Please23「濃蜜の中で愛を囁き」




 このままでいたらアクバール様にガッツリと食べられてしまうというのに、私の躯は静止する魔法にでもかかったように動かない。

「レネット……」

 蜜のように甘ったるい声で名を呼ばれると、躯がズンズンと疼きで軋む。このまま流されてはいけないという強靭な理性にまで霞がかかった。アクバール様は私の名を呼んだ後、それ以上は何も言わず、そっと私の膝を立たせて左右へと広げる。

 ――ドクンドクンドクンッ。

 自分の脈拍数が尋常じゃない。頭の中が螺旋状のようにグルグルと回って困惑している。何も言えずに、アクバール様の動向を見つめていると、艶を帯びた秘所に彼の熱杭が宛がわれる。

 少し触れただけでも分かる凄い熱だ。彼の美しい容姿には不似合いなほど猛り切っている分身。それなのに今の彼の姿は異様に蠱惑的で、そそられてしまうのは私が淫らだから?

 そんな風に自分を思いたくない。だけど、このまま自分の中に入ってくる事を期待してしまう自分がいる。そんなふしだらな考えをアクバール様に読み取られてしまったのか、彼の口元がフッと緩んだ事に気付いた。刹那、

「ふっ……ぁあっ」

 勢い良くズンッと雄芯が私の中へと入り込んできた。奥深くで、ずっとくすぶっていた火種うずきが爆ぜ、鋭い快楽が躯中へと駆け巡った。

「んっ……あっ」

 膣内に潤沢な潤骨油が作られていても、この圧迫感は凄い。見た目以上に雄芯はギラギラと漲っていた。

「んっ……お……っきぃ」

 思わず思っていた事が口元からポロリと出てしまった。

「ずっとオマエの中に入りたかったのを我慢していたからな。悪いが手加減出来そうもない」

 またとんでもない言葉がアクバール様の口から飛び出た。それからすぐに彼は腰を引いて、熱に覆われた楔をなめらかに穿つ。

「んぁあっ」

 私は覚悟するいとまもなく、二度目の大波に打たれた。その快感の波が引かない内に、また次の波が襲わってきて、それはしきりに続いて快楽を濃厚にしていく。それに比例して、私の喘ぎ声もどんどん蕩けていった。

「やぁんっ、はぁんっ」

 アクバール様が言った通り、手加減なんてものはなかった。最初から動きが激しく、彼が本当に我慢していた事が分かった。なんて自分勝手な人なんだろうと、憤りを感じるところなのに、みるみると快感を広げられていけば、怒りもどうでも良く思えた。

 ――それに……。

 快楽を貪るアクバール様の姿はなんて色っぽいのだろうか。荒々しい吐息も湯気と混ざって滾る汗も、すべてが色めいていて、私の劣情を掻き立てる。そんな風に性に溺れる自分はやっぱり愚かだと思った。

 淫蕩な熱に纏われて愉悦の最中さなか、揺すり上げられる度に膣内が波打つように泡立ち、迸る二人の情液が膣外へと溢れる。おまけに故意に足を大きく開かされ、内奥まで熱塊が深く入り込む姿はなんて生々しく淫猥なのだろう。

「んあ……っん!」

 私の足を抱えていたアクバール様の手が、今度は私の双丘を厭らしい手つきで弄ぶ。たわわな膨らみを存分に捏ねくり回し、そして腫れたように赤い実を甚振って享楽に耽る。そんな彼の不埒すべてが眼前で行われているのだ。

「い……やぁ」
「レネット、オレにはオマエが本気で嫌がっているようには見えないぞ」
「やぁ……あっ……」
「こんなにもここは悦んで咥え込んでいるだろ」
「あんっ、あんっ、は……速く……しちゃ……だ……めっ」

 より楔を鋭く深く打ち突けられ、躯をガクガクと揺さぶられる。そこにさらにアクバール様は花芽にまで悪戯を働いて、私を耽溺させる。それは沼の深みに嵌っているような感覚だった。

 彼は何処まで私を甚振れば満足するのだろうか。私はおとがいを反らして嬌声を上げ続ける。アクバール様は私と同じく息遣いが乱れている筈なのに、口元に弧を描いて、まだまだ余裕だった。

「だいぶ締まりが良くなったな」

 そう顔を歪めて言いつつも、何処かしら満足そうだった。

「本当……に……いや……こんな……丸見……え」

 激しいピストンを繰り返され、目を開けていられないというのに、それでも視界に入ってきてしまう淫乱な光景に、私は溢れるばかりの涙を浮かべて訴える。

「見えるのが嫌ならこうすればいいな」

 ――え?

 急にピタリと動きを止められ、私は呆気に取られた。すぐに予想もしない出来事が起きる。

 ――ザブ――――ンッ!!

 アクバール様はまた何を思ったのか、私を引き摺るようにして湯の中へと落ちた。ザブンッとお湯が勢い良く跳ねて、飛沫が躯中を打ち叩く。私は何が起こったのか分からず、目を白黒させていると、躯が包み込まれている事に気付いた。

 湯に浸かっているだけではなく、私はアクバール様の懐にスッポリと入り込んでいた。湯で明瞭には見えないが、しっかりと結合部は繋がったままだ。な、なんでまだ繋がったままなの!?

「これなら行為が見えないだろ。これで存分に味わえる」

 ――え?

 ほくそ笑うようなしたり顔を見せるアクバール様に、私はゾクリと背中が粟立った。

 ――存分で味われるって何?

「ひゃっ!」

 言葉の意味を考えるよりも先に腰が揺れ動き出した。生々しい結合部は湯で隠されているものの、アクバール様は腰を打擲ちょうちゃくするように激しく穿ち、私の膣内に稲妻を起こす。

 とんでない衝撃に打たれた私は反射的にアクバール様の首へ腕を回して縋った。バシャバシャッとお湯が荒波を立て派手に跳ね上がる。それだけ激しく灼熱に抉られ、私は息をつく間も与えられなかった。

「やぁっ、はぁあんっ、あんあん」

 私は弛緩し切ったはしたない顔をして喘ぎ続け、アクバール様にしがみつく躯は怒りに狂った剛直けものに何度も貫かれ、大きく跳ね上がる。水圧なんてもの関係なしに、なんて恐ろしい動きをするのだろうか。今のアクバール様は血に飢えた獣にすら見える。

 こんなに綺麗な顔をしているのに、性に塗れる彼の姿は恐ろしく獰猛で、私の事を壊してしまいそうだった。恐い、そう心では思うのに躯は裏腹に性の放埓に限りを尽くす。そんな身勝手な躯に心は敵わず、淫らな行為に踊らされていた。

 ――もう逆上せそう!

 アクバール様から注がれる熱に浮かされているからか、湯気の熱で火照っているからか、またその両方なのか、もう何が何だか訳も分からず、躯がドロドロに溶けて意識がプツリと消えそうとなった、その時だ。

「レネット……」

 アクバール様から名を呼ばれて、失いかけた意識を引き戻される。耳元で甘い吐息を洩らすように名を口にされ、私の全身が大きく震え上がった。なんでそんなに色づいた声で呼ぶの? そこからさらに極めつけの言葉を落とされる。

「愛している。オレにとってオマエは唯一無二の存在だ」

 愛の言葉を囁かれ、下肢がギュッとする収斂を感じ取った。その途端、

「……っ」

 息を切らしていても、綽然としていたアクバール様の表情が歪み、余裕のない吐息を洩らした。私の起こした下肢の締め付けが彼の熱杭を締めてしまったのかもしれない。

「あんっ、あんあんっ」

 仕返しと言わんばかりに、アクバール様は熱杭を突き上げるように激しく鋭く抽挿し、膣内に荒波を立てる。私は声を上げて衝撃に堪えていたが、もう駄目! この波には堪えられない! もう早く達してしまいたい!

「レネット……一緒に……イクぞ」

 気持ちはアクバール様とも一緒のようで、私はコクンコクンと頷くのがやっとだった。その無言の返事に、アクバール様は性急に腰の動きを速めた。荒れ狂ったような獰猛な律動に、下肢から頭上に向かって最高潮の波が凄い勢いで逆流してくる。

「ふっわっ……も……う」

 ――達する!

 そう叫ぶよりも先に波が頂点へと達し、強烈な痙攣が私の躯全体を襲った。次の瞬間、快感の波が派手に弾ける同時に、膣内にはドクドクと放埓に熱い精を放たれ、私達は同時に果てた。

 精の熱量がアクバール様からの愛を注がれたように思えたのは、私の勝手な考えだろうか。そして躯が萎れ、雪崩れるようにアクバール様に身を委ねる私の頭の中では、達する前に囁かれた愛の言葉を反芻していた。

『愛している。オレにとってオマエは唯一無二の存在だ』

 あんな風に言われると、本当に愛されていると実感して胸の内がギュッと熱く焼き尽くされそうになる。正直に言うと、まだ気持ちの整理がついていないのだ。アクバール様が本当に私の事を愛してくれているのかどうか、そして自分の気持ちにも……。

 確かに「相思相愛」でないのであれば、呪いが再び降りかかり、アクバール様の声は失われると聞いている。今、無事に彼の声が聞こえるという事は互いが愛し合っている、という事になるのだが、何処か私は疑いが生じていた。

 呪いに縛られる怖さもあるし、そもそも呪い自体が不明瞭というか。早く呪いから解放されれば気持ちが晴れやかになって……いや、でもその時、私のアクバール様への想いはどうなっているのだろうか。

「レネット……」

 名を呼ばれて我に返る。つい物思いに耽ていたが、まだ私はアクバール様と繋がったままで抱き合っている体勢でいた。

「もう眠いのだろ? 今度こそゆっくりと眠れ」

 アクバール様から眠れと言われて、すぐに心地好い眠気がやってきた。一日に考えられる情報量がとうにオーバーしていて、凄まじい眠気が襲っていた。

「は……い」

 か細い声で私が答えると、アクバール様が躯を離した。下肢からドロドロドロッとしたものが流れていき、水面が仄かに白濁した湯が滲んでいった。

 ――こ、これは……。

 私とアクバール様の……私は羞恥心を抱きながら、深い深い微睡みの中へと陥りそうになる。でも夜着を着るまでの我慢だ。

「レネット、もう寝ろ。オレがオマエの躯を拭いて寝台へと運んでやる」
「え? それは……」

 お手間をかけるのでは? と、続けようとしたのだが。

「不埒な事でもするのではないかと、オレを疑っているのか? オレに寝ている女をどうこうする趣味はないぞ」

 アクバール様は私が言いたい事の意味を取り違えたようだ。

「そういう意味では。ただお手間ではないかと思いまして」

 拭くのも運ぶのも大変だし、何よりアクバール様がお疲れではないだろうか。

「手間ではない。素直に人の厚意を受け取れ」

 そうアクバール様に答えられて、私の瞼に重みが掛かる。ここはもう素直に眠らせてもらおう。

「ではお言葉に甘えてお願いします。そしてお休みなさいませ」
「あぁ」

 私がお願いをすると、アクバール様はヒョイと私の躯を横抱きにして湯槽から出た。彼の首に腕を回して、私は徐に瞼を閉じた。このまま心地好い夢が見られそうだ。

「レネット……」

 アクバール様は一人呟くようにして私の名を零す。既に微睡みの中へと入ろうとしている私には声は聞こえても、もう言葉を返す事は出来ない。

「オマエはオレを愛しているか?」

 ――え?

 今とてつもない事を訊かれたような気がした。もう答えようがないと思っていのが、自分の口が動いた感覚を最後に、私は天国にでもいるような幸福感に包まれ、深い微睡みの中へと沈んでいった……。





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