第四十一話「勝利の女神が微笑んだのは…」




―――ど、どうしよう!!まさかロイヤルストレートフラッシュだなんて!!フォーカードのザクロは完全に負けてしまった!!

 しかもオールインをしているから、賭け金のすべてを失ったよ!超最悪な事態だ!プレイヤーのおっさん達の仲間とその他ザクロが敗者となった時を狙って誘い出そうとしている怪しい輩達からの歓声以外はザワザワのざわめきが広がっていた。

 しかし、こんな結果になったというのに、なんで当の本人はポーカーフェイスでいられるんだ!表情に崩れがないのはヤツなりのプライドなんだろうけど、それがまたプレイヤー達から、

「兄ちゃん、今日は運がなかったな!派手に負けた時まで無表情でいられるとは、オマエさんなりの悪あがきなんだろうな~」
「いつまでも調子づいているから、こういう目に合うんだ。今までイイ思いをしていた分、負け方も格好悪いな~」

 と、嫌味を言われまくっていた。そしてザクロは何故か……深~い溜め息を吐いた!その様子に高笑いしているおっさん達の表情が歪む!

「なんだ、その溜め息は?」

 見ようには馬鹿にしたような溜め息の吐き方だったから、目につかれたのだろう。私は思わず息を呑んで、その様子を見張っていた。すると…、

「大変失礼をいたしました。5番プレイヤー、ファイブカード。よって、5番プレイヤーの勝利となります」

 突然にディーラーから声が上がった!!

―――え?ええ!?どういうこっちゃ!?!?ディーラーがハンドを読み間違えたのはわかったけど、ザクロの勝利って!?!?

「ファイブカードだとぉぉおおお!?!?」

 ロイヤルストレートフラッシュのカードを出したつぶらな瞳のおっさんを筆頭に、他のプレイヤー達からも雄叫びが上がる!!

「本当だ!!ジョーカーを持っていやがったのか!!」
「なんて事だ!!オレ達の負けじゃないか!!!!」

―――え?え!?おっさん達の負けって、どういう事!?!?

「通常、ポーカーゲームにはジョーカーは使用しないんだけどね、このトパーズはディーラーの気分でジョーカーを参入してOKなんだよ」

 全く状況を把握出来てない私が口をあんぐりとして固まっていたら、隣に例のボーイが現れて説明をし出した!

「へ!?ジョーカーって!?」
「ポーカーに使用されるジョーカーはね、好きなカードの代用が出来るんだ。いわば“救いのカード”と言われている。最強のロイヤルストレートフラッシュのカードでもフォーカードにジョーカーが入ると、“ファイブカード”というロイヤルよりも強いカードが出来るんだ。まぁ、通常はジョーカーを使用しないから、ロイヤルストレートフラッシュが最強だと思われがちなんだけど、本来はファイブカードが最上級なんだよ」
「そ、そうだったの!!!!」

 ルールを聞いた時もジョーカーとファイブカードの存在がなかったから、知らないのは当たり前だけど、そんな隠れカードがあったとは!!

「通常ジョーカーを入れないのは、ロイヤルストレートフラッシュよりもファイブカードの方が出る確率が高いのと、他のカードの代用も出来たりと、ゲームの面白味がなくなるっていう理由なんだ。でもここのカジノはゲームをより面白くする為に、ジョーカーはディーラーの判断で入れさせるんだ」

 私がボーイから説明を聞いている間に、ザクロの前には大量のチップが置かれ、同時に他のプレーヤーからの悲痛の声が上がった!ギャラリーからは大きな歓声が上がる!!(一部ザクロを狙っていたおかしな輩達からのしゃくり上げる声も交じっていたが!)

 私も周りの雰囲気に呑まれ、歓喜に満ち溢れた!!

―――す、凄い!!ザクロ、アンタやっぱり強運の持ち主だ!!

 色々な気持ちが飛び交い、大きな歓声が上がる中、ボーイは最後に微笑んで、こう言葉を残した。

「今日のジョーカーの絵柄は“女神”様のようだ。女神は彼に微笑んだみたいだね」

❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤

―――これさえなければ、完璧な喜びを感じれるんですけどぉぉおお~。

 例の如く、私はザクロが勝ち取ったチップの荷物持ちをしている!あのファイブカードで見事勝利したポーカーゲームの後も、ザクロはいくつものゲームをプレイし、勝ち続けた!…のはいいけど、もう今日はかつてない激重だというのに、ヤツは平然として、私に持たせていた!

 しっんじられない!!こんな重たいの女のコは持たないっての!!さすがに今日のこの重たさの荷物持ちはないと、ザクロへ訴えてやると、

「なら、騎士になるのを諦めろ」

 って、アッサリ痛いところをついてきやがった!! それに煌びやかな格好の自分がそんな荷物を持っているのは格好悪いってさ!!見た目気にするなんて隠れナルシーかよ!!

 そして今日のゲームを終えた私とザクロはホールを出て、ひっろーい回廊を歩いていた。もう!迷路のように入り組んだ回廊だから、出入口の扉まで数十分はかかる!

「もう!!重たいから、ちょっと休憩!」

 歩けば歩くほど、ズシズシと重くなっていく荷物に、私は我慢の限界を感じて叫んでいた!

「なら、オマエは一人で帰ってこい」
「自前の馬車は持ってないっての!」

 なんてヤツだ!遠回しに休憩取るなって事じゃん!!こんの鬼!悪魔め!!私はプンスカしながら、踏ん張っていた!

「…もう奴等に後はないだろうな」

 ふと、ザクロが一人呟くように漏らした。

「え?後って?」
「この数日で奴等は莫大な賭博金を費やした。持ち金以上をつぎ込み、カジノ側に借金まで背負っている」
「って事はスッカラカン!じゃぁ!おっさん達、仕事を再開せざるを得なくなって、黒幕の魔の手から離れようとするよね!」

 今回の目標が達成すれば、シャークスは黒幕とヤツの目的が暴けるかもって言っていたし!やったぁ!!

「………………………………」

 でも、ザクロからはなにも返答がなく、まぁ基本ヤツは私の言葉はシカトするか反論するかのどちらかだからね!私はこの時のヤツのだんまりを大して気にはしていなかったのだった…。!





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