STEP14「舞台の裏側で何が?」




「一度、ジュエリアを捕まえかけたという事は、それなりに彼女の情報を持っていたいう事ですよね?私の方としても、詳細を貰わない事には捕まえられないと言いますか」

 私に課せられたのはジュエリアを捕まえる事だ。令嬢だろうか、その仮面を被った魔女であろうが、ヤツを捕まえない限り、こちらの命が無くなる。大きな手掛かりを掴む事が重要なのだ。私の言葉に殿下はコクリと頷く。

「まずは兄上からジュエリアは公爵令嬢だと聞いている。が、その家柄や所在地など詳細は聞かされていない」

 なるほど身元不明という事か。王太子を誑かした不届きものだからな、早々簡単には素性を教えられるわけないよね。フムフムと私は一人納得をする。

「では彼女と王太子が知り合ったきっかけはなんだったのでしょうか?」

 そこも大事だよね。どうやってヤツは王太子に近づいたのか。貴族の中で高い位をもつヤツでも、王族の中に入れるってのは、よっぽど何かがないと。

「二人が初めて会った場所は兄上お気に入りの花の庭園だそうだ。ジュエリアは王族の誰かから茶会に招かれやって来たそうだ」
「そうなんですね。って、彼女は王族のどなたかと知り合いなのですか?」

 誰かと知り合いなら、王太子と知り合うきっかけがあるわけだよね。…てか、あの王太子が花をでるのか!ミスマッチミスマッチ!

「その誰かというのは分かっていない。当然調べてはみたが見つからなかった」

 調べていないってのは、そもそもがないんじゃない?

「そうですか。という事はそもそもジュエリアがお茶会に誘われたかどうかというのが怪しいわけですね」
「そういう事になるな」

 きっとお茶会に誘われたっていうのは嘘っぱちだろうな。本当であれば、今頃お茶会に誘ったどの誰かから情報を得られている筈だ。

「兄上は庭園で初めてジュエリアを目にした時、美しい花の精霊だと思い、一目惚れをしたそうだ」
「は、はい?」

 ル、ルクソール殿下?補足説明でしょうか?私は目をパチクリとさせる。

「そしてジュエリアも兄上と視線が絡んだ時、時を忘れたように暫く兄上を見つめていたそうだ。見つめ合う内に自然と手を取り合い、周りには花が舞い上がり、まるで二人の運命的な出会いを祝福しているようであったと。兄上曰く、その時のジュエリアは自分と同じ気持ちでいたのではないかと自負されていた。色々と話に違和感を覚えた部分はあったが、そう聞いている」
「そのお話は…」

 誇張、いや捏造が入っていませんか!うん、完全に入っているね!馴れ初めが変に美しく描かれていて超怪しいって!ここまで手遅れだったのね、王太子は…。あのジュエリアの毒牙がいかにヤバイか改めて思い知ったな。

「兄上はジュエリアと出会ってから、定期的に彼女と宮殿で会っていたようで、そして徐々に兄上の周りに異変が起き始めた。以前に聞いた事があるかと思うが、ことごとく兄上の婚約解消は続き、執政業務にも問題が起きるようになった。初めの頃は偶然に思えても、問題が重なるごとに、これは何か裏があると推測したわけだ」
「確かにそうですよね」

 ジュエリアが裏でそうなるように操作していたんだろうし。調子に乗ってやり過ぎるから、怪しまれるようになったっての!

「そもそも生真面目で落ち着いた兄上が妙な癇癪をもったり、焦燥感を抱いたり、妄想と思わせる発言までものが多くなった。日に日に兄上の調子はおかしくなり、オレ達は慎重に様子を窺っていた。そしてある時、他国と重要な会議を開催する日に、兄上がジュエリアと会う事が分かったのだ。どうやら宿泊先にジュエリアが来る予定だと」
「大胆不敵ですね。何処までも王太子に付き纏いまして。でもどうして王太子がジュエリアに会うと、分かったのですか?」
「その日の兄上はあからさまに顔が緩んでいた。これから重要な会議があるという時の顔に相応しくはなかった。そこからジュエリアと外で会うのではないかと睨み、兄上の行動を見張っていたのだ」

 あの王太子の綻んだ顔か。とんだ不敵な笑みを広げていたんだろうな。ちょっと想像してしまい、身震いをしてしまった。

「では予測通り、王太子はジュエリアと会っていたのですね?」
「そうだ。兄上は会議の合間に時間を作り、ジュエリアに会いに行かれた。そこでオレ達はジュエリアといる兄上に会うつもりでいた」
「上手く会えたのですか?」
「いや」

 美しいルクソール殿下の顔が少しばかり歪んで横に振られる。

「バレぬよう尾行していたのだが、途中で何故かジュエリアに気付かれてしまい、彼女は兄上から離れ、馬を利用して疾走してしまったのだ」
「どうやって気付いたのかが不思議ですよね?」
「全くその通りだ。そういった不可解な行動が魔女と考えられる要因になっている」
「そうですね。ではジュエリアを追っていく内に、マラガの森へと入って行ったわけですね」
「そういう事だ。オレ達三人はそれぞれに分かれてジュエリアを追いかけた。そしてオレとアッシズがある小屋へと着いた時、既に中には気を失っているヒナとグリーシァンがいた」」

 殿下の顔がよりシビアとなる。私はゴクリと喉を鳴らした。それは私がジュエリアとして間違われても仕方がない…にしても、運悪くジュエリアと遭遇してしまった私は(記憶にないけど)上手い具合に利用されてしまったのか!運の尽きだわ。

「オレはジュエリアを追い詰め小屋の中へと入ったら、君が倒れていたってわけさ。てっきり自害でもしたんじゃないかと思っていたよ」

 今、サラッと凄い事言ったよね、グリーシァン。そんな自害するようなタマじゃないわ、あ奴は。

「何処に消えたんでしょう、ジュエリアは」
「謎だね、本物の魔女であれば目に見えない姿の変化へんげでもしたのか、それとも瞬間移動をしたのか」

 またグリーシァンがサラっと言ったけど、それ凄い事だから。完全な魔法使いじゃん、それ!この世界ではいるのか、そういう人が。

「魔女って本格的な魔法が使えるんですね」
「魔女だからね」

 っていう事らしい。うん、はいそうですよねとは理解出来ないけど。

「ヒナをジュエリアだと思ったオレ達はそのまま君を宮殿まで連れて行ったわけだ」

 殿下は少し決まりが悪そうにして話す。きっと私をジュエリアと間違えた事に悪いと思われているのかな?

「それで私は牢獄行きだったわけですね」

 今でもあの牢獄での出来事には戦慄が走る。思い出したくない。私はフルフルと顔を横に振った。

「兄上にはジュエリアを捕まえたという事は内緒にしていた。ただでさえ、急に消息を絶ったジュエリアに相当なショックを受けられているからな。それがきっかけで兄上は完全に心の病にかかり、現在は療養中の身となったのだ」
「そうだったんですね」

 殿下の表情が悲しみにかげる。うぅ~、そんな殿下の切なる表情を目にするのは心が痛む。全く似ていないとはいえ、殿下からしたら血の繋がった兄弟だもんね。ショックを受けるのは当たり前だよね。

 そして、ん~確かに王太子に会った時のあのジュエリアに対しての執着具合、とてもまともに生活なんて出来ないだろうなぁ。彼からしたら理由も分からず、ジュエリアに去られてしまっって、頭がヤラれてしまっているわけだしね。

―――今、ジュエリアはどうしているんだろう…。

 捕まりかけて大人しくしているやつではなかったし(牢獄に現れたぐらいだからね)、このまま何もせずにいるわけがないよね。…それと話を聞いていて気になった事があるんだよね。

 それは…。





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