「この食事は私の分だからね! あげないよ!」




「は?」

 私の言葉にキールは突拍子もない声を上げた。そして、すぐに顰め面を見せよる。

「別にその気ないし?」

 それに心なしか冷めた表情をして答えた。

「ふーん。ならいいけどさ」

 このお料理は私の為に作ってもらったものだからな。私がしっかり食べないとならんのだ。

「オマエって食いしん坊だよな?」
「!?」

 なぬ、これから優雅に食そうとしていた時に、キールから嫌味が飛んできたぞ。

「なんだいきなり! レディに対して失礼だな!」
「その量って異常じゃん」

 明らかにキールは蔑んだ表情をしてチャチを入れてきたぞ。

「なに言ってんだ! せっかくシェフさんが作ってくれたお料理を残す方が失礼だろ!」
「そうだけど、そんな量を残さず食べるヤツなんて見た事がないぞ」
「はぁ? だって晩餐会の時にはもっと量の多いお料理が出されているじゃん?」
「あれは並べられているだけで、誰も完食していない。でもオマエはその量を普通に全部食べているよな?」

 ギクッ、バレてやがったのか! 現実世界では味わった事のない豪華なお料理を目にすると、私はウハウハな気持ちになってすべて食しているのだ。

「そ、そりゃぁ、私はキール達と違って身分の高い人間じゃないから、ろくに会話にも参加が出来ないし、ひたすら食べる事しか出来ないんだっての!」

 う、うまい。我ながらナイスな言い訳を思いついたものだ。実際は食べるのに夢中で、会話に参加していないなんて口が裂けても言えないけどね。会話も堅苦しい仕事的な話よりも日常的なものばかりされているから、会話に入れないわけでもなかった。

「だからといってもあの量はな」

 しかし、キールは悟るような呆れた眼差しを向けていた。その目つきは明らかに私を大食い者だと言っている。な、なんなんだ! 人を珍獣を見るような目で見てきて、あったま来るな!

「フーンだ! 食べ物を残すなんて罰当たりなんだからな!」

 私はプイッとキールから顔を背けて、お料理を食べ始めた。せっかく温かい内に食べようと思っていたのに、ちょっと冷めてしまっているではないか! それでも十分に美味しいけどさ!

 モシャモシャと食べ始めた私をジーッとキールは見ていたが、私は気にもせずに食べ続けた。その内、キールは部屋から出て行こうとしていたから、

「何処に行くの?」

 私はキールの背に向けて問いた。彼は顔だけ私の方に向けて、

「飯食べに行って来る」
「え? 部屋に用意してもらって、ここで食べればいいじゃん」
「オマエの料理見ているだけで腹がいっぱいになって食す気が失せる」
「な、なんだとぉ!」

 キールは超失礼な言葉を残して部屋から出て行った。なんか超後味が悪いんですけどぉ! 私はその後、勿論お料理を全部お腹の中に入れたけど、その日の夜、改めて自分の食べる量について真剣に考えてみた。

 ――やっぱ私って食べる量が多いのかな?

 たまに大食い選手権にでも出られるんじゃないかなって思う時はあったんだよね! 人と食事をする時は出来るだけ抑えていたけど、こっちに来てからはその抑制を破壊してしまうほどの豪華なお料理を出されて、ついつい食べちゃうんだよね。

 しかし、今日のあのキールからの見るに堪えないという態度をされてから、私はどうしてもあの態度が頭から離れず、今までのようにお料理を完食出来なくなってしまったのだった……。




バッドED1「食せないシビアな思い」:キーワード③「o」

http://romancer-for-you.jp/wazawainohime/multi-①②③④.html

キーワードを①から④まで並べてURLを完成させると、新たなストーリー「エクストラED」へと続きます。





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