Loop7「愛する彼の為に純潔を捧げます」




 ――バクンバクンバクン。

 胸の内側が暴れていて、もういつ爆発してもおかしくない。すっぽんぽんで見つめ合うとかなんなのさ、この状況シチュエーション! それにライのネットリした視線が、超絶に熱っぽくて身が焦げそうだ!

 その表情で何人もの女を昇天させられそうだよ! オレは恥じらいの色を見せてドキマギとしていた。そんな様子が少し怯えたようにでも見えたのだろうか。ライが優しい声色で問うてくる。

「怖いか?」
「怖くは……な……」

 怖くないと答えようとしたが、その時、チラリと視線が滑り落ちた。

 ――!!

 オレはおったまげて呼吸が止まる。決して見てはならぬもの・・を目にした! さっきライの肉体美は上半身だけを見たが、まさか下半身に想像を遥かに絶する凶器を聳え立たせているとは誰が思うんだ!

「無理するな。オマエの躯、強張って小刻みに震えている」

 ライにはオレの緊張が丸わかりのようだ。今のオレは半端ないほど緊張している。そこにそっとライの右手がオレの左手を包んだ。そして指が絡み合うと、緊張が少し緩和されたように感じた。

「大丈夫だ。最初は痛いかもしれないけど、耐えられない時は無理せずに言ってくれ」

 ライの言葉にオレは首を縦に振った。心遣いも手の温もりからも優しさが伝わってくる。オレはこの先に進む覚悟を決めた。でもやっぱりこの蛙がひっくり返ったような体勢が死ぬほど恥ずかしい。顔にじわじわと羞恥が集約して、すぐにでも発火してしまいそうになる。

「挿れるぞ」

 ライに言われ、オレはぎこちなく頷く。

 ――やっぱそれは無理なんじゃ!

 欲情しているライの熱杭は普段の状態とはまるで違う。形というより大きさだ。まさかここまで大きく勃つだなんて思わないだろう!

 ――無理に入れられたら、間違いなく膣内が裂かれる!

 そんな危惧を感じつつも、熱杭が秘所へと宛がわれ、オレはグッと息を詰めて見つめる。そして熱杭が秘唇を割って内部へ入ろうとしていた。

「うっぁあ……」

 強烈な圧迫感にオレは呻き声を上げた。それだけじゃない。切るような鋭い痛みに刺されて躯が戦慄く。ライも目を眇めて顔を歪ませていた。

「思った以上に狭いんだな」
「ラ、ライ、これ以上は無理だ!」
「まだ先っぽしか入ってないんだけどな」
「うぇ?」

 ライは苦笑いして答えた。こんな痛みがあるのにまだ浅い位置なのか?

「レイン、もう少し頑張れるか? もっと躯の力を抜いてくれ」
 言われて気が付いた。りきむように力が入りまくっていた。言われた通りに力を抜くと、熱杭がメキメキと音を立てるようにして沈んでこようとするが、進もうとすればするほど、痛みを広げられてオレの瞳は涙で潤んでいく。

「やっぱオレの躯には無理なんだよぉ」

 ――本気で離して欲しい。

 話には聞いた事があるけど、ここまで痛いなんて思わなかった。

「今まで入らなかった事はないから大丈夫だ」
「ふぇ?」

 オレの意識は猛烈な痛みでいっぱいだったのだが、今のライの言葉に妙な違和感を覚える。しかし、痛みが重ね重ねに波打って余計な考えが出来なくなった。

「うぅー……」
「レインもっと力を抜け。力が入ると膣内が開かない」
「そ、そんな事言われてもすげぇ痛いのに」
「オレの肩を噛んでもいいから」

 そう言ってライは躯を落として、オレの躯と密着させる。

「肉噛んだら痛いだろ!」

 あまりの痛さでオレは乱暴な口調で叫んだ。すると唇を奪われて割られ、舌を搦められる。下半身の痛さは死ぬほど痛いってのに、蜜よりももっとトロトロの甘さが口内へと広がる。

 痛みからオレを離そうと、ライはキスしてきたのだろう。オレはほふられるような痛みと蕩けるような甘さに挟まれて錯綜する。もうなにをどうしたらいいのか訳も分からず、状況に身を任せた。

「うっわあ!」

 徐に進んでいた熱杭がズズズッと勢い良く沈んだ時、胸が押し潰されそうになって、オレはライの唇を離して叫んだ。

「い、痛い」

 死ぬほど痛くて涙がボロボロに出る。

「ごめんな。でもちゃんと全部入った。有難うレイン」

 ライから嬉しさが滲んだ声でお礼を言われ、チュッと額にキスを落とされた時、胸がジーンと熱くなった。

 ――本当にライと繋がったんだ。

 クソ痛いっていうのに堪らない感動を覚える。なんだ、この感情。

「これで終わった? オレ頑張った?」

 オレは涙ぐんでか細い声で問うと、ライは口元を吹き出したかのように緩めた。

「うん、レインは頑張った。でも残念だけど、これで終わりじゃないんだ」

 答えを聞いて不安がじわじわとオレの胸に押し寄せてくる。

「これ以上の痛み堪えられない」
「うん、でももし堪えられたら、痛み以上の快感を味わえる。オレはレインと一緒に味わいたい」
「うぅ……」

 ズルイ言い方だ。そんな風に言われたら、嫌だと言いづらいじゃないか。

「分かった。もし気持ち良くならなかったら、マジで殴るからな」
「努力する」

 オレが恨めし気に承知すると、ライは苦笑して応えた。それからオレの足を抱え直し、腰を引いてまたゆっくりと熱杭を沈める。やっぱりとんでもなく痛かった。抜き差しされる度に擦れ、内部を傷つけられているようで辛い。

 それと胸にグッと圧迫感があって呼吸が浅くて苦しい。ライの顔も苦しそうに歪んでいる。何度か試行錯誤しているのに、オレの膣内は熱杭を何度も押し出そうとして、拒否しているようにも見える。ライも全く気持ち良くないんじゃないのか?

 ――オレの躯がおかしいのか? 元は男だし普通の女とは違うのか。オレの躯だとライを受け入れられない?

 そう思ったら急に胸の奥が軋み始める。そこで突然、意識がぶわっと弾けた。

「ふぁんっ……」

 ライが親指の腹でオレの乳頭を撫で回している。下肢は相変わらず焼けるような痛みが走っているが、乳頭からの快感は負けずにオレを責め込む。同時に二ヵ所を責めるだなんて、初心者のオレには無理がありすぎる。おまけにこれはとんだ序の口だった。

「んあっ!」

 さらに第二の襲撃が来た。今リアルに熱杭が嵌められている、その上の実を嬲られていた。

「やぁんっ、あんっあんっ」

 ここでまさか自分の口元から、甘ったるい声が洩れるなんて驚きだった。それだけ得る快感は強烈だった。痛みさえ覆い被せるような猛烈な快感。

「やっぱこっちの方が感度はいいな。それにちゃんとここが解れてきてる」

 ライは熱い吐息と共にオレの反応を分析する。さっきまで結構苦し気な表情をしていたのに、今はとんでもない色香を放っていて、それにオレは血が騒ぐような高揚を感じていた。

「んっ、んあっ、はあっ、あんっ」
「少し速くするな」

 声音だけでいうなら、もうオレに痛がっている様子はない。だからライは段階を進めようとしていた。

「あんっはぁんっ」

 少しずつ痛みが緩和されていく。ライの言う通り膣内が解れてきているのかもしれない。すなわちそれは……。

「オレの事、受け入れようとしてくれて嬉しいよ、レイン」

 言っちゃったよ。オレがちょうど思っていた事をライが口にした。内容はこっ恥ずかしいが、ライの綺麗に綻ぶ笑みを見たら、羞恥なんて彼方何処かに飛んで行った。暫くの間、一定リズムで抽迭が続いていた。

 そうやって時間をかけて、ライはオレの痛みを解していった。互いに体力にがあるから休む事無く行為は続き、その内にライが穿つと、グヂュグヂュッと溢れ返るような淫音が漏れるようになる。

 オレの感度は急速に上がっていき、喘ぎ声が絶え間なく零れ続ける。ライの息遣いも切れ切れとなって、穿つ熱杭も熱を増して大きくなっているように感じた。ライもオレの中で感じてくれているのだろうか。

 ――嬉しい。

 そう純粋に思った。互いに同じ快感を味わえるこのひと時はなんて贅沢で幸せなのだろうか。こんな幸福感を味わえるのも女になれたからだ。初めて女になれた事に喜びを感じた。全身がもっとライに近づきたい、繋がっていたいという気持ちが生まれる。

 ――この時、初めて気づいた。

「はぁはぁ……オレ……ライの事が……好きだ。はぁ…どうしようもないぐらい……愛してる」

 オレは気付いた気持ちをすぐに口へと出した。

 ――ずっと心に引っ掛かっていた「何か」の正体がやっと分かった。オレはライに「恋」をしている。

 キャメルを助けたあの日、ライがオレよりもキャメルの方へと駆け寄った時の胸のチクンや、キャメルと両想いだと思っていたライに嫉妬していたと思っていたけれど、あれはライにではなくてキャメルに嫉妬・・・・・・・していたんだ。

 男だった自分がライに恋だなんて変だって思って、気付こうとしなかったんだろうな。でも恋する感情は確実に表に出てきていて、この瞬間になってやっと気づく事が出来た。認めてしまえば不思議なぐらい幸福に思える。

「レイン、オマエ……」

 ライは今にも泣きそうな、だけどとても幸せに満ち溢れた顔をしている。オレの愛の告白に感動してくれたのかな。それがまたオレには嬉しくて堪らなかった。

「悪い、もうオレ余裕がない」

 今のライの言葉は大変な意味を持つものだった。さっきのオレの愛の告白でライが必死に保っていた理性を綺麗サッパリに吹き飛ばしてしまったようだ。

「んんぅっ!」

 ライは躯を屈めてオレの唇を深く塞いだ。貪るような激しい口づけが始まる。舌がネットリ濃密に絡み合い、鼻息が全く追いつかない。瞬く間に口内は唾液で溢れ返り、はしたないほど口元から滴っていく。

 激しいキスをされている間もガンガンに熱杭は穿たれていた。最初オレは躯が対応し切れず、痛みにしか感じなかったのだが、激しさの中に燃えるような愛情が渦巻いている事に気付くと、徐々に苦しさが快楽へと変わっていった。

 それから唇を離され口元が自由になると、辺り一面がオレの嬌声と肌がぶつかり合って弾かれる水音一色に染まっていた。足を大きく開かされて結合部は丸見え、そして腰をガッチリと掴まれ、嵐の如く蹂躙される。

「あんっあんっ、ふぁあっん、あぁんっ」
「はぁはぁっ……」

 灼熱に呑み込まれオレ達の躯は燃え上がって汗が迸り、息遣いも獣のように荒々しい。この時点で痛みは全く払拭されていなかった。でもライが穿つ度に「愛している」と言われているようで、もうこれ以上ないぐらいの愛情を注がれているように思えた。

 一つに溶け合って生まれた充溢感はそのままオレ達を高みまでもっていった。躯がピクピクと痙攣を起こすと、ぶわっと絶頂の波が這い上がってくる。ライの熱杭も熱を上げて一段と膨張した、次の瞬間!

「くっ……」
「ふっぁあああん!」

 パァン! と世界が弾け、ドクドクドクと膣内に熱い何かが放散された。喉が張り裂けそうなほど、叫んだオレは数秒意識が飛んでいた。三度目の絶頂は二度目までとは全く違って、世界が一変したように思えた。

「はぁはぁ、レイン、大丈夫か?」

 ライは肩で息をし、心配そうにして問うてきた。オレはまだ朦朧としていて、どういう状況なのか把握出来ないが静かに頷いた。

「よく頑張ったな」

 ライがオレの頭を優しく撫でて褒めた。

「レイン、さっきの言葉すげぇ嬉しかった。オレを愛して受け入れてくれて有難う。今オレは最高に幸せだ。愛している」

 そう愛を囁くライは優しくオレの躯を包み込んだ。ライの心臓の音と温もりを感じる。幸せだ。幸せ過ぎて怖いぐらいだ。

「オレも同じ気持ちだ。ライ愛してる」


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 ふと自分が心地好い微睡の中にいる事に気付く。幸せ絶頂の夢の中のようで目覚めたくない。このままオレは深い眠りにつこうとしていた。なのに何かが気がかりを感じて、意識が目覚めてしまった。

 ――なんだ? オレなにしていたんだっけ?

 徐々に視界が明確になっていくと、隣にスヤスヤと眠っているライのドアップがあって度肝を抜かされる!

 ――うわっ!

 思わず声を上げそうになった口を手で押さえる。気持ち良さそうに眠っているライを起こすのは悪い。それからオレは視線を巡らせる。

 ――確かオレは……ライとガッツリ結ばれたんだよな。

 散々躯で愛を語り合った。オレ初めてだってのに、一度火を点けたライは獣の如くオレを無茶苦茶に愛した。荒れ狂う嵐よりも燃え上がる炎よりも熱かったぞ。

 ――今何時だろう?

 窓の外はスッカリと暗い。時計に目を移すと夜の十時を少し過ぎたぐらいだった。その時刻を見た時、オレはある重要な事を思い出した。

「反乱軍は!?」

 オレは躯を起こす。この時間は確か反乱軍が王宮に侵入して……ライが殺されていた時間だ。ライは今オレの隣できちんと息をして眠っている。ホッとオレは胸を撫で下ろすが、王宮が気がかりだ。

「反乱軍は王宮を攻めていないぞ。というか攻められないよう事前に采配を振ってある」

――え? ……今の声。

 オレは心臓が飛び出しそうなほど驚いた。今の声は……ライだ。彼は目覚めていた。オレの心臓はドクンドクンドクンと爆音を立てる。ライはゆっくりと起き上がり、真っ直ぐにオレの瞳を捉える。

「どうして……いやどうやってオマエは反乱軍の存在を知った?」
「そ、それは……」

 ライから鋭く問われ、オレは視線を逸らす。ループする前の出来事なんて、とても答えられないし、女神との約束もあって話せない。

「まぁそれはいい。話しておくが今夜王宮に入る予定だった反乱軍は王政に不満をもつ民衆の集団だ。そして、それを利用した他国の殺し屋が混ざっていた」
「え?」

 思いもよらない話をされて、オレは逸らしていた視線を合わせる。ライの眼差しはさっきとは打って変わって怖かった。

「殺し屋の目的は王宮の珍しい秘宝を狙っていたみたいだ」
「ちょ、ちょっと待て! なんでそんな話をライが知っているんだよ!」

 反乱軍と戦ってもいないのに、なんで詳細を知っているのか不思議でならない!

「今日の計画が実行される前に、殺し屋の主犯者を捕まえているからさ」
「え?」
「最近オレが姿を現さなかったのは主犯者を捕まえる為だったんだ」

 オレはみるみると目を見開く。ライの「急いで終わらせたい案件」というのが、反乱軍と関わっていた殺し屋を捕まえる為だったのか。

「主犯者ってよく捕まえる事が出来たな」
「それはレイン。きっかけはオマエがくれた」
「え? オレ? な、なんで!?」

 ――な、なんでオレが関係しているんだ!

「オマエがキャメルを助けた時に捕まえた男が吐いた」
「え? もしかしてソイツが主犯だったのか?」

 こう言っちゃなんだが、あんな弱っちい奴が殺し屋だなんておかしな話だ。その違和感は当たっていた。

「いや、あの男は違う。あれは利用された駒に過ぎない。そして他にも駒は多々いた」

 ライはオレの言葉を否定した。

「それじゃ主犯者は誰だったんだ?」

 オレの問いにライの表情は無機質へと変わって、周りの空気が澱んだ。なんだこの変化?

「ライ?」
「レイン。信じ難いかもしれないがこれが真実だ」

 ライの瞳が恐ろしいほどギラリと光る。

「主犯者は……あのキャメルだ」

 ――え?





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