Loop5「初めてづくしは蕩かされます」




 さっきよりももっと深い口づけで、唇はほんの隙間もないほど、密着している。全く嫌悪感はないのに、どうしても拭えない違和感がある。

 ――チューが禁断の行為にしか思えない!

 十日前まで正真正銘の「男」だったオレが、今いくら女になっているからって、そうそう男の感覚は拭えない。これは♂同士でチューしているとしか思えなかった。そのムズムズ感とふわふわした甘い感情に挟まれながら、オレは戸惑っていた。

「ふ……わぁっ」

 思いがけない出来事が起きて、口元から驚きの声が洩れた。ライに唇を割られ舌を差し込まれたのだ。ライの舌はなにかを探るように奥へと入っていき、そしてオレの舌を捉えた。触れ合った瞬間、オレの躯はビクンと小さく跳ね上がり、心臓の音に異常をきたした。

 ――なにをどうしたらいいんだ!

 チュー自体が初めてなのに舌を絡ませるなんて、そんな高度な技術はオレにはない。でも明らかにライの舌がオレを求めているのが分かり、オレは思案したのち、たどたどしく舌を伸ばしてみた。

「んっぅ……」

 舌を吸い付かれ、ライの舌はオレの舌とその周りを滑らかな動きで踊る。

 ――うわっ、なんだ、感覚!

 唇だけが触れ合ってる感覚とは全く違う。直接脳髄へビリビリと刺激され、さっきまで感じていた違和感なんてドロドロに溶かされてしまった。そしてオレの胸の内に、なにかの感情が芽生えているような?

 ――なんだ、この感情。凄くドキドキする。

 この感情をオレは何処かで感じた事がある。その答えを見出そうとすれば、快感が泉のように溢れ出てきて、オレの思考を鈍らせた。オレの舌は相変わらず拙い動きをしているのに、確実に快感に酔わされている。しかしだ。

 ――い、息が出来なくて窒息してしまう!

「んんぅー!」

 感じている声とは明らかに異なる吐息をオレが洩らせば、ライがオレの様子に気付いて呼吸するタイミングを与えてくれた。そして「鼻で息をするんだぞ」と、クツクツと笑われた。初心者だと笑われたのか。

 ちょっと腹は立ったけど、どんどん酔いが回ってきてオレの頭の中は真っ白に染まっていく。ライの舌はオレの口内を味わうように、ゆっくりゆっくりと回って確実にオレの舌と溶け込もうとしていた。触れられる所すべてが快感を覚えていく。

 それからオレ達は熱い吐息を零しながら、キス一色へと染まっていき、互いの唾液が渾然一体となって淫音を漏らすようになる。こんな水音なんて知らない。オレは初めてずくしで、もう頭がパンクしそうだった。

「んっ、んぅ……」

 口元から色付きのくぐもった声が零れる。今の声でやっぱり自分は女になったんだと、改めて実感した。そこにもう一つの出来事が起こって、さらに女だと決定づけられる。

 ――!!

 ライの手がオレの左の乳房ちぶさをやんわりと包み込んだ。驚愕したオレは閉じていた視界を開く。チューに続いてこんな感覚は初めてだ。なんとも言えない甘い痺れが再び生み出される。

 男の時に当たり前に有ったものが無くなり、逆に無かったものが付いて、初めて膨らんでいる自分の胸を見た時、オレはとんでもなく動揺した。湯浴みの時も着替える時もまともに胸を見ていないし、ましてや触った事なんて一度もない。

 そんな禁断の膨らみにライは躊躇いもなく触り、しかも揉んだり緩やかに回したりして、その間も互いの舌は淫らに繋がったままだ。オレの口元から切な気な喘ぎ声が洩れているというのに、ライの舌は容赦なくオレの舌を嬲った。

「レイン、その顔ヤバイな」

 ふと唇を解放されたと思ったら、ライが開口一番にそう言った。

 ――顔がヤバイって?

 ……そうか、蕩け切ったオレの顔が不細工だって意味か。
「顔が悪いのは元からだ」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ!」
「え? そうなのか?」
「レイン、雰囲気ばっか壊すなよ……っていってもオマエは無自覚なんだろうけどさ」
「?」

 ライが複雑な表情で溜め息を吐いた。どうやらオレはライの気持ちを萎えさせてしまったのか?

「ライ、オレ……」

 オレが話し掛けようとした時だ。フッとまたライの表情が熱を含んだ真顔になって、オレは自分の言葉を呑み込んだ。

「レイン、じかに触ってもいいか?」
「え?」
「ここ」

 ――!!

 ふわっとまたライがオレの乳房を包み込む。そこに全神経が一目散に走ってくる。ドクンドクンッと心臓が今にでも胸からブチ破ってきそうだ。

 ――直に触るって……。

 駄目だ! 想像するだけで気絶してしまいそうだ! オレはもう考えるのをやめて流れに乗ろうと決めた。

「わ、分かった」
「じゃあ、寝台に行こうか」

 オレが返事をすると、ライはごく自然に物凄い事を口にした。

 ――ベ、ベッドか! そんな本格的にやろうとしているのか!

 オレは驚きの色を露骨に出してしまったらしく、ライが控えめに問いてきた。

「嫌か?」

 咄嗟にオレはフルフルと顔を横に振った。するとライから手を取られて寝台に着くと、背中をゆっくりと寝台へと沈められた。リラウサはオレの隣でゴロンだ。ライはオレの躯の上に圧し掛かってきて、すぐに乳房には手を伸ばさなかった。

 最初は額に、次は睫毛に、そして頬にまでキスを落としていく。動物を愛でるような優しく甘やかなキス。一通り注がれると、ライの唇はオレの顔から逸れ、今度は耳へと移る。そこで耳朶みみたぶや耳輪を甘噛されて、オレはビクついた。

 ――そ、そんな所って口づけるとこなのか?

 オレの性知識はあまりにも乏しくて、何故そんな所にライが口づけるのか、全く分からなかった。だけど耳穴に舌を這わされた時、ゾクゾクと背筋が戦慄いて、初めてそこが性感帯の一つであると知った。

「ひゃっ、んあっ」

 淫らな声が上がってオレは慌てて手で口元を押さえた。……のは無駄な行動だった。一度でも甲高い声を上げたら最後、その場所を執拗に舐められ、声を止める事なんて出来なかった。

 そこから唇は移動を繰り返し、首や鎖骨にもチュッと吸い付くような口づけを落とされ、とうとう胸元までやってきた。まさか胸にまで口づけを落とされるではないかと、オレは内心ドキドキしていた。そして、

「あっ」

 オレは声を洩らした。ライがオレの胸元をグッと開かせて下着をずらすから、生々しい女の象徴がコロンとまろび出た。それを目にしたライがハッと息を呑む。

「でかいんだな」

 ライは一人呟くように零した。うん、素直な感想を有難う。オレも初めて見た時にそう思ったよ。女の胸は母親のしか見た事がないけど、絶対オレの胸は大きんじゃないかって思ってた。

 まだ自分の胸を実感出来ていなかったが、こうやって他人からマジマジと見つめられると、ジワジワと羞恥が湧き上がって自分のものだと認めざるを得なくなる。異様に恥ずかしく思えて、ライから視線を逸らした時、ふわっと乳房を掴まれオレは驚きの声を上げた。

「ふっ……あぅ」
「手に収まらないな」

 そう言ってオレの乳房を掬うように揉むライは妙に色めき立っていて、雄の本能を垣間見た気がした。最初は揉まれる感覚が不思議で、自分が感じているのか分からなかったが、ライの手つきが複雑になってくると、厭らしい触り方をされているみたいで、躯が妙に疼き出した。

「んっ、ふっぁあ」

 勝手に色声が出てオレは堪らない気持ちとなり視界を閉じる。でも触られる感覚だけで背筋になにかが這い上がってきて、躯がフルフルと打ち震えてしまう。

「柔らかいと思ったけど弾力があるな」
「触り心地が良い」

 と、ライは素直にオレの乳房の感触を吐露するが、そういう事は心の中で秘かに思ってくれ。なにかを言うライの声が妙に色っぽく聞こえて、オレの躯をどんどんおかしな方向へと連れていきそうだ。

 ――オレの考えは浅はかだった。

 身を結ぶってこんな厭らしい事されるのか。意味は理解していたつもりだけど、いざ本番となって、きちんと考えていなかったと実感した。そんな事を頭の隅で思っていた時だ。

「ふあっ」

 いきなりビリビリッと閃光が弾けて戦慄おのののかいた。

「な、なにして!」

 ライが桃色の乳頭を指で挟んでクリクリと回す。躯にビリリとした衝撃が迸って、オレは言葉を失った。乳房を揉まれている時は柔らかな快感が波打つ感じだったのに、今の衝撃は雷にでも打たれたような感じでとんでもなかった。

「や、やめっ」

 オレは顔が羞恥の色へと染まって涙目になる。こんな厭らしい行為は今すぐにでも止めて欲しい、そう思っていたのに……。

「痛むか?」

 ライから優しい声色で問われてしまうと、止めてという気持ちがしぼんでしまった。そしてオレはフルフルと首を横に振る。痛くはない、経験したの事のない快感に呑まれるのが怖いのだ。

「そうか、良かった。じゃあ、これは?」
「んっ……ぁあん!」

 ライが指の腹で胸の先をグルグルと転がし始める。さっきの何倍もの快感が渦を巻いて、オレの躯を支配していく。

 ――なんだ! 今の色っぽい声は!

 あんな声を上げてしまって、オレは死んでしまいたい! そんな心でジタバタしているオレとは違ってライは冷静にオレの反応を観察していた。

「これは嫌か?」
「あっ……んんぅっ」

 今のライの聞き方はズルイと思った。嫌ならこんな甘ったるい声は出ないじゃないか。オレがなんて答えたらいいのか分からなく戸惑っている間も、ライの指は乳頭を転がし続けている。オレはその行為をポーと、恍惚を帯びた瞳で見つめる。

 ――乳首ってこんなに勃っているものだったか?

 ピンと張ったように勃っているし、色も赤くなってきている? きっとこれはライに触られて変になったんだ。オレは無意識な内に恨めし気な視線をライに送った。するとライはなにを思ったのか、

「んあっ」

 スッカリと屹立したオレの赤い実を唇に挟んだ。

「な、なっ、なにして!」
「指で弄られるのが嫌なのかと思ってさ。これなら痛みも和らぐだろ?」
「そ、そういう意味じゃ……ひゃっ」

 ライはオレの言葉を聞かずに赤い実を吸う。そしてオレが困惑している間に潤いを帯びた舌で乳頭を柔らかに嬲る。

 ――なんだ! この卑猥な光景!

 オレは心の中で誰に問うわけでもなく、一人突っ込んだ。赤くに染まった実をライの舌が吸い付いたり、甘く挟んだり、遊ぶように弾いたり、撫でるように這わせたりと、バリエーション豊富に弄る。

 それだけではない。もう片方の胸の先も器用に指で転がしたリ、捏ねくり回したリ、よくそんな舌と指を同時に弄れるものだと感心してしまうほど。オレの方も自分の意思関係なしに喘ぎ声が出まくって嫌になる。

「あっ、んぅっ、あんっ」

 自分が凄くいけない事をしている気分になる。そこにさらにライの追撃が始まり、オレは躯を飛び跳ねて目まで白黒させながら喘ぐ。

「んあっ、やぁあ」
「良かった、ちゃんと濡れているな」

 ってライがオレの第二の大事な部分をフニフニと触り、安堵した表情を零す。

 ――え? え? ……あの?

 いつの間にオレのスカートは捲り上がっていたのですか? いや、いつの間にスカートを捲り上げたのですか、ライさん? さっきまで散々オレの乳房を貪っていたというのに! しかも今フニフニした場所は超禁断の場所ですから!

「ラ、ライ、そこは駄目だ!」

 テンパッているオレは突発的に声を上げた。

「なんで駄目?」

 そう問うライの声色が砂糖菓子のように甘々で、オレの胸はきゅ~んと痺れ、ズクズクと熱い疼きが溢れ出てくる。

「そ、それは……そ、そこが、だ、大事な場所だから」
「うん、知ってる。オレとレインが繋がる場所だもんな」
「!?」

 オレはひょぇ! と、息を呑み込んだ。大事の意味の取り方が違っています、ライさん。おまけにまたとんでもない事をサラリと吐いたよ。ライとオレが繋がる場所って……。

 ――うわぁああああ~~~~!!

 想像を絶します!! オレが煩悶していると、ライが突然オレの下着に手をかけ、それを脱ぎ取ろうとしていた。

「ちょっ、なにしてんだよ!」
「下着を汚したくないだろ?」
「ど、どういう意味だよ?」
「これ以上濡らしたら下着が汚れるから」
「!!」

 オレは未経験者だけど「これ以上濡らしたら」とか「下着が汚れるから」とか、内容が卑猥すぎる。カァーと自分の顔が茹でタコのように真っ赤になっているのを感じた。その間にライは器用にオレの下着を脱がせてしまう。

 ――ドクンドクンドクンッ。

 心臓がヤバイ、今にも飛び出して壊れそうだ。ライはそっとオレの内腿に手を掛けて足を開かせる。誰にも見せた事のない秘密の花園がライの目に晒されていた。

「やっ、やだぁ! こ、怖い!」

 オレは躯が真っ赤になりそうなのが怖くて、叫んで足を閉じようとした。でもライの腕がガッと滑り込んできて、閉じる事を阻まれた。

「レイン、怖い気持ちは分かるが、そこをきちんと解しておかないとオレのは入らない」
「……っ」

 オレは泣きそうになった。ライ、さっきから何かがズレているぞ! オレは挿れられるのが怖いんじゃなくて、晒している大事な部分を見られて恥ずかし過ぎて怖いだけだ! っていうか挿れるとか、話が飛躍し過ぎだろう!

「レイン、オマエ初めてだろ?」

 ライは真顔でとんでもない事を訊いてきた。

「なんでそんな事訊いてくるんだよ!」
「初めてだよな?」
「うっ」

 突き刺すような視線が怖い。な、なんでそんな恥ずかしい事を答えないといけないんだ! しかも「初めて」と答えなきゃ殺されてしまいそうな気迫だ!

「そんな恥ずかしい場所、オマエにしか見せた事ねーよ!」

 オレはヤケクソになって叫んで答えた。あ、でも騎士をやっていた男の頃は野郎同士で湯に入って見せた事はあったけど、女になってからあるわけがない。

「ならしっかり解かさないと」

 そう伝えてきたライはオレの足を屈折させて立たせ、左右に大きく広げた。とんでもない体勢に驚いてるのも束の間、ライがオレの足の間に躯を挟み込んで、秘密の花園へと顔を埋め込む。

「んぁあっ」

 生温かい肉厚が花園を潤わせ、オレは今日一番のよがり声を上げた。今どういう状況なのか理解すると、顔からボォオオ~! と、火を噴き出しそうになった。

「な、なんでそんな所を、な、舐めるんだよ!」
「先に指を入れたら痛がりそうだから、舌でしようと思ったんだよ」

 ご説明をどうも有難うございます。と、舐める理由は分かってもオレを纏う羞恥が拭えるわけじゃない。早くこんな恥ずかしい体勢から解放して欲しいと、オレはガチで目尻に涙を浮かべた。

「大丈夫、怖がらなくていい。ちゃんと挿れられるようにするから」

 ライがオレを優しく宥める。

 ――うぅ……。

 もうこの先を行く事は変わらないのか。そんな事を嘆いてる余裕はすぐになくなる。ライの舌がゆっくりとオレの花園の中へと沈んできたからだ。





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