Please3「甘く絆されている場合ではない」




 さらにクイッと顎を上げられ、アクバール様の美しいお顔を間近にして唇が重なり合う。容易く割られた唇の中へ熱の籠ったアクバール様の舌が侵入する。すぐにお互いの舌は絡み合い、拙い動きをしている私の舌を誘導するように、アクバール様の舌が優しく舞うと、フワフワとした心地好い陶酔感が生まれた。

 徐々に私の舌が軽やかな動きになっていくと、お互いの舌は潤いと熱が深まり、刺激的なリップ音が洩れ始める。すると、それが合図かのように、アクバール様の舌は貪るように私の口内を蹂躙していく。私は上手く舌を合わせられず、瞳に潤いが帯び始めた。

 苦しいぐらいに責められているのに、こうやって繋がっている事に幸福を感じていた。さっきまでのアクバール様に対しての憤りは何処へ行ってしまったのだろう。今、躯中から溢れ出る熱に逆上せてしまいそうになる。

 やがてアクバール様の舌は流れるように下へと滑り落ちて行き、私のふっくらとした双丘へと目を向けられる。彼の大きな手はしっかりと膨らみを上げ、まだ初々しさを残す色づいた蕾に狙いを定めた。

「ん……っあん」

 軽く唇で挟まれただけで、目眩に襲われたような感覚へと陥り、私は固く目を閉ざす。やっぱりまだ慣れない。ほんの少し前までは、ここに唇を挟むなんて母乳を飲む赤子だけがするものだと思っていたから。

「ひゃ……ぁんっ」

 熱くぬめめった舌が軽やかな動きをして蕾を躍らせる。真っ白な肌の中に唯一色づいた桃色の蕾はいつしか色を深め、どんなに責められてもピンッと硬さを失わず屹立し、存在をより一層際立たせていた。

「硬くなっているのが分かるか?」
「やぁ……」

 蕾を挟まれながら、声を掛けられる。アクバール様に触れられるまで目にした事のない姿の蕾に、居た堪れない気持ちとなった私は彼から視線を逸らす。

「初々しい果実が今はすっかりと色気づき、厭らしい姿に変わったな」
「や……めて……下さい」

 言葉責めも交じらせて、私の羞恥心を煽っているのが分かった。より頬の赤みを深めた私に不敵な笑みを浮かべるアクバール様は舌でねぶり始める。執拗に蕾を翻弄し続ける彼のなんとも言えぬ淫靡な姿に躯中がジーンと痺れ、自分の下肢から流れる滴りに気づいてしまう。

 ――これは……。

「やぁっ……」

 それが何かと気付くと、私の恥じらいは強まった。その変化に気付いたアクバール様は真っ先に原因のその場所へと手を伸ばす。

「やっ、駄目っ……んぁあ」

 制止をかけた時には既に遅く、クチュッとした水音が耳を犯していた。羞恥を極限まで煽る卑猥な音だ。少し前までは誰にも触れられた事のない秘密の場所だった。そこをアクバール様によって開発されてしまったのだ。

 こんな場所に人の手や舌が触れるなど、ましてや潤いが生じ水音まで洩れるなんて、全く未知の世界だった。大人の世界でしか知り得ない禁断の行為だ。成人を迎えたばかりの、まだあどけなさを残す私には信じられない光景だった。

「随分と濡れていると思いきや、蜜が滴っていたのか。どうりで……」

 実に満足げに笑みを零すアクバール様へ私は悔しい気持ちと羞恥心を顔いっぱいに散らす。彼は私のなんとも言えぬ複雑な顔を見つめたまま、熱を含んだ甘い声で名を呼ぶ。

「レネット……」

 もうこの声だけで性感帯を刺激され、全身に鳥肌が立ちそうになる。確実に私の躯はアクバール様の毒牙にかかっていた。

「言っておくが、オレはオマエを手放すつもりはない。心が離れてしまえば、また呪いにかかってしまうからな」

 彼の琥珀色の瞳から、決然たる光りが走ったように見えた。

 ――それは……。

 完全には呪いが解け切れていないという事? また思わぬ言葉に私の心は動揺する。

「わ、私はもう今までのようには愛せませんっ」

 咄嗟に投げかけた言葉がこれだ。私は彼に対して不信感が生じているし、このまま一緒に居たって絶対に心は離れていく。

「今更結婚を取り止めになんて出来るのか? 伯爵令嬢の名に傷がつくぞ。第一アガット伯爵がそれを許すと思うか?」

 返された言葉に私はウッと言葉が詰まりかける。ヤバイ……、彼にはすっかり見抜かれていた。確かにお父様なら有り得る。体裁をとても気にする人だから。でもだからといって、こんな危険な人の傍に一生涯はいられない。私はなんとか動揺を隠し、言葉を返す。

「そ、それは事情を話せば、お父様達も分かって下さる筈です!」
「そんな世間は甘くないぞ。事実、オレは虐げられた身だ。その若さで傷物になったオマエに対し、世間の風当たりは冷たいだろうな」
「そ、それでも私はもう貴方の傍にはいられませんっ」
「そうか……」
「?」

 アクバール様が妙に素直に私の言葉を受け入れたかと思ったら、いきなり彼は私の躯を寝台に落とし、

「やぁあっ!」

 そして両膝を立てられ、大きく左右に開かれた足の奥に潜む秘密の場所へと顔を埋められる。大きく空気に晒されただけでも恥ずかしい場所をアクバール様は難なく舌をねぶり回す。抵抗もなく受け入れてしまった自分にも驚いてしまった。

「あんっ、あん、やぁあん……」

 開拓したての隘路は再び解かされていく。触れられる度に自分の口から厭らしい声が上がっていた。その声がどんどん甘くなり、蕩かされていくのが分かる。しっとりと潤み切っているその場所を舌は容赦なく、侵食していく。

「あんっあんっ」
「劣情を掻き立てる濃厚な蜜の味だな」
「やぁっ」

 アクバール様は唇を離されたと思いきや、またとんでもない淫らな言葉を落とされる。

「それとも人を狂わせる媚薬か? そんな危険なものはすべて払拭しておかなければならないな」
「な、なに言って、ひゃぁあんっ」

 ピチャクチュッと水音を弾き、より深く潤せられる。かと思えば大袈裟に蜜をすする音を上げられ、私は叫び声のような嬌声を上げる。その上、胸の蕾にまで手を掛けられ、重なる快楽に気がおかしくなりそうだった。

「もっと欲しいか?」
「い……やぁ……んあっ!」

 質問されて何も答えていないのに舌が襲ってきた。

「下の口は欲しいとパクパクとさせて言っていたぞ」
「そん……なの、知ら……ないですっ……やぁあんっ」
v
 アクバール様は私の感じる場所すべてを暴いていく。彼は絶対に私以外の女性の味を知っている。じゃなきゃ、こんな的確に気持ち良い場所を探り出せないもの。そう思ったら、何やら胸の中がざわついてきた。

「考え事とは余裕だな」
「え? ひゃっ! そ、そこは……ダ、ダメッ! いやぁあんっ」

 ほんの少し意識が別にいっていただけなのに、アクバール様の機嫌を損ねてしまった。熟れた花芯を味わうように咀嚼そしゃくされ、戦慄が全身へと駆け巡る。最も敏感な秘玉を遠慮なしにめちゃめちゃにされてしまう。
v  頭をフルフルと横に振り行為に制止をかけるが、それが却って執拗に責められてしまい、私の躯は幾度も跳ね上がった。これは明らかにアクバール様の機嫌を損ねたお仕置きだった。故意ではないのに……。

「はんっ、あぁんっ、やぁあ!」

 快楽に支配された躯に理性が吹き飛び、溺れ落ちて行く。ゾクゾクと何かが昇り詰めてくる。もう駄目……。

「き……気持ち……いぃっ……イッちゃうっ!」

 そう叫んだ瞬間、頭がスーと真っ白になり、眼裏にパァンッ! とスパークが弾けた。

「ふっぁああんっ!」

 ガクガクッと躯が大きく痙攣し、次の瞬間には強張っていた緊張が弛緩され、火の光りが弱まるように力尽きていく。無力になった私を肌で感じ取ったアクバール様は私から躯を離した。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 私は不足している酸素を必死に取り込む。半ば放心状態で上手く呼吸が整わない。そんな状態であるが、無意識の内にアクバール様へと視線を落とす。彼は満ち足りた表情を見せていた。

「ここはいつでもオレを受け入れるようだな。オマエの心が離れているのであれば、とうにオレはまた声を失っている」

 そして肩をそびやかし、綽然とした態度で私へと言葉を投げる。なんて傲慢な人だろう。そう私は不満を抱いたのに、反論しようとは思わなかった。た……だ……。

「呪いは完全に解かれていないのですか?」

 心の疑問を零した。私が傍でしっかりと愛していれば、呪いは解かれるが、離れてしまえば、また呪いは舞い戻る。この先、何があるのか分からない。果たして中途半端に呪いが残っていて良いのだろうか……。

「完全に呪術を解く方法は、それをかけた魔法使いにしか出来ない」
「でしたら、その魔法使いを探しに行きましょう!」

 バッと私は力尽きていた筈の躯を元気良く起こし、期待に煌めく満面の笑顔をアクバール様に向けて提案する。

「いやに乗り気だな?」

 何処か呆れたような面持ちを見せる彼だが、私が離れても呪いが戻らないようにするにはやるしかない!

「この先も呪いに縛られるのは嫌ですよね? 私も気が気ではございません! そもそも何も悪い事をしていないのに、呪いをかけられる事自体おかしいではありませんか! 魔法使いときちんと話し合えば、きっと相手も分かってくれる筈です! ですので探しに行きましょう!」

「……そうだな。探しに行ってもいいかもな。今度ソイツに会ったら、ぶっ殺そうと思っていたところだ」
「物騒な事言わないで下さい!」

 もう嫌! こんな野蛮な人から早く解放されたい~! 絶対に魔法使いを見つけ出して、呪いを解いてもらわなきゃ!





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