番外編⑬「奔流されるがままに」




 痛いぐらいの強さで弾かれているのに、胸の突起は恥ずかしいぐらいに、ツンと硬くなって勃ち上がっていた。まるで形を強調しているようなあられのない姿だ。

 こんな状態でいたら、余計キールの気を逆立てちゃうよぉ。私は反応する躯に抑制をかけたいのに、理性よりも快感の方が勝ってしまう。荒々しい行為でさえも、キールの手に掛かれば扇情的な快楽となる。

「んぅっ、んっ、んぁっ」

 塞がれている口元から零れる吐息ですら、何処か艶めかしさが含まれていた。混ざり合う二人の唾液が興奮を掻き立てる音と共に口元から溢れ、腰が砕けそうなほどの濃厚な口づけで目眩すら覚える。

 この高揚感に錯綜する私の思いをキールは感じ取っている筈だ。でもだからといって行為が緩む事はない。その内にキールの舌は口内から離れたが、すぐに私の耳、首筋へと回って愛撫が続いていく。

「んぁっ、ふぁ、やんっ」

 ――早く謝らなきゃ、さっきの件。

私は罪悪感から解き放たれたくて口を開こうとしたが、それはキールの舌使いによって叶わない。戸惑っている間にも舌はどんどん下りて行き、とうとう胸へと到達する。いつものキールであれば、乳輪の周りを丹念にねぶるのに、今日は胸の形が歪むほど掴まれた後、突起を一気に口に咥えてなぶり始めた。

「あんっ、やんっ」

 今日は意地悪な言葉責めもない。無言の貪りが責められているようで、私の心を苛ませた。

「んぁ、あんっはぁんっ」

 罪悪感に苛まれている筈なのに、いつもと異なる荒々しい愛撫によって躯は興奮を高めていた。キールは怒っているのだ。これはお仕置きなのだから、色っぽい反応を見せれば、彼は一層憤りを深めるだろう。

 キールは重点を絞って、そこを一心不乱に責め立てる。突起を口で含んだまま、舌で翻弄される行為に私は弱い。それを誰よりも知り尽くしているキールはそれを故意に繰り返していた。

「あんっ、はぁん、やぁぁんっ」

 喘ぎ声に熱が増し、神経が胸に集中して躯が火照る。私はキールの首に腕を回して罰を受け続けていた。

 ――なにか言ってキール。

 彼はなにも言わない。なにかを訴えるように私の胸を貪っていた。

「はぁああん、あんっ、いやぁん」

 さらに彼は空いていたもう一方の手を使って胸も揉み出し、突起を弾き出す。刺激が二倍になって私は身を震わせながら堪える。それに伴ってヌルッと秘所の潤いが深まって、下肢全体がどうしようもないほど、疼き始めていた。

 ――ど、どうしよう。

 満たされたいという愛欲が広がっていく。今の私にそんな思いは厚顔のなにものでもない。それよりなにより、キールに謝る方が先決だ。

「キ……ル」

 私は声を絞り出すようにして、キールにお詫びを口にしようとした。

「はぁ……キール……私……?」

 ところが行為を中断され、キールは私の腕をもって立ち上がる。そのまま私は躯を回転させられ、キールに背を向ける格好となった。無理に前へ押し出されそうとなり、咄嗟に私は目の前にあるシャワーの取っ手にしがみ付いた。

「な……に? キール?」

 既に背中がキールの躯で覆われていて、剣呑な雰囲気を感じ取った私は振り返ろうとした。その瞬間、上下の口にガッとキールの指が入った。

「ふんぐっ」

 ――な、なに!?

 私が口を開こうとすれば、それをキールは塞ごうとしてくる。今更彼にとって詫びる言葉など、聞き入れたくないのだろう。

「んっ、んっ、んんぅ、んぁんっ」

 上からも下からも指が散りばめられる。上の口内は蹂躙する指を噛んでしまいそうだ。上手く舌が回らず唾液が滴る。下の秘所は三本の指が最奥から蜜を抉り出すかのように、激しく抽迭ピストンされていた。

 あまりに荒々しい扱いをされ、嫌悪感と憤りが湧いてきそうなものだが、躯は愉悦感としてビクンッビクンッと波打ち、止めどもなく淫蜜を下肢へと流していた。

 秘所に熱が集まり、躯の内側から溶かされてしまいそうだ。この荒々しい行為がキールの情熱の炎のようで、躯を焼き尽くしていた。こんなに熱くて苦しいとさえ思うのに、本気で抗えないのはキールに対する罪悪感からだろうか。

「んんっ、んぁっ、んはぅ、んぁんっ」

 上下の口が共に水気でぬかるみ、指が滑りやすくなると、さらに行為に火が点いた。抵抗する力がねこそぎ奪われて喘ぎ声しか出せなくなった頃、上の口で蠢いていた指からようやく解放された。

「はぁはぁはぁ」

 目眩がするほど頭がグラグラして、呼気も不規則だった。行為が終わったのかと、安堵感を抱いたのは束の間、グッタリとシャワーの取っ手にもたれる躯を後ろへと引かれる。

「え?」

 背中から回ってきたキールは一方の手を胸へ、もう一方は秘所に滑り落として獲物を逃がさんと言わんばかりに、ガッチリと押さえ付ける。私は背中を彼に預ける体勢となった。

「な、なぁに?」

 私は不安を抱き、声が強張らせながらキールの腕から逃れようとした。そんな行為も虚しく、すぐに力を奪われてしまう。

「やぁあん! やめてぇー!」

 胸を翻弄する手が突起を挟みながら、乱暴に揉みしだく。そしてもう一方は秘所の深部へと指が入って、突き上げるような獰猛な動きを見せていた。

「はぁあん、やぁあん! んっ、んぁあんっ! あんあんっ、激し……い……過ぎ……るよぉお」

 私は涙を滲ませ、悲鳴に近い嬌声を上げる。こんなの乱暴すぎる。拷問を受けているようだ。皮膚と内部が酷く擦られて痛みが生じてきた。

 それなのに痛みさえ気持ち良く感じてしまうのだ。まるで初めて挿入された時のように、痛くて痛くて仕方ないのに、繋がる喜びによって痛みが快楽へと変わる、そんな気持ち良さなのだ。

 私の躯はキールにどんな事をされても、すべてが悦楽となる。それはこの一年間、今宵色づけられて作られた躯だ。こんなエッチな躯になったのも、相手がキールだからだ。

「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

 背後からキールの乱れた息遣いが私の耳を犯す。熱っぽい吐息が躯の疼きを掻き立てていた。どうしてこんなに私の躯を支配してしまうのだろう。私の躯なのにキールの方が知り尽くしているようだ。

「やぁん、はぁん、んぁぁん、あんあんあぁぁんっ! もうらめーっ!」

 私はフルフルと顔を振って限界を訴える。それが却って行為に拍車をかけてしまい、ゾクゾクッと絶頂へと昇り詰める。

 ――あ、熱くて死んでしまいそう!

 躯の内側からだけじゃなく、外側からも相互に焼け焦がれてしまいそうだった。滲む汗が躯全体から放出する。もう意識が限界だ。そう思った時だ。

「もう……らめっ、イクよぉお!」

 頭の芯からパァァンッ! と、割れた風船のように弾けた私は意識が噴き飛んで火花が散った。それと同時に躯から力が抜け落ちて、ズルズルと地へ倒れ込んでしまう。キールの指が離れて、ドロリとした白濁とした液が腿から流れ出ていた。

「はぁはぁはぁ」

 いつもより乱暴だったからか、私はガクガクと躯全体が痙攣を起きて、本当に立てなくなってしまっていた。こんな事は初めて起こった。確かに今までキールに無理をさせられ事はあっても、こんな躯が立てなくなるぐらいまではされた事はなかった。

「はぁはぁはぁ」

 意識が朦朧としている。私が必死で呼吸を整えていたら、

「え?」

 フワッと軽やかに躯が浮いた。キールが私の肩と膝裏に腕を回して抱きかかえてきたのだ。お姫様抱っこの格好となっている。私がグッタリとして動けないのを気遣っているのかもしれない。

 相変わらずキールが無言でいるのが気になった。彼はまだ怒っているのだろうか。なにかを伝えたいのだけれど、今のこの状態では意識を保っているのが精いっぱいだった。

 そのままキールに連れられて、私は屋根付きのハンモックの上に躯を落とされた。きっとここで休んでいろという事なんだろう。そう思って私は一言お礼を伝えようとした。

「あ、ありが……え?」

 でも私の思いは違ったのだ。キールからふくらはぎを掴まれて引っ張られた次の瞬間、私の両脚はキール両肩へと掛けられ、そして彼は私の秘所へと顔を埋めてきたのだった。





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