SS①




  Birth33のオールとエニーの様子です。


「感じるな」
「オール様も感じられていましたか?実は私も思っておりました。…私には魔力はありませんが、異様に殺気立っているのが分かります」

 執務の塔の最上階、オールとエニーは互いの仕事に関連する首尾の報告をしていた。ところが、途中でオールが妙な気を感じるようになり、その気が強さを増して近づいて来る事に気が付いた。それにエニーも気が付いていたようだ。

「あぁ、二人いるようだ。一人はあの方だな」
「あの方?…という事は殺気立っている気はアイツか」

 容易には表情を崩さないエニーが若干、眉を顰めた。

『まだ分かりませんわ!これから休日のデートの約束をするかもしれませんもの!』
『沙都様はお考えが甘いですわ!仕事の時はわざと堅苦しい口調となるものです!油断していては、先を越されてしまいます!』

 エニーが誰かと察した後、気の主の一人の声がだだ漏れてきて、オールとエニーの二人は気の主を確信した。

「放っておきましょう」

 エニーは呆れ果てているようで、相手を無視しようとした。しかし…。

「せっかく起こし頂いたのだ。挨拶をして行こうではないか」
「オール様?」

 オールの返答に、エニーはらしくもなく目を見張って彼を見る。本当に意外な行動である。オールは対人関係で面倒な事は避ける主義だ。それを自ら相手にしようとしているのだ。これをエニーは驚かずにはいられない。

 彼女の心の中で複雑な思いが生じる。オールの行動は純粋に天神様への敬意の挨拶なのか、それともまた別の意味があっての事なのか。それが分かるのは当の本人のみ。エニーは複雑の心を持ったまま、オールと共に天神の元へと足を運んだのだった…。





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