第十二話「隠されたジョンブリアンの裏側」




 チラッとシャークスに目を移すと、彼は微笑みながら、

「さぁ、スターリー、立っているのもなんだから、君も座って話を聞くんだ」

 私にもクラウンの椅子を用意してくれた!

―――うっわ~!金銀ゴッテリの椅子!

 私はその椅子に恐々と腰をかけた。しかもめっちゃ王近いし!対面に座っていて、超緊張するんですけどぉぉ!!そんな私の緊張は知られる事なく、シャークスは私の横に立ち、王へと話を進めた。

「王、早速ではございますが、例の話をいたしましょう」
「そうだな」

 シャークスの言葉に王はより深く真剣な表情をされ、低い声で応えた。例の話とは…。きっと、この首都ジョンブリアンで起きている不穏な出来事だよね?

「スターリーと言う名だったな?」
「は、はい」

 王から名を呼ばれ、ガッツリと視線が合わさると、私は一気に緊張が高まって、心臓がバクンバクンと鳴る。

「この首都ジョンブリアンだが、ここ数百年もの間、戦争や内乱と言った大きな出来事とは無縁に過ごしてきた。それは隣国から遠方の他国まで和平協定を結んだ事により、平和が保たれ、多文化の交流も活性し、政治経済は大きな発展を遂げた。そして、この国は首都まで至った」
「は、はい」

 おぉ~、歴史から入るんですか!?うぅ~、実はこの手の分野は苦手なんだよね!眠くならないようにしなきゃ!なんたって、相手は一国の王だからね!

「しかしだ、ここの数ヵ月の間に不穏な出来事が続くようになった」

 私は思わずゴクンッと喉を鳴らして、王の次の言葉を待った。聞いていた不穏の出来事とは…?

「事の始まりは3ヵ月前だ。長年、我が国が望んでいたアイビーグリーン国と、やっと和平協定が結ばれる事となり、契約式に向け、貴国に送る代物の手配をしていた。しかし、不幸な事にもその代物が届かないと一報が入ったのだ。原因は貿易船の難波であった。結果代品を使用し、事は大きくならずに済んだのだが、それで事の解決には至らなかったのだ」
「といいますのは?」
「組員達は突如思わぬ荒波に襲われ、貿易船は数十日もの間、海の上を彷徨っていたと発言していた。しかしだ、荒波が起こった地帯で、そのような出来事は起こっておらぬという情報を得た」
「え?…それって?」

 王の伝えたい意図が掴めず、私が言葉に詰まっていると、

「難波は意図的に作られた出来事ということさ」
「え?」

 今まで黙然としていたシャークスが補足の説明を加えてきた。

「荒波が起こった海の地帯は他国が主要しているルートの一つだったんだ。だから、そんな大きな荒波が起これば、当然情報が入るだろう?」
「…そうだね」

 彼の言葉を耳にして私は釈然とした。

「組員達の証言を疑うわけではないけれど、今回の出来事は国と国を結ぶ大事な事柄だったからね。容易には事を済ませられなかったんだ。他国からの情報を得て、信憑性に欠けると疑ったオレ達は該当の組員達にきつく詰問をかけた。だけど、彼等は口を揃えて、実際に荒波は起こったと一点張りの証言をするだけだったんだ。何故、彼等がそうまでして偽るのか真相は未だ闇の中だ」

 シャークスは今までに見せた事のない真剣な表情をし、言い放った。

「証拠不十分で彼等は釈放する事になった。それから数日後に今度は別の事件が起こったんだ」

 王にアイコンタクトを送り、彼等は頷き合う。そして再び王が口を開いた。

「以前から商業や水産業ではある一定の商人や漁師が生産を占めており、割合に差が生じていた。生産の少ない者への安定を図る為にも多くを占めていた者へ生産の規制をかけたのだ。その直後だ。独占者達が一斉にストライキを起こしよった」
「ストライキですか?でもそんな事をしたら、彼等の生活に支障をきたしますよね?」

 一時的に反抗を示す事は出来ても、後先を考えると、メリットのある方法には思えないよね?

「そう思うよね?でも彼等は資金に余裕があるから、ある程度は生活に困らない。でも代わりに彼等から購入していた客が困惑し始めたんだ」

 私の質問にシャークスが答えた。

「元々生産が少なった商人や漁師達は引き続き商売をしていたんだよね?お客さんは彼等達から購入は出来なかったの?」
「出来たよ。でもその彼等達からの購入は以前の生産者達よりも値が高くついたんだ。元の生産者達は物を占めていただけあって安値での卸しや販売をしていたからね。でも生産の少ない商人達も決して違法に当たる値で売りつけていたわけではないから、こちらも彼等に金額の規制をかけるわけにはいかなかったんだ」

 彼は心底困ったという表情を見せた。

「それで、お客さんはどうなったの?」
「とりあえず国が援助をして、なんとか落ち着いたよ。それでも以前の値よりは少しばかり高いという事実は残っている」
「そうなの。元々の生産者の人達は?」
「未だ仕事には戻る気配はないね」
「え?」
「彼等の目的も貿易の組員達同様にわからないんだ」

 シャークスも王もかなり複雑な表情をしていた。確かに意図が見えない出来事に戸惑うのは当然だよね。私もおのずと表情が曇ってきた。だけど…。

「さらに…」
「まだあるの?」

 さっきの出来事で終わりかと思いきや、さらに続きがあるようだった。私は瞠目して、思わず口がポカンと開く。

「不幸な事にね。次に起こった出来事がとても厄介なんだ。なんせ国全体で関わっている事だからね」

 シャークスの言葉に私は息を呑んだ…。。





web拍手 by FC2


inserted by FC2 system