Please35「淫猥な夜に偽りの呪解」




 あの時の出来事が脳裏にチラつき、カアーッと顔が熱を帯びていく。

「あ、あれは全く呪いを解く方法と関係ないじゃないですか!」

 私は怒気を孕んで抗う。そんな私を目の前にしても、アクバール様は気にもせず、シレッとして答える。

「あれは当初考えていたものより、随分とソフトなものだ。本来考えていた内容を試せば、今度こそ呪いが完全に解かれるかもしれないぞ」
「んっなわけないじゃないですか! そもそもあれはアクバール様とクレーブスさんが面白半分で考えた卑猥事ですよね! あんな事はもう二度とやりませんから!」
「なんだ、可能性をわざわざ潰してしまうのか?」
「何シレッとして言っているんですか!」

 アクバール様のあまりの悪ふざけに、私は声を荒げてプイッと顔を背けた。

「……レネット」

 アクバール様から甘やかに名を呼ばれ、私はビクッと反応した。妙に甘ったるい声で呼ばれるし、視線が交わえばアクバール様の表情は花を愛でるように優しく、そして熱を孕んでいる。間違いない、私は求められている。察した途端、私はあらかさまにソワソワとしていた。

「な、なんですか?」

 私は恐る恐る問う。

「こっちへ来い」
「え?」

 アクバール様に手を差し伸べされ、私は酷く動揺する。来いと言われても、さっき言われた要望をさせられるのかと思えば行けるわけがない。

「あ、えっと……私はもう寝てしまいました!」

 思案した結果、私は掛けシーツの中へと潜り込もうとした。このまま出て行かなければ私の勝ちだ! ところが、完全に潜る直前でアクバール様に腕を掴まれて引き摺り出されてしまう。

「ひゃっ」
「何を訳の分からん事をほざいている」
「や、やめて下さい。私はもう眠いのです!」
「まだやる事があるだろ? 大事な時間を略すな」
「無理なものは無理なんです!」
「オレとの夜を何度過ごしている? いい加減に慣れろ」
「いーやーでーーすぅ」

 絶対に要望に応えたくない私はとことん抵抗を見せた。アクバール様が少しでも触れてくるものなら、パシンパシンと払い退けていたが、それがアクバール様の癪に障ったようで、荒々しく二の腕を掴まれる。

「ひゃっ」

 私は反射的に逃れようとして体勢を崩し、そのままうつ伏せに倒れ込んだ。その時、アクバール様の躯にドスンと顔をぶつけてしまった。うぅ~頭がクラクラする。

「大丈夫か?」
「あ、はい。……!?」

 私はなんとか返事をして視界を開くと、ハッと息を呑んだ。どうやら私はアクバール様の脚の間に入り込んでしまったようで、男性器を間近にしていた! 目のやり場に困って動揺していると、アクバール様に追い打ちをかけられる。

「なぁ、レネット。オレの雄芯これをオマエのその豊満な胸の間に挟んで、しごいて欲しいんだが」
「は……い?」

 アクバール様のストレートな要望に、口がポカンと半開きとなった。

「もっと理想を言えば、口で先端を愛撫してくれたら完璧だな」
「そ、そんなおかしな事出来ません! 何考えているんですか!」
「元はさっきの内容で奉仕してもらう予定だったが、あの時のオマエは経験値が少なかったからな。考慮して初級の内容にしたんだぞ」
「し、知りませんよ、そんなの! といいますか、勝手な個人のお考えではありませんか! そんなおかしな事を押し付けてこないで下さい!」
「おかしな事ではないぞ。大人の世界では存在する事だ」
「え?」

 私はハッと息を引き切った。

 ――い、今アクバール様はなんて? 大人の世界では存在するって言った? あんな卑猥な事が?

 非常に不快だった。あんな事が存在するからではなく、何故そんな事をアクバール様が知っているのか、それに私は重きを置いた。

「何故ご存じなのですか?」

 私はヒシヒシと訝し気な視線をアクバールへと送ると、一瞬彼が動揺を見せた。それに私はカッと怒りの閃光が散る。

 ――まさかあんな卑猥な事を私以外の女性にやってもらっていたんじゃ!

 メキメキと怒りのバロメーターが上がっていく。

「オレもクレーブスから聞いただけだ」
「そ、そうなんですか」

 どんな言い訳を口にするのかと思ったけれど、他者から聞いたと答えて、私はホッと胸を撫で下ろした。

「レネット、やってくれないか?」

 ――え?

 アクバール様に下唇を優しくなぞられ、甘ったるく懇願される。すっかりと自分の置かれている状況を忘れていた。これは危険だ。このまま上手く流されてしまいそう。

「な、なに誘惑しようとしているんですかぁ」

 ドクドクドクと心臓が早鐘を打つ。

「あ、あのような事はもうしませんから!」

 ここはハッキリと拒否らなければ! 私は躯を起こしてアクバール様と距離を取ろうとしたが、先にアクバール様がとんでもない行動へと出た! 私の躯を無理に押さえ付けて乳房を掴んできたのだ。

「やぁっ」

 私はすぐにアクバール様を引き離そうするが、アクバール様は機敏な動きで己の分身を私の胸の谷間へと挟み込んできた。

「な、なにするんですか! こんな!」

 眼前に生々しい雄の象徴がある。またこんな卑猥な事をするアクバールに怒って、私は彼の胸元をボコボコに叩くが、当の本人は平然と人の胸を揉みしだいている。

「嫌ですってばぁ! アクバール様の変態! 鬼畜! エロメン! 大っ嫌いです!」
「実際これをする女性自身はあまり気持ちいいもんじゃないみたいだぞ。オレがこうやって扱いた方が気持ちいいだろう?」
「なに言って、やぁんっ」

 乳房の頂きをキュッと摘まれ、私は甘ったるい声を上げてしまった。

「互いが気持ち良くなる、一石二鳥だな?」
「バカァ」

 もうこんな卑猥な事を見ていられなくて、私はギュッと視界を閉じた。こんな事されているのに、どうしてもっと私は抵抗しないのだろう。自分に嫌悪感を抱く。おまけに意思とは別に淫らな声が零れて悔しい。

「はぁ……ぁあん、やぁんっ」

 双丘から伝う感触が生々しい。アクバール様の雄芯はどんどん熱と硬さが増し、先端から水気を生んで滑りやすくなっていた。薄っすらと視界を開いてみると、好きなだけ弄ばれているせいで、乳房は原形をとどめていなかった。

 目を開いてしまった事を酷く後悔した。こんな卑猥な光景を目にしたら、途端に血が騒ぐように躯が沸々と燃え上がる。これ以上は躯がおかしくなりそう。私は無意識に悪戯をしているアクバール様の手を重ね、行為を止めようとした。

「なんだ? 自分で扱きたくなってきたのか?」
「んぁっ。ち、違い……ます」

 アクバール様に妙な勘違いをされ、咄嗟に手を下げてしまった。私が止める事を諦めたと思われたのか、益々行為がエスカレートしていく。ぐんと雄芯は膨らんで容赦なく乳房を蹂躙する。

「はんっ、んあっ、あんっ」
「はぁはぁ……」

 室内が私とアクバール様の淫靡な声と香りで染まっていく。

「……っ」

 アクバール様が息を詰めるを耳にした時、彼の達しが近い事を察した。その時、私は躯を起こされ引き離される。その直後、はち切れるばかりの雄芯の先から、ドバッと勢い良く射精がされた。

「「はぁはぁはぁはぁ…」」

 息が絶え絶えで苦しい。私は肩で息をしていた。アクバール様も同様に切れ切れの息遣いであったが、表情は充溢されている。

「レネット……」

 名を呼ばれて私は過剰に反応してしまった。甘やかに呼ばれる時はろくな事がないもの。

「アクバール様なんて大っ嫌いですから」

 私はこれ以上アクバール様が悪さをしないよう、予防線を張る事にした。こうやって怒っている様子を見せれば、彼も少しは考えるだろう。

「無理にやって悪かった。調子に乗っていた」

 この態度が効果的だったのだろうか。アクバール様が素直に反省を見せた。

「機嫌を直せ」
「アクバール様なんて知りません!」

 私はプイッと顔を背けて許さなかった。素直に謝ったからといって、あんな淫猥行為をしたアクバール様を簡単に許せるものではない。暫くの間は反省してもらわなきゃ。

「悪かった。これで機嫌を直してくれ」
「え? ……あんっ!」

 アクバール様の手が私の秘所へと潜り込み、器用に茂みを掻き分けて花芽を弾いた。

「満たしてやるから機嫌を直せ」
「やぁんっ、あんっ、あんっ」

 花芽を重点的に狙われて、あられのない声が止めどなく溢れる。

「やだぁ、これ……はん……せ………い………してない」
「反省している。悪いと思っているから、こうやって気持ち良くしてやっているのだろう?」
「こん………なの………私は………望んで………ない………です」

 こんな事をするアクバール様はちっとも反省していないのだろう。怒りを感じつつも、私はアクバール様の肩に顔を埋めて、幾度も快感に身を震わす。

「そうか、望んでなかったか」

 そうアクバール様が呟いた後、予想外の事が起きた。秘所からアクバール様の指が離れ、私は一驚した。そんな私を目にしたアクバール様は口元に弧を描く。

「レネット、またオレの躯の上を跨いでみてくれ」
「……っ」

 素直に私の言う事を聞いてくれたのかと思ったのが大間違いだった。アクバール様には反省するという行為が欠落しているのか!

「アクバール様! いい加減にして下さい!私はもうあのような卑猥な奉仕は二度としないと……「そういう意味ではない」」

 私が言い終わらない内に言葉を被された。

「え?」
「別に奉仕をしろとは言っていない。いいからオレの躯に跨れ」
「い、意味が分かりません! それなのに跨がれますか!」
「つべこべ言わずに言う通りにしろ」
「きゃっ、や、やめて下さい!」

 アクバール様がまた強行突破を為そうとしてきたから、私は全力で抵抗して彼から離れようとする。

「い、嫌ですから!」

 背を向けて逃げようとした時、腕を引っ張られてしまい、私はアクバール様の上に倒れ込んでしまった。

「きゃっ!」

 ドスンとした鈍い音がして私は悲鳴を上げた。

 ――もう何なの!

 文句でも叩きつけようかと思ったが、それよりも早くアクバール様に躯を動されてしまい、私は彼の顔の上に跨る格好となった。

「な、何する……ひゃぁあんっ」

 熱の籠った舌が秘所を襲う。そして私が逃げられないよう腿に腕を回され拘束される。全く逃げ場のない私はアクバール様の舌の攻撃を全うに食らう事になり、下肢全体が快感に痺れてガクガクと震えていた。

「こ……こんなの、やあっ、あんあんっ」
「奉仕しろとは言ってなかっただろ? 逆にしてやる。奉仕する時だけが跨るのではないと勉強になっただろう?」
「あんっ、そん……な」
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 今日のアクバール様は容赦なかった。始めから私の花芽じゃくてんを吸い上げて、快楽の地へと追いやる。それだけでも私は崩れ落ちそうだというのに、さらにアクバール様は花芽の包皮を剥いて、チュゥと吸い上げた。

「あぁあんっ」

 助けを求めるような甲高い声が洩れる。私は力を振り絞って離れようと試みるが、舌に浸食され、秘所がグッショリとあられのない姿へと変わっていた。

「あんっ、はぁあんっ、やぁあ……」

 絶え間なく愉悦が噴き上がり、アクバール様の手に堕ちたくないのに、躯はどんどん快楽の地へと溺れていく。

 ――もう駄目……。

 抵抗する意思が失われる。諦念した気持ちがアクバール様に伝わってしまったのか、さらに周りが淫靡な空気を漂わせていた……。





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