Birth3「風変りなキャラクター達が集結しました」




 えっと…ですね、目の前の男性は今なんと?「なんですか、これは?」と、言われました…?明らかに私へと向かっておっしゃいましたよね?

 気持ちは分かりますよ。貴方のような風貌からしたら、私はフンコロガシに見えるかもしれません。しかしですね、貴方が妙に美し過ぎるだけの話であって、私はさほど低位置な容姿ではありません。

 普通は「どなた様ですか、そちらの女性は?」だと思いますが。一応私達、初対面でありますしね。うーん、先程の発言は非常に残念です。彼へのときめきは数秒で終わってしまいましたねー。

「オール、今の言葉は無礼に当たる」
「申し訳ございません、陛下…そのあまりにも王妃様とは異なるお方でして」

 オールとは目の前の男性のお名前でしょうか。それに王妃様とは?いえ、それよりも彼は玉座に腰を掛けていらっしゃる男性をなんてお呼びしました?陛下?私は目をパチクリとさせながら、後ろの男性へと振り返ります。

「もしかしてアトラクトさんって、国王陛下様ですか?」
「さよう。私はこのオーベルジーヌ王国の主だ」

 どっひゃー、そうでしたか、そうでしたか。そうですよね、このような玉座に腰を掛けられる方は王様のみですもんね。陛下とオールさんと、麗しい男性お二人の間に入っている私はとても眼福です。

―――はっ!

 今更ですが、私は異世界トリップをしてしまったのですか?それとも今流行りの乙女ゲームの世界へと転生してしまったわけですか?非現実的な事を思いながら、私は子供のように胸を躍らせておりました。

「オール、こちらが例の女性だ。名は沙都と申す」
「やはりそうでしたか」

 国王陛下様のご紹介に…あれ、なんですか?オールさんは額に手を当て、何かに堪(たえ)るように目を瞑られ、この世の終わりと言わんばかりのご様子です。私は彼にとって宜しくなかったようですね。とはいえ、私も好んで、こちらの世界に参った訳ではありませんし。

「沙都、彼は私の大事な重臣の一人、オール・ライガードだ」
「初めまして」

 私が深々と会釈を致しますと、オールさんも恭しくお辞儀を返されました。一つ一つのお姿が絵になる方ですね。

「オール、他の者はどうした?」

 私達の挨拶が終わりますと、すぐに陛下はオールさんへ問われました。オールさんの他にもどなたかいらっしゃるようです。

「すぐに参るよう伝えてはおりますが、申し訳ございません」
「構わぬ、すぐに参るであろう」

 んー、やはり陛下様々ですね。威厳と貫録が感じられます。美しい国王に煌びやかな臣下と、この世界の方達は美形さんが普通なのでしょうか。ともなれば、私の容姿では先程のオールさんの反応も致し方ないという訳ですかね。

―――ギギギィ―――。

 再び出入口の扉が開かれる音が聞こえてきました。扉に目を向けますと、新たな方達がこちらへと向かって来られます。どうやら三名のようですね。

「参ったか」

 どうやら陛下がお待ちしていた方達のようです。男性お二人と女性がお一人ですね。その方達が近づくにつれ、何か違和感を覚えました。なんと言いましょうか。現れた方達の風貌が、それぞれあまりにも異なっているもので。

 そのような思いの中、彼等はオールさんの隣へ並ばれると、すぐに揃って陛下へと会釈をされます。それぞれがお顔を上げますと、男性の一人が口を開きました。

「陛下、遅くなりまして申し訳ございません。髪が一本跳ねており、そちらを直すのに手間取っておりました」
「エヴリィ、その下らん理由で、毎度遅れる習性を直せと言っているっ」

 男性の言葉に、オールさんから荒げた声が上がりました。彼の美しい容姿には似つかわしくないキツイ表情をされています。確かに凄いご理由ですよね。髪の一本の乱れで、国王陛下との約束のお時間に遅れるとは、私のイメージからしても言語道断です。

「乱れた容姿で陛下の前に出るのは無礼だと思ってね」

 男性は尚も悠長な調子で、とても反省をされている様子には見えません。

「陛下は髪の一本で、咎められるようなお心の方ではないっ」
「え~、見てくれは重要だって!」

 ナルシーです。完全なナルシーですね。確かにその男性は陛下やオールさんとはまた別の美しさをもっていらっしゃいます。バレンシアオレンジ色の華やかな髪には緩やかなパーマがかかっており、双眸も宝石のマンダリンガーネットのように美しいです。

 それに鮮麗な刺繍が目に残る深紫色のローブを身に纏られて、スラッとした姿勢は一見モデルさんのようです。お顔も中性的な美貌をお持ちですし。まぁ、ご自分の美しさを知り尽くしている感じですけどね。

「まぁ、良い。オール」

 と、陛下はオールさんを宥めるようにおっしゃいました。陛下はナルシーさんにはお甘いのでしょうか。

「陛下、例の女性のお姿がございませんが、どちらにお見えでしょうか?」

 ナルシーさんは辺りを見渡しながら、陛下へと問われます。お求めの人は思いっきしここにおりますが、ナルシーさんには私が見えていないのでしょうか?

「其方の前におるだろう?エヴリィ」
「え、え?そちらのお方ですか?」
「何を申す?其方、自分で導いた相手であろう?」

 …………………………………。

 なんでしょう?このは…。空気が清閑に佇んでおります。

「失礼を致しました。眠っていらっしゃるお姿しか目にしておりませんでしたので。ですが、こちらはまた王妃様と風格が異なるお方ですね。てっきり王妃様と相似された方だと思っておりましたので」

 何処かで似たようなセリフを耳にしましたよね?うーん、それらの言葉は良い意味には聞こえませんよね。なんだか期待外れだった的な感じに思えますもの。

 オールさんに続いて、こちらの世界の方々の好む美しさはレベルがお高いのでは?まぁ、日常で国王陛下やオールさんのような方々を目にされていましたら、目も肥えてしまうんでしょけどね。

「王妃様は恐ろしい程、お美しい方でしたので、私わたくしには彼女ぐらいが無難で良いかと思いますが」

―――ん?

 今の言葉はナルシーさんのお隣にいる女性からでした。そちらの女性は軍服のような肩章が入った立派な深緑色ダークグリーンの制服を着用されています。髪は栗色のフンワリとしたショートボブで、とりわけ美人という訳ではありませんが、キリッとしたシャープな容姿はとても凛々しいです。

 見た目からして、甘いとは逆の雰囲気をもつ女性ですので、先程のある意味毒舌のお言葉も納得しますね。ただ気になりますのが、必ず「王妃」様というお名前が出る事なんですよねー。王妃様はこちらにはいらっしゃらないのでしょうか。

「あら~、いいじゃなぁ~い❤」

―――は…い?

 今の声は女性の隣にいる……男性からでしたよね?彼は一体?





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