Birth31「陛下との朝」




 …………………………。

 微睡みの中、映像が途切れ途切れとなっており、何が映し出されているのか把握する事が出来ません。意識が鮮明になってきた頃には映像は散りばめられ、パーツを拾い上げる事が叶いませんでした。

―――ここは?

 目で見るだけでも、肌触りの良さが分かるビロードの布が広がっています。

―――あー、そうですね。

 このお部屋は陛下の寝室です。二夜連続、私は陛下と微睡んでしまったのですね。目の先には感嘆な溜め息が出そうな程の優美な金のデザインが広がっています。

 …………………………。

 頭はボーとしておりました。胸につかえる記憶を辿るように追いかけています。

―――あの夢は一体…?

 艶やかな黒髪をもつ女性と今よりも少し若い頃の陛下ですよね?昨日も目にしましたが、連日同じ夢を見た事のない私にとってはわだかまりを覚えます。夢の中の女性は私ではないんですよね。私はあんな美しく長い髪の毛ではありませんし。

 敢えて考えられる事は……夢の中の私は美化されているのかもしれません。あれだけの美貌をもつ陛下ですから、心の何処かで自分は不釣り合いだと思っているんでしょうかね。夢の女性の姿は私の潜在意識に眠る願望ってやつでしょうか。

 あの夢で振り返った時、リアルに自分の顔でしたら嫌ですよー。ただ単に髪が伸びているだけの自分だなんて。陛下が少し若いのは私の年に合わせているのかもしれませんね。夢って都合良く出来て面白いものです。…という自己解決であまり深く考えない事にしました。

―――さて、ナンさんが朝食のお迎えに来られる前に、支度をしておきましょうか。

 私は躯を起こし、寝台から離れようとすると、

―――ドクンッ。

 思わず心臓が波打ってしまいました。それもそうなりますよ。隣には仰向けで、まだ眠りについている陛下がいらっしゃいます。なんと無垢なお姿でしょうか。しかも目を瞑られていても、美しさを感じさせるのですから、凄いですね。“完璧な美”です。

 それにしても、このような国の主の無防備な姿を目に出来るのも、ある意味、特権なのでしょうか。…「特権」と思い、ボワンッと私は昨夜の熱い出来事が頭の中で蘇りそうになったのを無理に封じ込めました。思い出しただけで、蒸発してしまいそうですもの。

 出来れば、陛下が目を覚まされる前に、姿を隠したいものです。昨夜は初日なんて比にならないぐらい、熱く激しいものでした。火照るような痛みが脈打ちっぱなしでしたからね。

 陛下は普段、穏やかな雰囲気を放っておられますが、夜の情事となると豹変されますよね。ご都合主義のSですよ。一先ず、ナンさんが朝食の迎えに来られるまで、身支度はしていた方がよろしいですね。このような裸体を晒すわけにも参りませんし。

―――困りました。夜着はどこへ行ってしまったのでしょう。

 寝台辺りを見渡す限り、見当たらないです。うー、夜着も下着もポイでしたからね。何処にも姿が分からなくなる程、激しく動いていたという事ですか!このようなすっぽんぽんの裸体を早く隠したいのですよ、私は!

 気持ちが焦った私は裸体のまま、寝台から下りようとしました。それと同時でした。ガシッと左の手首が強く掴まれたのです!私は何事かと背後へと振り返りますと、

「何をそんなに焦っておる?」
「!?」

 いつの間に目を覚まされていたのでしょうか。私は仰向けのままの陛下とガッチリ視線が合わさっておりました。陛下、先程まで美しい眠り姫のように、目を閉じていらっしゃったではないですか?

 視線を合わせたまま、私は固まっておりました。何故なら今の私は全裸ですよ?しかも今は朝の陽射しが部屋全体に行き届いていて、無駄にくっきりはっきりと見えてしまっているではないですか!

「あ、あの…」

 私は早く身を隠すものがないかと目を泳がせ、何をどう答えたらいいのかも分からず、たじろいでいますと、陛下が上体を起こされました。あぁ~、陛下の上半身が赤裸々ではないですか。美しい裸体ではありますが、とんだ刺激物に鼻から熱が噴き出しそうですよ。思わず私は陛下から視線を外してしまいます。

「これから朝食を共にする予定だ。今日の迎えは控えるように伝えてある。食卓のには私と一緒に参れば良い。だからそのように焦って支度をする必要もないのだ」
「え?」

―――な、なんと!

 今日は陛下と朝からお食事ですか!昨日は朝も晩餐もご一緒には頂けなかったものですから、一緒にお食事というのはあくまでも社交辞令かと思っておりました。

 それはそれで私としても気を遣わず、返って安心していたのですが、まさか本気で考えていらっしゃったとは。私は裸体を忘れ、食事の断りを必死で考えます

「陛下、そのようなお気遣いはご遠慮下さいませ。陛下は多忙なお方です。私如きに朝の大事なお時間を使われるなど、私は気が気でなくなり、通る喉も通らなくなります」

 私は謙遜して丁寧に断りを入れました。喉が通らない理由は別にありますけどね。昨夜の激しい情事があった後で、平静と一緒に食事など出来ませんよ。本当の恋人同志や夫婦なら別ですけどね。

「其方との時間を過ごすのも大事なのだ。朝食と晩餐は基本、共に致そうと思っている。昨日さくじつは時間の融通がきかず、食事が取れなかっただけだ」
「いえいえ、私は陛下とこれ以上は畏れ多いですし…」

 陛下のお気持ちは嬉しいですが、そのお言葉だけで十分です。ご自分の時間を有効にお使い下さいませ。

「其方との時間は性交渉だけではない」
「え?」

 へ、陛下?突然とんでもない事を口走られ、私は目を仰天とさせますが、陛下の表情は至って真剣そのもので、萎縮してしまいます。
「其方は時代を担う大事な世継ぎを生んでもらうのだ。沙都はどれだけ自分が大役を果たすのか、もっと重みを感じても良いだろう。一昨夜も申したが、私の御子を生むという事は其方は王妃と同等の立場だといっても過言ではない」

 王妃様と同じ立場なんて滅相もございませんよ。と、口にしようとしましたが、これ以上の云々は陛下に対して、失礼に当たるのではないかと考え、口を閉ざしました。

「こうやって何かの縁で出会えたのだ。私は其方の事を知りたいのだ。其方にももっと私の事を知ってもらいたい。多忙だからこそ、其方との時間は大事にしたいと思っておる」
「陛下…」

 私の思い過ごしでしょうか。陛下の後半のお言葉は女心をくすぐるものでしたよね?変に都合良く感じ取った私は心臓をドキドキとさせ、しかもまさかまさかの秘部からの潤いを感じてしまい、火を噴き出すような顔色となって、俯いてしまいました。

「なにやら熱っぽいな。まだ躯の火照りが取れていないのか?」
「は…い?」

 またしても陛下の口から、とんでもないお言葉が出ましたよね?私は昨夜の余韻が残っている訳ではなく、今の陛下のお言葉に動揺して、赤くなっているのですよ?天然に思われているのですか?それとも意図的ですか?陛下はとんだ勘違いをされています!

「躯が疼いて苦しかろう。朝食へと行く前に、その火照りを抑えておくのだ。こちらへ戻れ、沙都」
「え?」

 掴まれていた腕を強く引かれ、私はボスンッと陛下の懐に入ってしまいました。

「やはり濡れておったか」
「ち、違いっ、ひゃぁあっ」

 懐に入るなり、秘部を容赦なく弄られ、蕩けるような甘い声と共に、快楽が生じました。この後の事は言うまでもないでしょうが、朝から星がチカチカするのは初めての体験となりました…。





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