Loop11「愛する家族と幸福が充溢です」




 オレにとって怒涛の嵐だった十日間が過ぎ去った。オレとライはキャメルとの対戦で怪我を負ったものの、早い処置をしたおかげで順調に回復していき、一ヵ月後には二人ともほぼ完治していた。

 キャメル率いる殺し屋と反乱軍だが、まず殺し屋一味は全員処刑となった。今まで奴等がやってきた悪行には必ず人の命が奪われていた。その数は四桁いく。処刑は免れず、数日前に刑が決行され、奴等はもう亡き者となった。

 反乱軍の方は処刑を免れた。軍といっても国に不満をもつ一般の民衆だ。ここで安易に処刑でもしたら、余計民衆からの不満は高まり二次災害が起こると危惧し、国は考慮した刑を下したそうだ。

 国は今後反乱が起きないよう真摯に対策を考えるようになった。そしてオレの方だが凪のように穏やかな日々が送れている。勿論ライとの仲も良好で充実した生活だった。

 ――チクチクチクチク。

 只今、自室で針仕事に専念中。店で着るエプロンのポケットに穴が空いてしまったから、チクチクと穴を塞いでいる。店はそれなりに繁盛しているが、それでも裕福とは言えないからな。

 見た目ギリギリまでは着る事にしている。もし新しいエプロンにする場合、布を買って自分で作る。買うより断然安いからだ。そんな感じでだいぶ針仕事が上達して、時間が出来ればオレはある事柄に没頭していた。

 それはライからプレゼントされたリラウサの洋服作りだ。最近リラウサブームは加速して、洋服を着させたバージョンが売り出されるようになった。それがまた人気を博し、バカ売れしているらしいのだが、如何せん洋服付きはお高い。

 だからオレは手作りの洋服を作るようになった。自分で作った洋服を身に着けさせると、格別に可愛く見える。何種類か作って自信がついたところで、今度は白いドレスを作って、今はそれをリラウサに着せていた。

 実はリラウサは男の子バージョンも出来て、女の子とついで売られる場合が多い。それは恋人同士や結婚した夫婦などに送られるプレゼント用だ。オレも激しくそれが欲しいのだが、けっこうなお値段がするから、自分でドレスを作る事にした。

 あとは男の子バージョンを購入して、正装の洋服を作れば完璧だ。それをもっていれば、ライと……しょ、生涯を誓え合える仲になれそうな気がしてさ。早くお金を貯めて♂リラを買わないと。今のオレの大きな目標であった。


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「どうぞ」

 王宮の一室にあるライの部屋へと招かれる。男の頃、何度か遊びに行った部屋だけど、女になってからは初めてだ。あれこれと邪推したオレはあまりに緊張して、プレゼントされたリラウサを連れて来てしまった。

 ――!?

 部屋に足を踏み入れた瞬間、オレは息を呑んだ。クラウンの椅子に座っている「あるもの」に釘付けとなったからだ。

「ラ、ライ、あそこに座っているのはもしかして?」
「あぁ、そうだ」

 ライが答えると、オレはバタバタとした足取りで椅子の前まで走り寄った。

 ――や、やっぱり♂リラウサだ!

 しかも正装姿をしている! オレはマジマジと♂リラウサを見つめる。ウェディング用のフロックコートを着ていて可愛い! オレは手に抱いている自分の♀リラウサを♂リラの隣に寄り添うようにして並べてみた。

 ――か、可愛い!!

 大絶賛するわ! ウェディング姿の二人はお似合いの新郎新婦だ。おまけにレースをあしらえたドレスが♂リラウサの正装とマッチしている!

「そのリラウサ、気に入ってくれた?」

 隣に来ていたライに笑顔で問われる。

「ライ、このリラウサどうしたんだ!」

 オレは宝石のようにキラキラさせた目をして訊いた。

「ここ最近ペアのリラウサが流行っているだろ? もしかしてレインもそれを意識して、プレゼントしたリラウサにドレスを作ったのかなって思ってさ」
「き、気付いてたんだ!」

 は、恥ずかしい。ライはぬいぐるみになんて興味ないと思っていたのに、オレにあげたリラウサの事は見ていたのかな。それにペアのリラウサの事も知っているだなんて~。

 ――うわぁ~~~~!!

 オレが結婚を意識しているってモロバレじゃん! オレ達は付き合ってまだ一ヵ月しか経ってないのに、勝手に結婚を意識しているって思われて引かれるよ! オレは羞恥一色となって顔を伏せた。

 ――あれでも?

 今視線の先に映るこの♂リラウサ、ライが用意してくれたんだよな?

 ――もしかしてライも同じ気持ちでいてくれたのだろうか。

 そんな都合の良い考えがチラついた時だ。

「レインはオレとの将来を考えて、リラウサにドレスを作った?」
「そ、それは……」

 いきなりライに核心を迫られ「まさにその通りです」なんて言えないよな。オレはまごつきながら、中々答えられずにいた。

「もしかしてオレから片割れをプレゼントされるのを待っているのかと思ってさ」
「え?」

 オレは目をパチパチと瞬く。

 ――♂リラまでもプレゼントって……オレはそこまで図々しくないぞ!

 そんな風に思われていたなんて恥ずかし過ぎる!

「レイン、それはオレからの言葉を待っていたって事だろう?」

 ――ん?

 オレが否定するよりも先にライが言葉を紡いだ。なんだ? ライからの言葉を待っていたって。

「オマエがオレとの将来を考えてくれていて、すっげー嬉しかったよ」
「!?」

 ここでオレはようやくライの言いたい意味が分かった! ♂リラウサプレゼント=プロポーズを待っているっていう話か!

 ――うわぁああああ!!

 ライとの将来は考えていたけど、プロポーズを待っていたって、す、凄い話が飛躍してる! でもライは熱の籠った真剣な眼差しでオレを見つめていて、これでプレゼントもプロポーズも待っていなかったなんて言えないだろ! そう思っていたのに……。

 ――ポロッ。

 ツーと熱い雫が頬を伝う。

 ――あ、あれ? なんで涙が?

 胸の内も目頭も熱くて言葉にならない。

「レイン?」

 ライが目を瞠ってオレを見つめ返す。プロポーズはさすがにぶっ飛んでいてビックリしたけれど、オレは純粋にライの好意に感動して涙が出た。ライも同じ気持ちでいてくれた事はかけがえない幸せだ。

「ライ、有難う。ずっと男の子のリラウサ、欲しかったんだ。貰ったリラウサと隣に並べたら、ずっとライと一緒にいられるような気がしてさ」

 次々と涙が溢れる。これはすべて幸福の涙だ。幸せそうに寄り添うリラウサ達が、未来の自分達の姿と重なる。その時、そっとライから手を握られ、意志を感じさせるような力強い眼差しを向けられる。

「レイン、オレはオマエと心を通わすようになって、愛しさも大切さも日に日に大きくなっている。それはこの先も変わらないって自信がある。オレにはレイン、オマエだけだ。だからこの先もずっとオレの傍にいて欲しい」

 ライは綺麗に愛の言葉を伝えてくれて、オレの心臓は早鐘を打つ。ずっとずっとライの傍にって、それはつまり……。

「オレ、ライのお嫁さんになるって事か?」

 オレはストレートな言葉で訊き返す。

「あぁ、それは嫌か?」

 ライが不安げな色を浮かべるのを見て、オレはすぐに否定する。

「嫌なものか! オレもライと生涯を誓える事が出来たらって夢見てたんだ! オ、オレも、ラ、ライだけだ!」
「レイン!」

 オレが応えると、ライは喜悦満面となってオレのギュゥ~と強く抱き締めた。痛いぐらいだが、オレもライの腕の中で歓喜に満ち溢れていた。

 ――オレ、今世界で一番幸せだって叫べるぞ。

 そう思うぐらい幸せに充溢していた。そんな満たされた顔で、ライと視線が絡み合う。それはごく自然な流れでオレ達は唇を重ねた。誓いを交えた優しいキス…………だと思ったのだが、ライとの温度差が生じていた!

 既に口を割られ、ライの情熱的な舌はオレの舌を搦み取って翻弄する。部屋に来る事になって多少は覚悟していたものの、実際に色事が始めると、オレの躯は思っていた以上に強張った。

 付き合い始めて数え切れないほどのチューをしているが、未だにオレはキス一つも慣れない。反対にライは回数を重ねるほど淫技を磨いて、オレの性感帯を引き出していく。

 今だって搦めていた舌を離れて、オレの舌裏、歯列の裏、顎上と隈なく愛撫され、オレはドロドロにふやけていく。ライはなんでもそつなく熟す器用な人間で、こっち・・・の方も完璧だった。

「んっ……んぁ」

 色声が零れ落ちる。キスだけで天国にでもいるような心地好さで、オレは十分に満たされていたが、ライはそれ以上先を求めているようで、唇を離してオレの肌へ甘やかに印をつけていく。

 初めこの鬱血痕キスマーク、吸われて痛いし好きじゃなかったけれど、愛情と独占欲の表れと聞いてから、嫌な気持ちがなくなって逆に嬉しく思えるようになった。ライは言葉でも躯でも全力でオレを愛してくれる。

 オレが甘く悶えている時、視線がふとリラウサ達と目が合う。二人は仲良さげに寄り添って、オレとライのラブラブな様子をガン見している! ぬいぐるみだから心がないとはいえ、オレは気恥ずかしかった。

「ラ、ライ。これ以上は立ったままじゃなくて、ベ、ベッドがいい」

 オレは最もらしい理由をつけてリラウサ達の視線から避けようとした。ライはオレの乳房を揉み上げ本格モードに入っていたが、オレの言葉に耳を傾けた。

「あぁ、そうだな」

 ライはお願いを快く思ったようで笑顔で答えた。寝台はリラウサ達の背の向きに設えられていて、これで見られなくなって安心だ。オレはライに手を取られて寝台へと向かう。

 ――緊張する、ライの寝台だ。

 いつもと異なる空間でオレはかなり緊張していたが、寝台に入るとライがいつも以上に優しく愛撫してくれて、徐々に緊張の糸を解けていく。それから鎖骨から胸の辺りに薄紅色の華が散らされた。ライが咲かせた華だ。

 散々華を散らされた後だというのに、ライに乳房の尖頭つぼみが咲かないと訳の分からん理由をつけられ、執拗に嬲られた。そうやっていつもライはオレの躯を弄んで愉しんでいる。

 それから下肢が鳥肌が立つようにジンジンと痺れ始め、秘所からしどとに蜜が溢れてきた。下着が淫蜜に浸透し、さらに寝台のシーツにまで滲んで焦った。王宮の物を安易に汚せない!

 「汚しちゃ嫌だ」とオレが涙目で訴えると、ライは何を思ったのか、オレの腰を浮かせて秘所に舌を這わせ、散々啼かせられた。汚したくないの意味がかなり違うと突っ込みたかったが、気が付けばオレは生まれたまんまの姿となっていた。

 再び丁寧に愛撫の限りを尽くされ、躯がすっかりとライを受け入れられる態勢になると、ライが衣服を脱ぎ始めた。あっという間に脱ぎ終え、オレのたっぷりと蜜でテカっている秘所に熱杭を沈められ、オレ達は一つに繋がった。

「おいで、レイン」

 いつもみたいに始めは正常位で責められるのかとも思ったが、この日は違った。

「え?」

 繋がったまま躯を起こされ、オレは目を白黒させる。向かい合わせの体勢となって、ライの顔が近すぎだ! こんな体勢は初めてだった。

「ライ……これは?」

 おずおずとした様子でオレが問うと、ライは綺麗な笑みを浮かべて答える。

「たまにはこういう体勢もいいかなって」
「オ、オレは恥ずかしいぞ。……か、顔が近いし」

 しどろもどろになりながら答えると、ライはオレをぎゅっと引き寄せ顔を見せなくさせ、それからズンズンと腰を揺らし律動を始めた。

「あんっ、やあっ、はっあんっ」

 オレはいつもと違う体勢に高揚しているのか、声が妙に色っぽく零れる。

「いつもみたいにオレが一方的に責めるんじゃなくて、こうやって感じ合うように、互いが責めるのもいいかなって思ってさ」

 息を切らしているオレとは違って、ライは綽然とした声音で言う。

 ――オ、オレはこの体勢での責め方なんて知らないぞ!

 そう突っ込みそうになったが、心地好さを感じているのは確かだ。濃密な刺激で躯は熱々なのに、温もりに包み込まれているような優しい感覚がある。愛を感じる、そう思えた。

「レインの中、熱い」
「はあん、あんっ」
「オマエの愛情に包まれているみたいだ」

 ライは熱の籠った声で吐露する。温かさを感じるのはオレだけじゃないんだ。一緒に愛情を共感している。そう思ったら恐ろしいほどの快楽が生まれ、嬌声が何度も迫(せ)り上がってきた。ライの息遣いも乱れていた。

「はぁはぁ……」

 快感に身を委ねるライの姿はズクズクとオレの躯は甘い戦慄きの連続で、気が付けば自分から腰を振り、ライにしがみついて喘ぎ続けていた。膣内は潤骨液で溢れ返り、ライの挿抜そうばつを助力している。

 そしてグヂュングヂュンとあられもない淫音に刺激され、躯が踊るようにして弾む。結合部はもう境が分からなくなるほど蜜で溢れ返り、底なしの快感が部屋中に濃厚な蜜の香りを撒き散らし、オレとライの興奮を高めていく。

 二人の世界一色に染まった空間で、オレの心は充溢感でいっぱいだった。ライをどうしようもなく愛おしく思い、そしてどんな時も彼を求め続ける。それと同時にいつも思う事がある。それは……。

「はぁはぁ……ライ……愛してる。オレを愛してくれて……有難う」

 オレの事を選んで愛してくれるライへの感謝の気持ちだ。オレは愛の言葉と一緒に伝えた。するとライは意表を突かれたような顔を見せたが、すぐに極上の花が咲き開いたような笑みを見せた。

「レイン……それは……オレも同じだ。有難う、愛している」

 そうライから甘やかに囁かれた時、オレはこの上ない快感に弾かれ、ライと一緒に極上の域へと達した……。


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 ライに抱かれながら微睡から目を醒めた時、隣にはリラウサ達がいた。ライがベッドまで連れてきてくれたのだろうか。寄り添うにして眠るリラウサ達を見て、オレは最高に幸せを感じた。未来の自分達もこう幸せであればいいのにと夢を抱き、また心地の好い眠りへとついた。

 そして抱いた夢は現実となる。オレの大好きなリラウサは子ウサギまで誕生し、近い将来オレの持つリラウサの数は増えていく。それは新しい家族が増えるたびに、ライが子ウサをプレゼントしてくれるからだ。オレは子ウサの洋服を作って、他のリラウサと一緒に飾っている。

 今となってはあの女神には感謝している。性別逆転で生まれたとか、性別を変えてまで純潔散らすとか、ナイフで刺されるとか、もう運命を翻弄されまくりだったけれど、今の幸せがあるのはまさしくあの女神がドジってくれたおかげなわけで。

 ――幸せになれ。

 女神が最後に残した言葉は今でも心に焼き付いている。あの女神は今も何処かでオレの事を見ているのだろうか。とんだドジを踏んでくれたが、最後オレに最高の幸福しあわせをもたらせた。そして今日また新たな幸せを運んでくる。

「ただいま」

 仕事から帰ってきたライを出迎えると、彼の手の中には赤いリボンがついた大きな包みがあった。

 ――あれは……。

 オレは真っ先に中身に気付いた。オレのお腹の中にはまた新しい生命が宿っている。だからあの包みの中はリラウサの新しい家族だ! オレはライから包みを受け取り、中身を開けて取り出す。あぁ、やっぱり愛らしい子ウサだ!

 ――よろしく。これからずっとオレ達家族と幸せに暮らしていこうな。

 そうオレが挨拶すると「よろしく!」と、子ウサが微笑んで挨拶を返してくれたように見え、そして同時にお腹の内側からポンポンと我が子が反応したのを感じ、オレはまた幸せを噛み締めるのであった……。





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