第十三話「秘めた恋~シークレットラブ~」




 ――アイリッシュ様、どうか穢れた私をお許し下さい。

 私は心の中で祈るように両手を組み、何度も懺悔の言葉を述べた。何故、私がこのような事をしているのかというと、キールに軽くチューした後、それですべてが収まった……と思っていたのが間違いだった。

 キールの笑顔に惚けていた私はさらにふか~いチューをされ、舌を入れられた時には不覚にもそれに応えてしまった。チュータイムはかれこれ三十分ほど続きまして、途中でキールが呼び出されて終了となったけれど、呼ばれなければ一体いつまで続いていた事か。

 という事で、キールにディープチューを許してしまった私は愛しのアイリッシュさんに、懺悔の言葉を送っていたわけだ。うぅ~、あんなヤツと三十分もしていたなんて……好きな人じゃないと気持ち悪く感じる躯の筈なのに、よりによってよりによってアイツとぉおお!

 ――私、何処も変わってないよね?

 私は躯中を見回し、ふぅーと重い溜め息を吐いた。キールはお呼びがかかった後、そのまま何処かへと行ってしまった。手持ち無沙汰になった私は客間のベッドに寝っ転がっていた。

 ――これから私どうなるんだろう? この国を救う救世主になるのかな?

 ドタバタで肝心な事を訊きそびれていたけど、そもそも私なんでこの城に連れて来られたんだろう。商人に売られそうになっていた所にキールが現れて、そのまま彼に連れて来られたんだけど、キールもなにか目的があって私をここまで連れて来たんだよね?

 それ訊かなきゃアカンよね? 次に会ったら訊くか。それとキールと出会って最初に言われた言葉を思い出した。私の事を「禍」って言ってなかった? バカバカし過ぎて深く考えてはなかったけど、まさか禍って本当じゃないよね?

 だって私にはそんな力ないし、そうであれば、とっくに捕まって処刑にでもされちゃうよね? いやいや、ないない、それは絶対にないさ! それにこれは私の夢の世界。妙に現実感リアルがありまくりだけど。夢から醒めても暫くは忘れそうもないな。

 暫く私はポケ~と物思いに耽ていた。窓から麗らかな陽射しも差し込まれ、ポカポカとしていて心地好い。良い感じに睡魔においでおいで~と甘く誘われているところにだ。ギィーと部屋の扉が開く音が聞こえ、睡魔からパッと離れた。

 扉からすぐにキールが現れて、思わずドキッとしてしまう。なんだかんださっき密な時間を過ごした仲だもんね。思い出したら恥ずかしさが出てきて、私はキールと目を合わせられない。私がこんな乙女な思いをしているのに対し、キールは至って平静なんですけど。

「千景、一緒に来い」
「はい? 何処に?」
「いいから来いよ」
「いいから来いと言われても、何処に連れて行かれるかわからないのは不安で嫌なんだけど?」
「いちいち面倒くさい女だ」

 キールは溜め息交じりに言った。おいおいおい、言わないオマエの方が面倒くさがりじゃん! 私はぷくぅ~と頬を膨らませた。私の不満にキールは察したのか、一言添えてきた。v
「大事な話がある」

 その言葉に私はピンッときてしまった! こ、これって、も、もしや!

「まさか私にプロポーズ!」

 さっきのチューでキールは私に愛が芽生えてしまったに違いない! なんという事だ。こんなティーンのコの心を揺さぶってしまうとは! 私もまだまだ捨てたものではありませぬな~、グヘヘ。急に過度の自信をもった私はニヤッとしてしまった。そこにだ。

「そのおめでたい脳みそは腐ってんな」
「はぁ?」

 キールは私の頭の中を読み取ったのか。実に辟易へきえきとした顔を見せている。なんでだ! しかも人の脳みそを腐っとるとは女性に対して超失礼だ! あったまきたぞ!

「一緒に行かない」

 私はノーと答えてやった。

「あ?」

 険のある表情に変わったキールに、私はちょっぴしと怯むが負けてはならぬ。

「そもそもこの城に呼ばれた理由も聞かされていないし、何処に連れて行かれるかもわからないの気味が悪いもん」

 意地を張っているのではなく、正直な気持ちを伝えた。キールは考え込んでいる様子だったが、観念したように口を開く。

「その理由を話しする。王がお呼びだ」v 「へ? 王様が?」
「大事な話しだ。心構えしておけ」

 という事らしく、私はすぐさまキタァアアアアア――――――!!!! と、絶叫してしまった。これはいよいよ、いよいよ救世主として任命式が行われるのだ! 心構えしておきまっせ~。私はキラキラと瞳に宝石を宿し、心の中でガッツポーズをした!

 ――ルンルンルンルン♪

 高鳴る私の鼓動はさらに加速した。部屋を出る前、私は気になっていた事を尋ねてみた。

「キール、その王様に会う時にさ、アイリッシュさんも一緒だったりするの?」

 ちゃっかりな質問だった。キールはすぐに眉根を顰めたが、

「あぁ、一緒だ」

 嬉しい回答をくれた。またしても私はニンマリとした表情になる。アイリッシュさんがいると聞いただけで素直にその喜びが顔に滲み出てしまうのだ。そんな様子の私をキールは実に冷めた表情をして見つめていた。

「オマエさ」

 なにやらキールが辟易とした口調で話かけてきたぞ。

「なに?」

 ――なんだ。なんだ?

 私にはなんでキールがそんな顔を見せているのか、さっぱりとわからなかった。

「アイリに気があるよな?」
「そ、そんな事はないけど?」

 ――ひぃ、キールにバレていやがるのか!

 私は動揺を隠しつつ嘘をつく。いつの間にヤツは私の恋心に気付いたんだ! コヤツに素直に言ったところで協力してくれるとも思えないし、まして邪魔をしてきそうで怖いわ。なんとしてでも隠さなきゃ!





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