最終話「これからは共に歩んで」




「今後、一生を共にする君には、やっぱ話をしておかないとダメだよね」
「なんの話?」

 また妄想の世界に巻き込まれろと?魔術とか有り得ないから!

「オレ、騎士ではあるけど、実は魔術師でもあるんだ」
「は…い?」

 大丈夫か、シャークスよ。魔術なんて、そんな絵本の世界の事言われて、誰が信じるかっての!やっぱ最高地位の騎士の長だし、色々と悩ましい事を抱えて、頭がおかしくなってしまったのだろうか?この先いったら病院行きだよ?…いやもう既にか。

「信じ難い事だと思うよ。でも君が目に、耳にした事、普通では有り得ない出来事だったろ?」
「そう…だけど」

 あの事件の時、シルビア大聖堂塔の上に集まった民衆達が口を揃えて告白してくれた出来事はまさに神術だった!!確かに耳にした時はどうやって!?って、思った…けど。

「本来、難病を治すとか、富を与えるといった人ならぬ力を自然界で使用する事は禁ずる行為だと思っている。だけど、今回は黒幕を暴く為に少しばかり利用させてもらったよ。黒幕が賄賂をしてまで作り上げた捏造の事柄をリアルに成す人物が現れたら、民衆は間違いなく、こちら側に靡くと思ったんだ。事実、思惑通りに事が進んだよね」

 なんか…とてもリアルな話に聞こえるけど、魔術なんてそんなバカな……でも。

「女神や天使達を呼び寄せたのもシャークスの、その……魔術とやらなの?」
「アレは呼び寄せたというよりは、塔の尖頭に建っている像をリアル化にしただけだよ」
「はい?」
「リアルに見えたでしょ?」

 確かに、あんな神秘的な姿をした女神や天使達を目にしてしまっていたら、シャークスの言葉に、信憑性があると信じざるを得なくなる!

「じゃぁ、女神は実在しないと?」
「実際、女神は人の心の中で生きているって事だよ」

 う~、なんか上手く纏められた感だ。

「でもさ、民衆達はザクロやクローバーさんの事も絶賛していたよ?アレもシャークスの力を利用したの?」
「いや、彼等も同じ仲間だよ」
「はい?仲間って?」
「ん、だから同じ“魔術師”だよ」
「……………………はい?」

 またなに言っているの?私は目をパチクリしながら、ポカンとしていたけど、シャークスは至って真剣な表情をして、言葉を続ける。

「ザクロは先読みと透視能力がある。だからカジノでの調査は彼が適任だと思ってやらせたんだ」
「はい?」
「クローバーは身体能力が普通の人間より超越している。跳躍や腕力に関しては人の数百倍はあるね。シルビア大聖堂に侵入した際の扉は彼の力で施錠を壊したんだよ」
「え?…え!?」

 え?……えぇぇええええ!?!?!?なんですって!?!?あの人達も魔術師だって!?…でも言われてみれば確かに、ザクロってたまに読心術が使えるんじゃないかって思った事があった!人が心の中で思っていた事に、いちいち反応していたし!!

 それにカジノだ!変に洞察力に長けているなとは思っていたんだ!ゲームも窮地に追い込まれても、最終的には勝ち越していたし!勝敗を上手く調整していたんだ!げげっ!マジで!?

 クローバーさんに関しても、違和感ありまくりだった!シルビア大聖堂の外観から、バルコニーまで軽やかな足取りで上がるし、並ならぬ高さまで跳躍したりとか!施錠を壊したのだって、あんなにゴッテゴッテの頑丈な鍵だよ!?すべて術力だったって事!?

 あ、有り得ないって!…あ!でもそういえば、あの時!私とシャークスが繋がれていた施錠付きの鎖をあの二人はいとも簡単に外した!!あれはの魔術だったって事なの!?…ん?という事はもしかして?

「彼等って特別な力を利用して、黒の騎士までのし上がったの!?それって反則じゃない?」
「オレ達の魔術は生まれ持った天性のもので、意思というより、おのずと発動されるんだ。確かに人より優れていて、騎士の上位までのし上がったのは事実だ。実力で頑張っている者達からしたら、狡猾だと思うよね。でもザクロもクローバーも生まれは王族と貴族なんだ」
「えぇ!?」

 な、なんという隠されていた真実!

「彼等は騎士にならなくても優雅に暮らせられる身分を持っている。にも関わらず、わざわざ危険な道の騎士を選んだ。それは自分達の持っている能力を少しでも世の力に役立てようと思ったからだよ。だから反則とかって思わないで欲しいんだ」
「そうだったんだ…」

 それを聞いたら、ズルイなんて言えなくなったじゃん。

「わかったわよ」
「良かった、わかってもらえて」

 曇りが含まれていたシャークスの表情が晴れやかとなり、笑みが生まれる。

「そしてオレは主に治癒能力と念動力が使える。オレ達の事、不気味って思った?それとも怖い?」
「そうは思わないよ。ただ驚いただけ。だって、魔術なんて本の世界の魔女ってイメージだったし。まさか実在するなんて思わないじゃん」
「そうだよね。でも良かったよ。スターリーに気味悪がられて、婚約を破棄されたら、命を絶とうと思っていたから」
「いちいちそれ止めなよ!命を粗末にするな!!」
「じゃぁ、一生オレの傍にいてくれ!」
「無理矢理に引っ張るな!ってか、私はアンタの婚約者じゃ……」

 ハッと私は気付いた事があった!待てよ!?シャークスの能力って念動力だって言ったよね!?…………まさか…まさかまさか!?!?

「シャークス!!私が初めて貴方に会ったその日の夜、私の部屋に侵入出来たのって、まさか!?」
「あ、気付いちゃった?」
「!?!?!?」

 やっぱり!!シャークスは少し罰が悪そうな表情を見せ、頬を紅潮とさせていた!!あの時の出来事を思い出して、興奮しているのか!!私にとっては大恐怖だったってのに!!

「魔術を使って鍵を開けたのね!自然界に反した犯罪行為じゃん!!」
「うん、でも君を愛し過ぎているが故なんだ!!」
「バカたれ!!私利欲で術力を使うなんて!!」
「隠し事もすべて話してスターリーも難なかったみたいだし、今日はこのまま君のご両親や兄さん達にご挨拶して回ろう!」
「は!?」

 人の話をフルシカトし、シャークスは次なる目的へと目を輝かせていた!

「スターリーの口からオレを“愛している”って伝えてもらえれば、きっとマザグラン様もお許しして下さると思うんだ。もちろん、他の兄さん達やご両親もだけどね」
「ちょっと!勝手に都合良く考えないでよ!」
「はぁはぁはぁはぁ。ヤバイ、待ちわびていた日が目の前に来て、興奮が止まらない!少し抑える為に、スターリー、ちょといいかな?」
「なにをだ!!……!?!?」

 シャークスは私へと手を伸ばし……とても口には出せない事を成そうと、強行突破してきたぁぁああああ!!!!

「やめろぉぉおおおお!!!!!!」
「はぁはぁはぁはぁ!!!!たまらん!!その表情と罵倒する声!!もっと!!もっと激しく!!!!」
「出来るか!!ボケッ!!離れろぉおお―――――!!!!」
「もうイキそうだ!!!!」
「きゃぁあああ!!!!な、なに考えてんのよ!!!!」
「生まれたまんまの姿で一緒に!!!!」
「神よぉぉおおお!!!!どうかこの偏執狂の男から、私をお助け下さいませぇぇええええええ―――――!!!!!!!!!!」

 魔が差した想いだった…。こんなド変態ドM騎士を少しでも好きかもしれないと思った事に!!前言撤回を申し上げます!!!!





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