます。陛下は指の動きを一心不乱となって目で追われていました。

「其方の此処に今すぐにでも、私の物を挿入したいのだが、思っていたよりも狭いようだ。しっかりと解しておかぬと、其方には負担となる」
「あぅんっ!」

 負担とは…。やはり陛下は繋がろうとされています。ですが、私はそれを承諾した覚えはありません。抗う気持ちはあるものの、律動的な指の抽迭に膣内は柔軟となっていき、圧迫も緩和され、次第に陶然とした気持ちが広がっていきます。

―――ヤバイです。これではまた流されてしまいます。

 ここで流されては今度こそ最後まで至ってしまいます。

「あ、あぁ、はぁん、へ、陛下…お…やめ」

 途切れ途切れにもなりつつも、私は声を絞り出して制止を試みますが、

「はぅうんっ」

 ぐぢゅっぬちゅっと抽迭は速まり、私の声は遮られ、代わりに艶気を含んだ吐息が洩れ続けます。いつの間にか膣内は潤いに満たされ、耳を震わす猥りがましい音が静寂とした室内に響くようになりました。

 揺蕩う気持ちも快楽に流され、自分の意思の弱さに嫌気が刺します。いえ、その嫌気すらも覆ってしまうこの快楽が恐ろしいのです。そして指は深部へと入り込み、陶酔を浸透させていきます。

「だいぶ開けてきたな。そろそろか」

 容姿に艶かしさを放つ陛下の表情がフッと真顔となり、剣呑を感じた瞬間、再び私はみぞおちに打たれ、甲高い声が上がります。

「ふぁあんっ、はぁ、あぅん、あんっ、いやぁっ」

 数本の指が最奥へと入り、中で攪拌かくはんされ、蜜が泡立って卑猥な音を鳴らします。ガクンガクンッと躯は揺れ動き、息を紡ぐのが困難なほど激しく、私はひたすら声を上げ酸素を求めていました。

 これは本番ではない…ですよね。そう疑う程の重圧に、意識は飛びそうにとなり、秘部へと視線を落とします。やはりこれは手淫です。こんな無理に開かされ、痛みすら覚える荒々しさなのですが、何故かその先には駆け抜ける快楽があるのです。

 ぢゅぶぢゅぶと蜜が抉り出され、寝台にも肌にも止めどもなく滴れていきます。獣のように蠢く指に蹂躙され、私の呼吸は追いつかず、熱は汗として滴り、躯全体が焼けつくようでした。

「はぁはぁはぁあんっ、あんっふぁんっ」

 必死に酸素を求め、昇り詰めてくる絶頂に身を大きく震わせます。それから秘部がキュゥと収縮し、痙攣が起こったその刹那、

「あぁ――――っ!」

 空気を裂くような嬌声を上げ、私はエクスタシーへと至りました。

「はぁはぁはぁはぁ…」

 この肩で息をしている間には、まともに口が開けません。その間に秘部から陛下の手が抜かれ、ドロッとした大量の白濁の液が溢れて流れました。

「これだけの蜜があれば、潤滑油となり受け入れ易くなるだろう」

 そうおっしゃる陛下の手にも大量の蜜が纏っていました。それを目にした私は躯がカアッと燃えるような恥ずかしさに襲われ、陛下から視線を逸らします。

 呼吸もままならぬまま、肩を震わせ息を整えておりますと、シュルシュルと布が擦れる音が耳に入り、私は一瞬息を止め、瞠目とします。この音は…?思った通り、陛下が脱衣をされていました。

 一瞬、この場から逃走を考えましたが、陛下の裸体に目が奪われました。均整の取れた滑らかなラインの上に、程良い筋骨が隆々とあります。陛下といえど、きちんと鍛えていらっしゃるのが分かります。

 さらに美しいアッシュブロンド色の髪が白い肌に映え、存在感に溢れていらっしゃいました。しなやかな躯つきにすっかりと魅入られた私は完全に逃げる意思を忘れていたのです。

 そしてギシッとベッドが軋む音と共に、陛下が私の前にまで来られると、大きく躊躇が生じます。無言のまま手を伸ばされ、反射的に私は身を退けようとしましたが、掴まれた裾を勢い良く上げられ、そのまま私の夜着は剥ぎ取られてしまいます。

「…っ」

 互い裸身となり、上から私を見下ろす陛下の虎視眈々としたお姿を目にしますと、先程とは違う意味で、私は視線を逸らせずにおりました。これはとても逃げられる状況ではありません。

―――どうしたら……。





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